診察室からコンニチハ(46)

私の認知症外来には、色んな患者さんが来ます。一番手のかかる患者さんは幻覚や暴言の激しい患者さんです。さらに認知機能が保たれていたりすると、より治療に手間がかかります。
「俺がボケているって、ふざけるな!」
と、怒鳴られる事も稀ではありません。こんな時の対応は、穏やかに相手の気持ちに添いながら…
「いや、お年の割にしっかりしていらっしゃる。とても75才には見えませんよ。ともかく血圧だけ測らせて頂いても良いですか?」
と、笑みを絶やさず診察のペースをつかみます。血圧が正常であれば、
「良いですね、とても立派な血圧ですよ。羨ましいくらいです」
と、少し持ち上げます。このあたりから、患者さんとの精神的な交流を深めて行きます。
「ついでですから、健康診断的な採血をしても良いですか?」
と、柔らかく聞いてみます。その間も季節や地震の話など、さりげない会話を挟みます。血圧が高ければ、心配そうな顔をして、やはり採血を進めます。採血が終われば、その日は帰って頂きます。数日後の早い時期に検査結果を聞きに来てもらいます。その検査結果の中で少しでも異常値が見つかれば、
「いや、コレステロールが高いですね」
とか言って、抗精神薬を混ぜてしまいます。もちろんご家族とは事前の打ち合わせをしながらです。後は診察の度に抗精神薬の調整をして行くだけです。幻覚や暴言がほぼ消失した所で少しずつ「脳トレ」を始めて行きます。あまり内輪のテクニックを披露しますと、後で私自身が困るのではないかと危惧したりする思いもありますが、まあこの程度の話は良いでしょう。そんな訳で医師と云う仕事もかなり大変なんです。
次回に続く
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