青田さんへの回答(再々)

新薬の治験の意味が分かりません。
もし、レミニールに関して新薬と考えていらっしゃるならば大きな誤解です。それ以外の新薬についてのお話しならば、その使用には私も賛同しかねます。レミニールはアリセプトで嫌な副作用経験をお持ちの患者さんや医師には、同一製剤として偏見されがちですが作用は緩和で、覚醒作用と精神安定作用さらに認知機能がバランス良く向上させるみたいです。私自身も何年間はレミニールに強い偏見を持っていた時期がありました。しかし、この数年はアリセプトとは異なった作用を示す薬であるとの認識から外来ではかなり使用しています。いずれにしましても薬の効き方は患者さん各自で、かなり効果の出方が異なりますので一般論は控えさせて頂きます。
どちらにしても、かかりつけ医の方は少し極端な見解をお持ちではないでしょうか。その医師の意見が間違っていると言っている訳ではないのですが、私には近寄りがたい雰囲気を感じます。もっと謙虚に色々な意見を取り入れて行きたいと思っていますのが、私の基本的な医療スタンスですので。現在の医療の常識が時代と共にどんどん変化して行く現状を考えるなら、自信を持った一方的な発言など出来る訳がないと思ってしまいます。
【ご質問】
成川様お世話になっております。
貴重なご意見ありがとうございます。
本当に涙がでそうになりました。
母親の情報について、追加事項としては
『抑肝散』は、既に服用中です。
服用して、2年になります。
嗅覚障害にならたいために、各部屋には、芳香剤(ローズマリー)を置くようにしています。
デイサービスでは、脳トレを中心に取り組んでもらっています。
母親自身も自分が認知症なのを気づいていて、必死で、戦っているのがわかります。
せっかく、落ち着いてたのに、この時期に転倒して、骨折した父親に怒りを感じます。
病院に母親が行くたびに母親が、精神的にもの凄く、疲れているのがわかります。
かかりつけ医に、『新薬の治験』について、相談すると大反対されました。理由は
① あくまでも、人体実験であること。
② プラセボと新薬と混ぜるので、実際に新薬を飲ましてもらえるかどうかは、50%であること。
③ 『治験』のたびに、何度も検査されるので、81歳には、かなり、負担になり、悪化するかもしれないこと。
成川様は、『治験参加』について、どういう意見をお持ちでしょうか?
もしよろしければ、ご意見を頂ければ幸いであります。

青田さんへの回答(再)

アリセプトの市場占有率に圧され、また販売時期が遅れた事もあってレミニールの知名度は幾らか低いかもしれません。ちなみにアリセプトの国内販売承認は1999年11月、レミニールは2011年3月です。ともにコリンエステラーゼ阻害剤ですが、実際的な薬理作用は微妙に違います。つまり、承認時期が遅れた分だけ、アリセプトの副作用が改善されたのかもしれません。アリセプトに比べて易興奮性や消化器症状も少ないです。さらにアリセプトより効果は持続性にも優れています。これに抑肝散を加える事により、精神を安定させ私の外来でも良い結果を上げています。もちろん青田さんが疑問視している脳トレや*嗅覚トレ(私の診察室からコンニチハ「56」をお読み頂ければ幸いです)など幾つもの補助トレーニングも取り入れています。レミニールの服用の仕方は前回の回答でご説明してあるはずですが。詳細は担当医にご相談して下さい。これ以上の回答は実際の患者さんを診る事なく、ご意見を求められるのは厳しいです。
<追記>診察室からコンニチハ(56)
次は嗅覚障害についてのお話です。昨今ではアルツハイマー型認知症発症の3年ぐらい前から、嗅覚障害が発生している可能性があると指摘する医学者が多くなっています。
日本の認知症患者に最も多いアルツハイマー型認知症の症状は記憶障害から始まるといわれてきました。脳の中の記憶をつかさどる海馬という部位が萎縮することにより記憶障害が起きるのですが、それより前に、鼻の奥にある嗅神経(きゅうしんけい)の細胞がダメージを受けることがわかってきたのです。
嗅神経は鼻から吸い込んだにおいの粒子を電気信号に変えて脳に送る働きをしているため、嗅神経がダメージを受けると、においが感じられなくなります。このことから、においに鈍感になったら、アルツハイマー型認知症の初期症状が疑われるのです。最近では、においの認識により認知症を早期発見する検査方法などの開発も進められています。
アルツハイマー型認知症では、嗅神経の障害を起こしたあと徐々に記憶障害を起こすようになっていきます。しかし、早い段階で対策をすれば、嗅神経を回復させ、認知機能も改善させることも可能です。
私の外来では、小さな薬壷に醤油、ソース、コーヒー、ニンニク、ワサビなどを少量ずつ分け入れて、患者さん方には目を閉じて頂き、私の手で薬壷の一つ一つをその鼻先に運んで行きます。通常の会話は成り立っても認知症の方は、5種類の薬壷に入った匂いの素の一つも当てる事が出来ません。匂いの種類を当てられないと云うより、匂いそのものに感覚が極めて鈍感です。一方若く健康的な方ですと、匂い刺激に極度の反応を示す人が多いのです。
「気持ちが悪い」
「吐き気を催す」
などの発言をする人さえいます。
つまり嗅覚障害も、年齢と共に少しずつ障害が始まっている、と考えた方が良いのかもしれません。「認知障害」が始まった方には、アロマテラピーなども参考になるかもしれません。
【ご質問】
成川様お世話になっております。
レミニールは、かかりつけ医から、全く、聞かなかった抗認知薬です。
医師からは、『アリセプト=副作用があり、気が荒れる。しかも、3か月~10か月くらいしか効果がない。』と言われ、
以前、成川先生にお伝えした
『ANM176、プロズマローゲン、アルファベスト、ココナッツオイル』を母親に飲ましています。
感じる効果としては
① 非常に穏やかで、いつも、笑顔になる。
(時々、気が荒れても対処できる程度。)
近所、デイサービスでは、人気者です。かなり、社交的になりました。
② 以前は、睡眠導入剤を服用しないと寝れなかったのですが、今は、ぐっすり寝れるようになりました。
但し、短期記憶は、忘れていくのと
亡くなった叔父(母の兄)、亡くなった祖母(母の母)が帰ってくるとか、先ほどまで、誰か来ていたと言います。
レミニールを飲むと、それらの症状は、改善されるのでしょうか、どのくらいの期間、効果があるとされているのでしょうか?副作用などあるのでしょうか?(以前、母親は、食欲不振だったのですが、最近は、食事をしっかりと摂ってくれているので、胃腸などの副作用が気になります。)
お忙しいところ、申し訳ありませんが、よろしく、お願いいたします。

青田さんへの回答

お母様の場合に薬物服用を考えるならば、アリセプトよりレミニール4mg×2(朝、夕)×1ヵ月、次の1ヵ月はレミニール8mg×2(朝、夕)計16mgこれに抑肝散2.5g×3(朝、昼、夕)の併用使用を私なら考えます。
アリセプト単独使用より副作用報告が少ないからです。これ以上のレミニールの増量は、後の症状次第です。
レミニール4mg×2と抑肝散7.5gの併用服用でも初回から2週間ほどの使用で十分な効果が得られる事も多いので、その後の経過を教えて下さい。
前回の青田さんのご質問には、何か私が試されている様な感じが強くしましたので敢えて、お答えしませんでした。お許し下さい。
【ご質問】
成川様お世話になっております。
実は、父親が、リハビリ病院で、リハビリが原因(おそらく)金属プレートが折れて、再手術になり、また、ゼロから、リハビリになりそうです。(歩行器で歩けるまでになっていたのにショックです。)
心配なのは、母親です。
父親の病院通いを母親としていますが、母親は、かなり、疲れて、夜になると、不安感からか、誰か帰ってくる(亡くなった祖母、お兄さん)ようなことを言います。
父親が帰ってくるまでと、私も頑張っていたのですが、正直、私自身、心が折れました。
母親が、月曜日、水曜日、金曜日とデイサービスに通っています。
現在、アリセプトを服用していませんが、父親が退院するまでの間だけでもアリセプトを服用してもらい、これ以上、悪化しないことを検討しています。
成川先生が何かイイ考えなどありましたら、ご助言頂ければ、幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

はなさんへの回答

ご返事が遅れて申し訳ございません。裁判所に提出する正規の診断書(5万円ぐらいの費用負担)を、認知症専門医もしくは精神科医が書いて、裁判所(恐らくは家庭裁判所)に提出すれば「認知症として自己判断能力は無い」との判断で、お母様の意向は通らないと思います。ケアマネでも、そのあたりの手続きは分かっていると思うのですが。ただし重要な事は通常の診断書では意味をなさないです。あくまで裁判所が認める形式に沿った診断書が必要です。私も何度か、同じ様な診断書を作成した事がありますが、この作成には数日間は要する手間がかかりますので多くの医師が引き受けたがらないのが実情です。
  【ご質問】
以前も別件でお世話になりました。
母が認知1で、一番激しいのが脳血管性認知症で、物忘れもの取られ、私が犯人扱いされてどうにもならぬ状態です。母子家庭で別居してますが一人っ子です。しかし、私が泥棒すると思い、遺産はほかの親戚にあげると言っておりケアマネにも言ってます。財産管理をいずれ頼む場合、亡くなったあとの相続名を本人が記載する欄があるそうで、そこに親戚の名前を書こうかと思っているようです。万が一、自分で公正役場などで相続名をサインしてきた場合、無効にはならないのでしょうか?自分で行きサインできる場合認知症とは思われませんよね?通ってしまうのでしょうか?認知症と言う証明があっても無効ですか?

一成さんへの回答

親子間では困難かもしれませんが、基本的に認知症を悪化させない重要なポイントは感情のコントロールです。如何に良好な関係を維持させるかです。どの様な間違いがあっても、否定しないと云うのが根本です。否定すればするほど認知症が悪化して行くと言われています。脳トレも重要ですが、それ以上に感情のコントロールが大切です。
普通の人でも褒められれば良い気持ちになり、叱られれば不快な気分で思考が停滞するのが一般的です。
そして一成さんの不安症状が、そのままお母様にも伝染してしまう恐れがあるのです。その意味では精一杯努力した後は、「ど~ん」と、構える覚悟が必要かもしれません。
マイナス思考からはマイナスの結果しか出ません。
人間の脳細胞も良い感情の方が、活性化されやすいと言われています。
もう少し、肩の力を抜いてお母様と接する事をお勧めします。
  【ご質問】
成川様お世話になっております。 先生に初めて相談してから一年半過ぎました。 色々とアドバイスくださり感謝しております。
以前と似たような質問になってしまう事をお許しください。
認知症外来のある総合病院で検査等をして海馬萎縮中等度でアルツハイマー型認知症と診断されアリセプトを処方されましたが服用させず先生に教えて頂いた脳トレや、私自身で良いと思ったサプリ、朝晩欠かさずにタブレットでですが色々な脳トレをやっております。認知症医がタブレットでの脳トレは先々前頭葉に悪い影響をおよぼすからやらない方がよいと動画サイトで見ました。 用紙でやるのが1番良いのは分かりますが時間も限られているのでタブレットで継続しています。 計算や記憶力、ジャンケン、神経衰弱などです。
母78歳になりますが、確かに見当識障害やエピソード記憶障害は目立ちます。何度も喧嘩になってしまった事もあります。
脳トレもほほスムーズにできますし、月1でmmseか長谷川式テストをやりますが、ずっと26点~29点で変化はみられません。 今後急激に悪化していまう事を考えると怖くて夜もゆっり眠れない毎日です。 アルツハイマー初期の状態を1年以上継続していますが、今後気おつける事などありましたら教えて頂けないでしょうか。 よろしくお願い致します。

ママレードさんへの回答(再々)

とりあえず、ウィンタミン散の使い方は以前申し上げた方法で様子を見るしかないと思います。メンタル・ケアに関しては、すでにご存知かもしれませんが
【ユマニチュードの実践編】を参考までに、ご紹介します。何かの参考になれば幸いです。
さて、「ユマニチユード」の実践編です。テクニックは見る、話す、触れる、立つという4つの柱を基本とし、150を超える技術で構成されています。そして全てのケアは、5つのステップを経て行います。 
• [1]「出会いの準備」 
• [2]「ケアの準備」 
• [3]「知覚の連結」 
• [4]「感情の固定」 
• [5]「次回の約束」 
 まずは「出会いの準備」というステップで声かけをしながら、患者さんのプライベートな領域に入る許可を得ます。それは他人の家に訪問した時、玄関のドアをノックするのと同様の行為です。それが4人部屋などの空間であっても、そこは患者さんのプライベートな領域なのです。当然のごとく 
「こんにちは」とか、 
「いま失礼しても良いですか?」 
とかの許可を得る必要があります。 
しかし、病院や施設ですと患者さんのベッドルームがプライベートな領域であるとの認識が乏しくなっている傾向が強いのではないでしょうか。何の断りもなく、さあオムツ交換の時間だからとかってにベッドルームへ近寄り、機械的に身体の清拭をしたりしていた例が、これまでは多かったでしょう。これでは人間同士の温かい介護の手とは言えないと思います。ですから先ずは「出会いの準備」から始めなければならないのです。そして患者さんの了解を得て次に入るのが「ケアの準備」です。このポイントは相手とともにいる時間が心地よいものであることを表出しながらケアの導入へと進めます。実際にケアをする際は、清拭する部位の順番にも心を配ります。清拭する部位の順番にも根拠があります。例えば認知症女性の場合、感覚が比較的鈍い足から拭き始めるのです。次に背中、そして前面へと拭いていきます。最も敏感な顔と手は最後に行います。車を洗うように、ただ患者を洗えばいいというものではないのですから。この清拭の場合も常に声かけが必要です。 
「どう、気持ち良いですか? 
タオルの温かさは大丈夫ですか? 
どこか痒い所はない…汚れの気になる所はどうですか?」 
通常の美容院で洗髪する場合、美容師は何時だってこの様な声かけをしながらお客様の洗髪をしていますよね。これが病院や施設だと、相手が認知症患者だと思ってしまうせいか、この様な声かけの少ないのが気になります。認知症患者さんだって感情は持っているのですから、少しでも気持ちの良い状態で清拭や洗髪をしてもらえる方が、心は開いてくれるでしょう。互いに心の接点を大切にする事が、この「ユマニチュード」の基本理念です。 
ケア中は、触覚や視覚、聴覚の全てにポジティブなメッセージ(人間として支え合うことの喜び、金銭ではなく奉仕出来る事への感謝、誰かの役に立っていると云う充実感、人格の尊重)を伝える「知覚の連結」を行います。 
認知症患者さんであってもケアしている人の心は伝わっているのです。仕事だから、嫌々行っているオムツ交換、効率化を優先する食事介助などにはへきへきしながら患者さん達は我慢しているのです。オムツ交換をして清潔になったと云うメッセージより、強引な体位にさせられた屈辱的な思いだけが印象として強く残っているかもしれません。そんなマイナスイメージの中では「知覚の連結」は生まれません。優しい言葉を掛けていてもアイコンタクトが成立していなかったり、腕をつかんでしまっていては、「あなたを大切に思っている」というメッセージは認知症患者さんには伝わりません。認知症患者さんの目を見ながら、 
「オムツ交換をして身体を綺麗にしましょうね。少し体を横にして頂いても良いですか?大丈夫、痛くはないですか…もし宜しければ私の左腕を支えにしても良いのよ」 
この様な声かけとアイコンタクトが「知覚の連結」の基本なのです。そこには患者さんの意志を優先したオムツ交換があるのです。 
「どうですか、身体が綺麗になったら気持ちもスッキリしたでしょう。これでお食事はもっと美味しくなると思うわ」 
と云う発言に「知覚の連結」が生まれるのです。 
人は金銭なくしては何も買えません。しかし、金銭で全てが買えるのではないのです。心の絆で人間同士を支え合う事も出来るのです。 
この様にして「知覚の連結」が一歩前進すると、食事の介助もスムーズになって行きます。この介助にも相当のテクニックが必要です。テーブルの上に置いある皿からスプーンで直接的に口まで運び入れる作業は考えものです。それだと単なる作業です。声かけはもちろんですが、何が口に入れられるかの認識が必要なのです。皿の上に盛られたカレーライスを患者さんの目線にまで上げ、 
「今日はとても美味しいカレーライスが出来たのよ。ほら見て、美味しそうでしょう。食べてみる?」 
と云う、声かけと食べ物がカレーライスであると認識してもらう必要があるのです。より快適な状態で食事を楽しんもらう感性が介護者に求められるのです。 
ケア終了後に行うのが、「感情の固定」です。認知機能が低下し、3分前の出来事を覚えていなかったとしても、感情記憶は残ります。ケアしてくれた人の名前は分からなくても、私はこの人が好き、嫌いということは覚えているものなのです。 
「この人は優しい人だ」 
という感情を覚えておいてもらうのが、「感情の固定」です。 
具体的には、ケア後に患者さんをなでながら「さっぱりしたね」「気持ちいいね」とポジティブな言葉を掛け、「また来るね」と「次回の約束」をします。 
このなでるというテクニックも正確な技術が必要です。指を開いて肩のあたりをなでます。顔と顔を20cmまで近づけ、目と目をずっと合わせて前向きな言葉を発し続けます。 
すると、次に会ったときもケアした人の顔を覚えており、スムーズにケアを行うことができるようになると言います。 
ある認知症患者さんは、顔を覚えたケアスタッフが行くと素直に口を開き、自分で薬を進んで飲んでくれる様になりました。そして暴れることもなくなり、両手の拘束が不要になります。そして次の段階では、患者さんの好物であるバナナを用意しました。自分で皮をむいて食べる事さえ出来る様になりました。その5日後には車いすに座って箸を使い、食事を取れるまでに改善したのです。 
「ユマニチユード」を発案したジネスト氏は、こう述べています。 
「ケアしてくれる人を友達と認識し、人間同士の絆を感じたことで意欲が沸いたのです。私も、友達と一緒に食事をすると食べ過ぎるし飲み過ぎてしまいます。人間の食事とはそういうものです」と… 
さらにこの認知症患者(女性)は、歩行のトレーニングをすることになりました。最初は大変でしたが、補助しながらゆっくり歩を進めます。 
「立位を取ることで、人間の尊厳を取り戻してもらいます」(ジネスト氏)。 
そして迎えた退院の日、女性は鏡を見ながら髪の毛をくしでとかし、自分で選んだアイシャドーでお化粧をして病院を後にしました。このような変化が、ユマニチュードを「魔法」と評する人がいるゆえんでしょう。 
どうせ認知症患者なんだから何も分からないと云う偏見が、人間性の尊厳を蔑(ないがし)ろにして来たのです。これまでの介護現場では… 
我が国でもフランスから伝わって来た「ユマニチユード」の理論を頭で理解する人は増えています。しかし人手が足りないとか、介護にそんな多くの時間をかけられないとかいった幾つもの言い訳で、真にこの理論を学び実践しようとする施設や病院は極めて少ないのが現状です。安易な薬剤投与が未だ多くの現場では横行しています。それは経済的効率を優先しているからでしょうか、いいえ人間性の尊厳を置き忘れているからではないでしょうか。 
私も医師として、反省すべき点は多々あります。それでもなるべく多くの時間をカウンセリングや脳トレに費やしています。「ユマニチユード」の理論を知る前から、この姿勢は変わりません。それでも現場の介護をするスタッフの大変さと、苦労の訴えに負けてしまう事があります。
【ご質問】
再々の質問のご回答ありがとうございます。 
本当に、このような公開の質問回答を受けていただける先生がおられるとは、信じられない思いで、感謝の気持ちしかありません。
私も向精神薬はなるべく増量したくありません。
10mgを服用して1週間ですが、あまり顕著な変化はありません。(急に効いたら、逆に怖いですが)
不安(寂しい)症状が強い、怒りっぽい、笑わないが顕著。
困っている症状は側で手を握ってないと、寂しいと、大声で呼び続けます。(昼間は施設に通所してますが、他の利用者がうるさくて困っている)
1日でも、不穏の波があり、強くなると、机叩く、物をなげる、他の人に暴言を吐く。
施設の人も、その際は、外に散歩に連れて行ってくれて気分転換を図ってくれてます。
大声だすと、なるべくスタッフの人が側についてなだめてくれてます。
ただ、四六時中手を握ることは施設、自宅でもできません。
自宅でも、なるべくよく話しかけ、好きやよ、ありがとうとか、褒めたりしますと、こっちこそとか言って、話ししてくれます。
でも、不穏が強い時は聞く耳を持たない状況になります。
また、とにかく側を離れると、1分もたたないうちに、大声で呼び続けます。
それと手を握っていても、不穏な時は、爪を立てたり、強く手をつねったり、かいたりを続けるので、こちらの手や腕が傷やあざだらけになり、痛さで我慢できない時が多々あります。
大好きな母です。なるべく自分で面倒みたいです。そのため、不穏の強いのがなくなればと思っています。
施設、家庭ともメンタルケアを一生懸命やっているつもりなのですが、それでも不穏になるので、辛いです。メンタルケアのやり方が違うのか、足りないのか・・・。なにが不穏の原因か分からないことが多いです。
こちらの話しかけもわかってますし、会話もしてくれるし、文字も読んだり、書けたり(変な文章ですが)娘の事もわかってます。
大変落ち付いている時は、気遣ってくれる言葉もかけてくれます。
同じ人間かと思うくらい差が激しいです。
メンタルケアのやり方、上手くいった事例などこのブログで機会あればまた紹介していただければと思います。
先生に一度診ていただきたいくらいですが、なにせ、関西で胃瘻、痰吸引では本人の移動は不可能です。
長々とすみません。いつも他の記事等も拝見し、色々参考になりありがたく思っております。
ありがとうごさいます。

青田さんへの回答(再々)

私の認知症外来での、「脳トレ」はそれなりの効果が見られます。長谷川式テストで言うなら14→18点ぐらいまでアップするケースも稀ではありません。問題は「脳トレ」の実施の仕方により大きい差が出ます。
焦らず、笑みを絶やさず、間違いを否定せずに地を這う様に続けて行く努力です。ある82才のご婦人は毎回外来に訪れる度に、私が何時も宿題の様に手渡す「脳トレ」用紙を、
「こんな物は一度も見た事がない」
と、半年以上も言い続けていました。それが1年以上かけた現在では、着実に「脳トレ」の効果を上げてご家族も喜んでいます。最初の半年ぐらいはご家族の不信感も顕著で、私も幾度か断念しかかった事実があります。「脳トレ」に即効性はまるでありません。ただ努力あるのみです。青田さんの仰った医師は、どの程度の時間をかけて「脳トレ」を実施しているのですか?
私の場合は初診から数回までの診察では、30分以上はかけて、ご家族を中心に「脳トレ」の実施方法と意欲向上のテクニックを理解して頂いております。この様な診療行為を実施しているドクターは稀だと私の娘(医師ですが)も言っておりました。
「認知症の公開質問にしても、日常の外来診察にしても大学病院で、こんな事をやっていたら上の先生に叱られてしまう」
とも、娘から皮肉を言われる事があります。
確かに長谷川式テストで10点以下だと、脳トレの成功例は余り見られません。
「認知症は、癌の進行と同じで、脳トレをしたくらいでは、止まらないと断言していました」
と、話された医師は認知症の何を勉強しているのでしょうか?世界的な認知症治療の流れを知らないのでしょうか?フランスで大反響を呼び起こされている「ユマニチュード」の理論を知らないのでしょうか。
医師も介護者も、もちろんご家族も色々な工夫を重ね「脳トレ」に励んでいるのです。「短期記憶」が悪ければ、写真や言葉かけを活用して何十回ともなく、脳に刺激を与え続けるのです。決して感情を出す事なく笑顔で刺激を与えるのです。時にそれは気の遠くなる様な努力と写るかもしれません。
いま、内科の私の外来に「うつ病」とか「統合失調症」の様な患者さんも数名通っています。何度か精神科の受診をお勧めしているのですが、また私の外来に来てしまいます。それは、私が長い時間をかけて彼等の話を聞くからです。長時間のカウンセリングとお考え下さい。一般外来の時間帯では、どうしても他の患者さんを長く待たせてしまいますので、外来診察以外の夕方とかに時間を割いてお話しを聞いています。その結果、1年以上かけて精神科領域の薬を大幅に減量させたりもしています。
「脳トレ」も全く同じです。その方に合った方法を常に探しています。
ある意味では、試行錯誤の繰り返しです。「認知症」と云う学問は未だ分からない事が多いのです。分からないからこそ、色んな角度から治療法を探し続けているのです。
現実には「脳トレ」に確実な成果を上げた病院も知っています。ほとんど薬に頼らず、「脳トレ」「音楽療法」「行動療法(自由な徘徊やダンスなど)」で、患者さん方は皆んな生き生きしてました。徘徊を自由にさせるなんて、どんな病院のどんな医師が思いつきますか?
そうなんです。認知症治療には未だ無限の可能性があるのです。日本で脳トレといえば、川島隆太教授が有名です。
ニンテンドーDSの「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が大ヒットしたのも、記憶に新しいかと思います。海外でも大ヒットしています。
しかし、私の実施している脳トレとは、かなりイメージが違います。懐メロ「歌謡曲や童謡」などで、ご本人の好きな物を覚えたり生活スキルを向上させたりするには、どうしたら良いのかなどの工夫を重ねています。
【ご質問】
成川先生
脳トレについてですが、
母親は、デイサービス(脳トレ中心)を週3回利用していますが、
① 計算問題は、50点中(48点)掛け算、割り算、引き算、足し算。
② 間違い探しは、全問正解。
洗濯、料理、買い物(一緒に同伴)は、完璧なのですが、
もう、亡くなった兄弟がまだ、死んだことを忘れています。
それと短期記憶は、忘れます。
本当に脳トレが効果が出ているのか、
(脳トレをしているから、この程度で抑まっているのか、それとも効果ないのか、考えてしまっています。)
知り合いの医師は、脳トレ全面否定者で、
認知症は、癌の進行と同じで、脳トレをしたくらいでは、止まらないと断言していました。
成川先生は、実際、脳トレを実践されて、
驚異的な改善症例は、ありましたでしょうか。
もし、あればお聞かせ頂けないでしょうか。
少しでも、希望があれば、最善を尽くしたいです。