診察室からコンニチハ(17)

現在の精神医学はクロルプロマジンの発見により、薬物全盛時代となっています。統合失調症の寛解率も格段に向上しています。それに伴い臨床心理学などの社会科学は下火になって来ました。そんな影響も手伝ってか、認知症の治療分野でも薬物を中心とした試行錯誤が多くなっています。
次に私が理想的であると考える認知症の治療指針は、臨床診断を中心に進めながら画像診断は補助手段とする診療方法です。医師自身の臨床診断能力を高める為の努力を怠らない事です。患者さんの話し方、家族関係などを丁寧に調べながら認知症を悪化させる要因が潜在していないかを探るのです。その為にはご家族との十分な面談が必要となります。
前回のブログで紹介しました、精神療法を中心で薬剤を殆んど使用しない病院ですが、人間とは本来的には感情に支配されやすいものですから、その感情領域に特化した治療法があっても良いのかもしれません。
認知症の方には出来る限り穏やかな環境で生活をして頂くのが基本です。それでも幻覚や妄想に悩まされる患者さんには、初めて抗精神薬の使用を試みるのが間違いの少ない治療法ではないかと思います。
しかし現実には画像診断が優先され、病院によっては患者さんやご家族の方との話もそこそこに、一方的に画像診断の説明だけをして投薬をする医師もいます。その様な診療行為が誤診に繋がりかねないと云う事実に目を向けずに…
私の認知症外来では、一応CT(頭部)と長谷川式認知症スケールは初診時に行います。これは脳血管障害や全頭葉の分野でどこに萎縮が強いか、さらには慢性硬膜下血腫などの有無を確認したりします。そして患者さんの容貌や声の大きさ、歩き方(小刻み歩行の確認)、手や頚部の振戦、筋固縮などを冗談を混じえながらチェックして行きます。難しい顔をして相手を追い詰める様な質問は厳禁です。認知症の強い場合は一緒に童謡を歌ってみたりもします。ともかくスムーズな人間関係を患者さんと早めに取り合えるかがキーポイントです。患者さんが医師にどれだけ信頼関係を持って頂けるか、これなくして納得の行く医療行為が出来る訳はないでしょう。特に精神疾患の患者さんでは、他の内科や外科と違って、より以上の信頼関係が必要とされます。内科医が胃カメラで直ぐに胃潰瘍を発見出来たという様な分かりやすいものではないのです。精神疾患の多くは、厚労省難病指定を受けやすいのが常です。
認知症と云う病気もアルツハイマー一辺倒から、病名は多彩を極め混在化しています。これからは病因説も多数に及ぶ事でしょう。先ずはアレルギー説、ウィルス説、遺伝子間の問題、大気汚染、免疫機能の低下、想像するだけで幾らでも出て来そうです。
次回に続く
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