診察室からコンニチハ(28)

【認知症に関する昨今の知見】
認知症といえばアルツハイマー型認知症という考え方が2010年ぐらいまでは、神経内科・精神科では支配的でありました。MRIにおける所見、遺伝子検査、家族性アルツハイマー病の存在、アミロイドβ蓄積の学説、タウ淡白犯人説それぞれが主張を譲らず認知症学会でも多くの意見が分かれていました。電子顕微鏡を使った脳内蓄積物質の解明に、世界中の医学者や生理学者が血まなこになっていたのです。
しかし、いずれの学説にも確たる軍配は上がりませんでした。当然の如く、真の病因が判明しない以上根本的な治療法が出て来るはずもありません。
脳血管性認知症(脳梗塞・脳出血など)と脳神経細胞変性疾患(多くはアルツハイマー型認知症)と云う単純な図式が崩れつつあります。レビー小体型認知症の存在が大きくなって来たのです。これまで、何故レビー小体型認知症が見過ごされて来たのでしょうか?…最大の原因はMRIなどの画像診断で細胞変性が最も遅れて出て来るからです。アルツハイマー型認知症の方が比較的に早い時期からMRIなどによる画像診断が容易だったのです。
レビー小体型認知症では臨床的な病状がかなり進行してから、画像診断で頭頂葉や後頭葉にレビー小体の変性像を見つける事が出来たのです。
少し大げさな言い方をすれば、助けようもない癌末期をCTやMRIで発見しても仕方がなかった様に、画像診断でレビー小体型認知症が見つかったとしても手遅れであったのです。しかし、医学の進歩によりレビー小体型認知症の診断技術も昨今では上がっています。
従来の検査では調べられなかったドパミン神経の状態を、画像で確認するSPECT(スペクト)検査などが早期診断を容易にしています。
これらの早期診断技術の進歩により、レビー小体型認知症が意外にも多いという認識が認知症専門医の間でも拡がっています。
ともかくレビー小体型認知症は、主症状が認知機能障害だけではなく、睡眠障害、運動障害、自律神経障害、うつ症状を含めた精神障害さらに薬剤過敏症状と症状が余りに多彩な為、精神科領域なのか神経内科領域なのか判然としない時代が長く続き診断基準も混乱していたのです。
ですから「認知症・パーキンソン症候群」などと並列した病名が平気で付けられていたのです。2017年にレビー小体型認知症の改訂・診断基準が出来あがり、この混乱にも幾らか統一の動きが出ています。
次回に続く
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