中沢家の人々(13)

「もしもし、お忙しい所を申し訳ありませんが、私は村田道子の娘ですが、母は電話に出られますでしょうか?」
「あゝ村田さんね、ちょっと待ってて。村田さん、娘さんから電話だよ」
「あっ、お母さん今仕事の方は大丈夫」
「少しなら大丈夫だけど、何だい急に電話なんかして来て」
「実はね、お見合い話があるの」
「お見合いって、どう云う事なの?まだ夜学に通っている身じゃないか…」
「それがね、工場長さんの紹介で断り切れないのよ。お母さんにも是非ご一緒して欲しいと仰っているの。水曜以外の平日なら何時でも良いんですって。
お母さん、お願い、何とか休みを取って私に付き合って!」
「そりゃ平日なら休みが取れない事も無いけど、どうにも驚いた話だね。それで休みは何時頃に取ったら良いの!」
「無理を言って悪いんだけど出来たら1~2週間のうちにお願いします」
「また随分と早い話だね。相手の方は何の仕事をしているの?」
「料理屋のご主人なんだって」
「ご主人って、お前まさか後妻に入るっていうんじゃないだろうね。それならお母さんは大反対だよ」
「お母さん、何を言っているの?相手の方は未だ24才なの。後妻なんて話なら私だってお見合いなんかしないわ」
「24才で料理屋の主人なんて信じられないわね。何か特別の事情があるんじゃないの!」
「何を言っているの、れっきとした工場長さんのご紹介なのよ、失礼じゃないそんな言い方は。それよりもお母さんの目でも見て欲しいのよ」
「お前がそこまで言うなら、ちょっと待っててね。え~と私の次の公休日はと…そうだね3日後の金曜日なら休みが取れそうだよ。それで何処へ行けば良いのさ」
「山手線で新宿の隣の新大久保に午前11時半までに来て」
「改札口は何処なの?」
「池袋方面に向かって最先端の改札口で降りてくれれば良いのよ。その改札口で私が待っているから」
「分かったわ、それでもどんな服を着て行けば良いんだろうね。やっぱり和風が良いかね」
「別に和風でも洋服でも構わないと思うわ。相手に失礼な服装でなければ、ただ何時もよりは美味しい昼食を食べに行くつもりで来れば良いのよ」
「別に結婚すると決めた相手でもないんだから」
「そうかい、それなら難しく考えなくて良いんだね」
「そうよ、何も難しく考える必要はないのよ」
「それを聞いてお母さんも安心したよ」
と言って道子も何とか納得した。
さて、この母子の運命は幸と出るのであろうか?それは運命の神のみが知る。
明日に続く
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