診察室からコンニチハ(40)

夕方家に帰り、妻にS出版社川島さんから言われた事を説明する。妻は今更何よ、と云った顔つきで…
「それは、殆んど私が言っていた事と同じじゃない」
そう言って、幾らか勝ち誇った顔をしていた。そう言われると返す言葉はないが、専門の編集者に言われるのとでは、私の心に加わるショックの度合いが違う。妻も時々は新聞に投稿する事があるので、文章の書き方には自分なりの意見を持っている。それでも自分の妻に言われたぐらいでは、どうしても…
「素人のお前が何を…」
と言う思いが強くなる。しかし、今度は違う。大手S出版社の編集者からの手厳しい指摘だ。
妻は皮肉交じりの言い方をしながらも、私を慰めてくれた。
「そりゃ、プロの出版社は売れ筋を気にしての発言だし、こう云う軽佻浮薄な時代では、タイトルと内容の意外性が決め手なんだから、売れるとか、売れないとかではなく、あなた自身がそれでも自分の小説を書きたいかどうかに全てはかかっているんじゃない。一編集者の言葉にそこまで落ち込む事もないと思うわ」
そう励まされて、私も幾らか気を取り直した。それでも、これから先私は何をすれば良いのか?…少し思い悩んでしまう。「霜月の夕暮れ」を解体して全面的に書き直すか…ちょっとそんな意欲は湧いて来そうにない。それでは新しい小説を書き始めるか?…頭の中で幾らかの構想はあったが心は単純には決まらない。それ以上に切羽詰まった仕事もある。
1ヶ月後に迫った講演の原稿も満足には仕上がっていない。先ずは、この原稿を仕上げるのが重要だ。そんな訳で10日ほどは講演会の原稿作りに専念した。
次回に続く
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