認知症詩集(17)

人は何故凶暴になるのか?
寂しさと自己喪失…
内に向かってではなく
外に自己の心のバランスを保つ為に吐き出すのであろうか?
内に向かうと心弱き者は
うつ病となる…自己否定である
外に向かうと…他者否定である
心のバランスが凶暴になる…
言うは易しく、実際は難しき
心のバランスの保ち方である
人生の大きな課題ともいえる
私たちの心は余りに脆弱なのだ…
それに気付くかは
個々人々の生きて来た環境が
決定的な意味を持つ
劣悪な家庭環境であったのか
愛に包まれ慈愛に満ちた
人を人としてみる環境であったのか…
粗暴な振る舞いは子に伝わる
慈愛も子に伝わる
DNAの流れが滔々と
私たちの運命を左右してしまうのか?
私たちの運命とは何であるのか?

認知症詩集(16)

字は人なりと言われた時代が
パソコンの進化に伴い
陳腐の言葉と化して行く
人はパソコンの奴隷では
そんな不吉な予感がする
書道もまた芸術である…
大筆、小筆の持ち味…
何千年と云う書道の歴史
写経、写本と云う膨大な時間を
費やしての智慧の継承…
一字一句に編み込まれた
魂の遍歴…墨と筆、それ以上に
刻み込まれた心の想いを
パソコンで伝えられるのか
デジカメの様に
生鮮食糧品の如く
魂の思いも賞味期限があるのか

認知症詩集(13)

人は何故、認知症になるのか?
遺伝的要因、環境的要因…
学歴の問題、人生への向上心
脳内ホルモンのバランス
医者は浅い知識の中から
意味不明の御託を並べる
そこに何れだけの真実があるのか…動物実験や遺伝子分析だけで何が分かるのだ!
要は生命の根源に関する問題だ、
より真剣に生きたいのか
己の存在を軽んじているのか
何の為に生きているのかを
常に問い続けているのか
ただ一度の人生をどれだけ
この大きな宇宙の中ではゴミの様な存在かもしれないが…
生かされている感謝の気持ちを忘れずに
運命の果てまで努力する気力
そこに認知症の意味づけが
隠されている…
そんな気がしてならない

認知症詩集(12)

闘犬物語り、人の道もまた…
大きな声を出した方が負け…
尾っぽを先に巻いたら負け…
人も同じなのか
人生も所詮は我慢比べ
我慢に耐えた方が勝ち
痛い
辛い
もう無理!
大きな声で泣き叫んだり
粗暴な振る舞いで騒いだり
幼稚な顕示欲で他を圧倒する
野生化した野良犬の様に
落ちる所まで堕ちた人は
哀しき人間の残骸となるのか

認知症詩集(11)

残された日々は短し…
過ぎ去った日々は虚しい
何の自覚もなく生きた日々
勉学に勤しんだ月日は
朝露の如く消え去り
無為に浪費された年月の重みのみに
自己の軽薄さが容赦なく責め立てる
若き日の熱き想いは何処に
横道ばかりの人生ではなかったのか
振り返ると齢(よわい)70も間近…
せめて後10年、悔いなき日々をと…
それのみを祈る

認知症詩集(10)

年老いた妻と何を諍う
老々介護の身では確かに…
疲れは日々増大して行く
曲がった腰、痛い膝…若き日のしなやかな肉体が帰る訳もなし
子どもたちは皆忙しそう…
自らの肉体の衰えを恨んでも
無いもの「ねだり」の哀しさが
ただ増すばかり
齢90の妻は早く死にたいと…
齢(よわい)93の私は立ち止まる…
これは運命がくれた命
その定めに従い授けられたまま妻の口に今日も粥を注ぐ