診察室からコンニチハ(20)

抗アミロイドベータ治療法がアルツハイマー型認知症の抜本的解決に結びつくかとの期待感を、世界中の認知症専門医が抱いた時期もありました。しかし未だ成功例の報告は何も聞かれません。ワクチン療法への期待も萎んだままです。
アミロイドベータやタウ蛋白の蓄積がアルツハイマー型認知症の原因だと多くの医学者は考えていましたが、これも仮説に過ぎないとの議論が出始めています。つまりアルツハイマー型認知症の根本原因は、未だ闇の中にあると言えるかのもしれません。
そうなると認知症専門医は何をすれば良いのかとの、疑問に突き当たります。
ドネペジルやメマリチンの治療効果に疑いを抱く専門医が多くなっている現状では、生活療法や食事療法さらに脳トレなどに主眼を置いた治療効果を確かめて行くしかないのが、現状です。
検査的にはMRIで見る画像診断やドパミン神経の状態を見るSPECT(スペクト)検査、遺伝子検査さらにアミロイドPET(自費で10万円以上)の検査が最先端の技術と言えますが、それらの高度医療機器を使った検査が、未だ根本治療に生かされないのは残念です。末期癌の検査は出来ても治療と結びつかないのと同様かもしれません。また現状では最先端の医療機器で適切な診断が付いたとしても、多くの場合は認知障害が手遅れになっているとの文献もあります。
つまりは、生活療法や脳トレに重きを置いた治療や予防対策しかない訳です。私の認知症外来でも「脳トレ」を中心とした治療に励んでいます。またご家族の方への精神ケアにも、かなりの時間を費やしています。介護疲れのストレスを少しでも楽にして頂きたいと願うばかりです。その為にはご家族の愚痴を聞くのも重要な仕事なのです。そして何か少しでも役に立つと思われる介護上のアドバイスが出来たらと考えています。非常に熱心な家族には、医師サイドも押される感じで真剣になります。一方どこか投げやりなご家族には医師サイドも幾らか力の抜けた対応になる傾向があります。医師と患者家族の関係と雖(いえど)も、感情を持った人間同士の付き合いですから、その様な対応の変化にも止むを得ない所があると思います。
結局のところ、現在における認知症治療は、患者、家族、医師の三本の矢があってこそ何とか悪化を防ぐのが精一杯なのです。その中で一番重要なのは、ご家族の方の熱い思いです。このご家族の熱い支えがない限り、認知症の病状は悪化するばかりです。
そう考えるのは、私の偏見なのでしょうか?
次回に続く
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