安田さんへの回答

認知症の程度が分かりかねますが、通常は週3回で、一回3~4時間の透析時間、安静に耐えられるかが問題です。もし抑制でもしなければならないとなると、認知症は確実に悪化します。また認知症の程度によっては入院を引き受けない病院も多いと思います。欧米では、この様な場合に人工透析を行う事はありえません。個人的に言えば、週3回の透析はお母様にとって苦痛以外の何物でもないと思います。私の母親なら、今更その様な苦痛を与える選択はせず、静かに天寿の全うを温かく見守ります。
【ご質問】
成川先生、質問させて下さいませ。
81歳になる義母は55歳の時に脳出血を起こし以来、左半身不随の車いす生活です。現在は認知症が進み、私のことも忘れてしまっております。
最近は腎不全になり、腎臓機能が一割を切り、主治医から人工透析に入らないと死んでしまうと言われています。
義母は施設でお世話になっていて、透析するなら透析の出来る病院に入院することになります。
私としては今の義母には透析がとても負担で幸せな事とはあまり思えません。主人はやはり一日でも長く生きて欲しいとの思いがあるようです。
このような現状ですが、医師の立場から最善の選択、ご意見をお聞かせ願えませんか。
宜しくお願い申し上げます。

青田さんへの回答

分かっていても、青田さんの様にご両親の認知症への極度の警戒感や危機感を持ちながら日々の生活を送っていらっしゃると、気持ちが目一杯になって心のバランスが取りにくくなっているのではないでしょうか?人間の精神とは、何でしょうか。
哲学的に言えば古今東西、多くの人たちが限りない議論を重ねていますので今回は、私の独断と偏見を述べさせて頂く事をお許し下さい。それは、
「知識(教養)と理性、そして感情の3つからなる要素の複合体」
であると考えています。
この中で最も上位に占めているのが「感情」であると、私は理解しています。多くの人間は「理性」や「知識」で何とか自分の「感情」をコントロールしようと努力しています。
しかし、ある種の思いに心が満ち溢れ出すと精神のバランスが崩れやすくなります。
つまり、「理性」や「知識」だけでは「感情」のコントロールが困難になってしまうのです。それを救うのは何でしょうか?
私は「覚悟」と「諦観」であると考えています。人の世は、どんなに努力しても報われない事が多いのです。まして『認知症』と云う学問は未完の部分が多いのです。何人かの医師に相談しても単純に解決がつくものではないのです。
時に医師は何でも知っているとの誤解がありますが、それは大きな間違いです。彼等(私も含め)は医学の「カケラ」を知っているに過ぎません。そこに医学以外の深い教養(文学、哲学など)が加われば、医学の「カケラ」と合わせて精神社会の不可解な部分が幾ら推測出来るのです。ただそれだけです。人間的に教養の薄い医師たちは、そんな医学の「カケラ」だけで何でも知っているかのような顔をしているだけです。
ですから認知症であろうと、これは自分の親であるとの認識(愛情)から、その老いて行く過程を温かく見守る覚悟も必要ではないでしょうか。その様な覚悟から心に余裕も出て来るのです。「認知症」と云う老いの現象と精一杯向き合いながらも生きて行くしかないのです。医師と云うよりは、私も青田さんと同じ人間として日々の困難に向き合いながら、他人には言えない苦労(精神疾患を持った肉親と同居しながら)は抱えているのです。10年以上は大学を含めた専門医に相談しながらも解決のつかない肉親の精神状況に、日々悩み続けているのです。ただ認知症を学んでいる医師だけではないのです。毎日を何かに祈り続けている哀れな一人の人間でもあるのです。
この10年、医師と云う人間たちにどれだけ失望を、感じた事か?
やはり肉親に、認知症を含めた精神疾患を抱えた家族と、そこに心の痛みを知りぬいた少数の医師だけが、手を取り合って日々の困難さに立ち向かって行くしかないのでしょう。
     2019. 正月 3日
【ご質問」
成川様お世話になっております。
私は、母親に最近、暴言が多く、間違いを指摘してしまいます。
今日、母親は、本当に悲しそうな目で
『自分が認知症であることを知っている。』と言ってました。
母親は、『自分なりに必死に認知症と戦っていたようです。』
それを観て、今までの自分の言動を反省し、もの凄く、後悔しました。私自身、涙が出ました。
辛いのは、家族以上に本人なのですね。
よく、認知症患者にたいして、間違いを指摘せず、
褒めることが大事と言われますが、
成川先生が、以前から、認知症を治すのは、家族の『愛』『思いやり』と語っておられましたが、
これからは、母親にたいして、『愛』『思いやり』で、接したいと思います。
願わくば、少しでも、改善、進行を遅らせられてばと思っています。

青田さんへの回答

現在、日本で最も注目されている音楽療法の分野は「認知症」と言っても過言ではないでしょう。 特に、認知症予防に関しては、大きな期待が持てるようなデータもあります。
また、BPSD(認知機能障害によって、精神不安定になり現れる症状や行動)にも下記のような改善例が見られました。
暴力的な言動や行動が抑えられた
睡眠障害の改善がみられた
うつ状態が軽くなった
協調性がみられるようになった
メンタル面が落ち着いてきた
もちろん、認知機能障害については、コミュニケーション能力の改善が見られた事例や、記憶能力に関しても期待が持てるデータが存在しています。
さらに、音楽療法が高血圧にも効果があるというデータもあります。高血圧と認知症は一見関係なさそうに見えますが、高血圧によって心臓疾患や脳疾患につながり、その過程で認知症になる方が多いそうです。そのため、高血圧を予防することも、認知症を予防することにつながると考えられています。
バランスの良い食事をするためにはどうするのか?」と同じように、「より効果的に音楽を利用するにはどうすれば良いのか?」また「どんな症状に音楽の効果が期待できるのか?」をより明確にする必要がです。
ご家族を含む介護に従事する人たちと音楽療法士が協力して、音楽が健康にもたらす効果をデータとして蓄積していくことで、音楽療法を確かなものにしなければいけないと思っています。
「音楽って健康に良いのかぁ~」と興味が湧き、そこから音楽を通じて生きがいを見つけることができれば、そんな素敵なことはありません。
「音楽と健康との関係には、無限の可能性を秘めている。」音楽療法を発展させるということは、シニア世代のライフスタイルの充実にも繋がると信じています。
【ご質問】
成川様お世話になっております。
今、父親にたいして、
◎ 読書。
◎ アロマの芳香剤。
◎ ガム。
◎ 見舞いの時、車椅子で、談話室の連れて行く。
ことをしています。
他に何か出来ないかと考え、
『音楽療法』も効果があるのではと思い、
父親の好きな
セミクラシックの曲をウォークマン(買いました。)に入れ、今日、持って行きました。
父親は、気に入ってくれて、聴いています。
『音楽療法』は、脳の認知機能には、効果があるのでしょうか。
成川先生の『音楽療法』についての見解がありましたら、お聞かせ頂ければ有難く存じます。

青田さんへの回答

お父さまは、86才で2度目の骨折さらに急性期病棟で、ご家族の面談時間以外は拘束されているとのお話ですが、1日に40分ほどのリハビリで認知症が改善するか、他に良い方法があるかと言われれば、極めて悲観的な回答しか出来ません。基本的に拘束されている状態だけでも認知症は急激に悪化します。青田さんが現在なさっている以上の献身的な努力以外は私も思いつきません。私がそこの病院の医師なら脳血流改善剤の注射(この治療方法に関しては多くの医師に説明して来ましたが、数名の医師を除いて実施してはくれません。保険診療の適応外だからです)やメンタルケアの為の方法を色々と試して、少なくても身体拘束だけはしない努力をしてみますが、知らない病院に行って私が余計な口出しが出来る訳もありませんし…
そうなると青田さんが行っている努力以上の事は、今の私に思いつきません。後はその病院の担当医が、どの程度に認知症に関して深い知識を持っているかにかかって来ます。
回答にならない説明で申し訳ありません。
  【ご質問】
成川様お世話になっております。
父親が長期入院中で、認知症にならないか不安です。(今まで3か月で、これから3カ月間)
手術の前の日にせん妄を起こし、廊下に座っていたので、手術後は、身体拘束をしています。
家族がいる時は、外してもらっています。
今、私がしているのは
① 毎日、病院に行き、父親を車椅子で、談話室に連れて行く。他の方と会話し、テレビを診てもらう。
② 本を持って行って、父親に本を読んでもらっている。(『龍馬が行く』全8巻を持って行って、今、4巻まで父親は読んでいます。)
③ ガムを持って行き、父親にガムを噛んでもらっている。(父親も、ガムを噛んで、唾液を出すことが脳にイイことをわかっているようです。)
④ 今日は、握力強化のためのゴムマリを持って行きました。
今、入院しているのは、急性期の病院なので、リハビリ時間がどうしても、一日40分くらいなのが辛いです。
他に認知症予防で、出来ることがあれば、ご助言頂ければ幸いです。

ラブラさんへの回答

誰でも高齢になると、認知症になりえます。
現在のわが国の認知症発症者は462万人、軽度認知障害は400万人で、合わせると65歳以上の4人に一人が認知症とその予備軍だとも言われています。
さらに85~90歳の年齢階層では約6割以上、90歳以上では7割以上が認知症かその予備軍になっています。すなわち、私たちは長生きすれば認知症になる可能性が高いということです。
そして私の認知症外来、もしくは認知症講演(年に数回以上は各地域で行っています、頼まれると断れない性格で…もちろん全ては無料です)
での経験から良いますと、認知症に対し理解力のある人ほど認知症になりにくいという実感があります。自分だけは認知症とは無縁だと考えている人ほど早くから認知症になりやすい傾向があります。
何故なら正しい理解力を持った人は、認知症予防への対策も忘れないし、覚悟もあるからです。
「ご老人を見て、おかしな年寄りだと偏見を持つあなた、何時あなたが認知症だと言われるか考えてください。その時の自分の姿を想像してみたら、怖くて妙な偏見なんか持てないでしょう!」
と、私の講演では説明しています。
【ご質問】
ブログ拝見させていただきました。ただでさえ多忙な日々でしょうに、認知症について、ブログをとおしても一所懸命に向き合ってくださる医師の方がいらっしゃることに感銘を受けました。
わたしが介護業界に入り20年以上が過ぎました。国が、今までの認知症施策が間違っていたことを認めているのかは不明ですが、オレンジプランを策定し、例え認知症になったとしても安心して暮らせる地域づくりを目指しているというのは解ります。しかしまだまだ「変なことを言うようになった」「おかしくなってしまった」と、冷たい目線を浴びせる人の方が多いと思います。
どうすれば認知症を、一人でも多くの方に正しくお伝えすることができるでしょうか。先生のご経験の中で「この言葉を伝えたら在宅介護者が“ふっ”と楽になったようだ。」ということがありますでしょうか。
ご教示いただければ幸いです。

青田さんへの回答(再々)

新薬の治験の意味が分かりません。
もし、レミニールに関して新薬と考えていらっしゃるならば大きな誤解です。それ以外の新薬についてのお話しならば、その使用には私も賛同しかねます。レミニールはアリセプトで嫌な副作用経験をお持ちの患者さんや医師には、同一製剤として偏見されがちですが作用は緩和で、覚醒作用と精神安定作用さらに認知機能がバランス良く向上させるみたいです。私自身も何年間はレミニールに強い偏見を持っていた時期がありました。しかし、この数年はアリセプトとは異なった作用を示す薬であるとの認識から外来ではかなり使用しています。いずれにしましても薬の効き方は患者さん各自で、かなり効果の出方が異なりますので一般論は控えさせて頂きます。
どちらにしても、かかりつけ医の方は少し極端な見解をお持ちではないでしょうか。その医師の意見が間違っていると言っている訳ではないのですが、私には近寄りがたい雰囲気を感じます。もっと謙虚に色々な意見を取り入れて行きたいと思っていますのが、私の基本的な医療スタンスですので。現在の医療の常識が時代と共にどんどん変化して行く現状を考えるなら、自信を持った一方的な発言など出来る訳がないと思ってしまいます。
【ご質問】
成川様お世話になっております。
貴重なご意見ありがとうございます。
本当に涙がでそうになりました。
母親の情報について、追加事項としては
『抑肝散』は、既に服用中です。
服用して、2年になります。
嗅覚障害にならたいために、各部屋には、芳香剤(ローズマリー)を置くようにしています。
デイサービスでは、脳トレを中心に取り組んでもらっています。
母親自身も自分が認知症なのを気づいていて、必死で、戦っているのがわかります。
せっかく、落ち着いてたのに、この時期に転倒して、骨折した父親に怒りを感じます。
病院に母親が行くたびに母親が、精神的にもの凄く、疲れているのがわかります。
かかりつけ医に、『新薬の治験』について、相談すると大反対されました。理由は
① あくまでも、人体実験であること。
② プラセボと新薬と混ぜるので、実際に新薬を飲ましてもらえるかどうかは、50%であること。
③ 『治験』のたびに、何度も検査されるので、81歳には、かなり、負担になり、悪化するかもしれないこと。
成川様は、『治験参加』について、どういう意見をお持ちでしょうか?
もしよろしければ、ご意見を頂ければ幸いであります。

青田さんへの回答(再)

アリセプトの市場占有率に圧され、また販売時期が遅れた事もあってレミニールの知名度は幾らか低いかもしれません。ちなみにアリセプトの国内販売承認は1999年11月、レミニールは2011年3月です。ともにコリンエステラーゼ阻害剤ですが、実際的な薬理作用は微妙に違います。つまり、承認時期が遅れた分だけ、アリセプトの副作用が改善されたのかもしれません。アリセプトに比べて易興奮性や消化器症状も少ないです。さらにアリセプトより効果は持続性にも優れています。これに抑肝散を加える事により、精神を安定させ私の外来でも良い結果を上げています。もちろん青田さんが疑問視している脳トレや*嗅覚トレ(私の診察室からコンニチハ「56」をお読み頂ければ幸いです)など幾つもの補助トレーニングも取り入れています。レミニールの服用の仕方は前回の回答でご説明してあるはずですが。詳細は担当医にご相談して下さい。これ以上の回答は実際の患者さんを診る事なく、ご意見を求められるのは厳しいです。
<追記>診察室からコンニチハ(56)
次は嗅覚障害についてのお話です。昨今ではアルツハイマー型認知症発症の3年ぐらい前から、嗅覚障害が発生している可能性があると指摘する医学者が多くなっています。
日本の認知症患者に最も多いアルツハイマー型認知症の症状は記憶障害から始まるといわれてきました。脳の中の記憶をつかさどる海馬という部位が萎縮することにより記憶障害が起きるのですが、それより前に、鼻の奥にある嗅神経(きゅうしんけい)の細胞がダメージを受けることがわかってきたのです。
嗅神経は鼻から吸い込んだにおいの粒子を電気信号に変えて脳に送る働きをしているため、嗅神経がダメージを受けると、においが感じられなくなります。このことから、においに鈍感になったら、アルツハイマー型認知症の初期症状が疑われるのです。最近では、においの認識により認知症を早期発見する検査方法などの開発も進められています。
アルツハイマー型認知症では、嗅神経の障害を起こしたあと徐々に記憶障害を起こすようになっていきます。しかし、早い段階で対策をすれば、嗅神経を回復させ、認知機能も改善させることも可能です。
私の外来では、小さな薬壷に醤油、ソース、コーヒー、ニンニク、ワサビなどを少量ずつ分け入れて、患者さん方には目を閉じて頂き、私の手で薬壷の一つ一つをその鼻先に運んで行きます。通常の会話は成り立っても認知症の方は、5種類の薬壷に入った匂いの素の一つも当てる事が出来ません。匂いの種類を当てられないと云うより、匂いそのものに感覚が極めて鈍感です。一方若く健康的な方ですと、匂い刺激に極度の反応を示す人が多いのです。
「気持ちが悪い」
「吐き気を催す」
などの発言をする人さえいます。
つまり嗅覚障害も、年齢と共に少しずつ障害が始まっている、と考えた方が良いのかもしれません。「認知障害」が始まった方には、アロマテラピーなども参考になるかもしれません。
【ご質問】
成川様お世話になっております。
レミニールは、かかりつけ医から、全く、聞かなかった抗認知薬です。
医師からは、『アリセプト=副作用があり、気が荒れる。しかも、3か月~10か月くらいしか効果がない。』と言われ、
以前、成川先生にお伝えした
『ANM176、プロズマローゲン、アルファベスト、ココナッツオイル』を母親に飲ましています。
感じる効果としては
① 非常に穏やかで、いつも、笑顔になる。
(時々、気が荒れても対処できる程度。)
近所、デイサービスでは、人気者です。かなり、社交的になりました。
② 以前は、睡眠導入剤を服用しないと寝れなかったのですが、今は、ぐっすり寝れるようになりました。
但し、短期記憶は、忘れていくのと
亡くなった叔父(母の兄)、亡くなった祖母(母の母)が帰ってくるとか、先ほどまで、誰か来ていたと言います。
レミニールを飲むと、それらの症状は、改善されるのでしょうか、どのくらいの期間、効果があるとされているのでしょうか?副作用などあるのでしょうか?(以前、母親は、食欲不振だったのですが、最近は、食事をしっかりと摂ってくれているので、胃腸などの副作用が気になります。)
お忙しいところ、申し訳ありませんが、よろしく、お願いいたします。