中沢家の人々(33)

「それじゃあ、これから俺と一緒にホテルに行くか?」
里美は何の迷いもなく、
「もちろん喜んで、お供するわ」と言って来た。
逆に清吉の方が少したじろいだ。
「まぁ、それは今度の事にして今日はゴルフの練習に専念しよう」
「それって清ちゃん、女の私を試したの?」
「いや、そんな深い意味ではないよ」
「じゃあ、どんな意味なの…」
清吉は少し言葉に詰まった。
「分かった、後30分だけ練習したらホテルに行って汗を流すか?」
「それなら納得する」
と言って里美は機嫌を直した。ゴルフ練習場から20分ぐらいのホテルにチェックインしたのが午後7時だった。部屋に入り里美は先ずシャワールームに入って自分の全身の汗を丁寧に流した。そして清吉を同じシャワールームに誘い入れた。
狭いシャワールームではあるが22才の里美の白い裸体を目の前にして38才の清吉はどう頑張っても自分の中の男を抑え切れなかった。生まれて初めての浮気である。紀子への裏切り行為であるとは自覚していたが、再び本物の恋をした様な錯覚に陥っていた。夕食はルームサービスで取る。夕食後は清吉の方から幾度ともなく里美を求めてしまう。もう今更、後戻りは出来ない。やっぱり自分の子供が欲しい。忘れかけた本能が甦えってしまったのだ。
二人のベッドの中で清吉は打ち明けた。今の女房と結婚して10年以上も経つが子宝に恵まれないと…
「遊びでこんな関係になったのではない。里美が俺の子供を産んでくれるなら結婚しても良い」とまで、言ってしまった。
里美もそんな話を聞かされ驚いた。水商売上の愛人契約ぐらいにしか考えていなかったのである。まさか結婚を前提に付き合ってくれとの話まで出るとは考えてもみなかった。年だって16も離れている。結婚と愛人とは似て非なるものがある。ホテルに誘ったのは自分の方だが、まさか結婚を申し込まれるとは考えもしなかった。
だからと言って直ぐに「結婚なんて!」とも否定的な発言は出来ない。
ここは付かず離れず様子を見るしかない。38才で年が16離れていると言っても毎日ゴルフをやっているだけあって、身体は青年の様に均整が取れている。
その分だけ、かなり若く見える。それに経済的には想像も付かないほどの豊かさだろう。日頃の金の使い方を見ていれば想像は付く。
里美の女としての打算が頭の中で巧妙に計算され出した。
次回に続く
関連記事

コメント