中沢家の人々(37)

中沢家の人々(37)は筆者都合により大幅に校正と加筆をしました。ご容赦下さい。それでは引き続き(37)話をお楽しみください。
「お前、私立探偵まで雇ったの?」
道子は少し驚いた顔をして尋ねた。
「そりゃ仕方が無いでしょう。
旦那が殆んど家に帰って来ないで何処で何をしているか分からないのよ。妻としては当然の行動でしょう!」
道子の自分を詰る様な質問にムキになって言い返した。紀子の顔は涙から怒りに変わっていた。
「まあ、それもそうだね。お前の言う通りかもしれない。
でも、あの清吉さんがね!」
「そうなのよ、でも私には少し悪い予感はあったの…」
「どんな?」
「あの人がゴルフに狂い出してから妙な感じがあったのよ。だってお店には全く顔を出さなくなって、その内に酒も飲む様になり出しナイトクラブみたいな所に通い出して…女が出来るのは時間の問題だって思わない?」
「確かに、そう言われればそうね。しかし、紀子はそれを黙って見ていたのかい?」
「まあ黙って見ていたと云う訳ではないけれど、義父(お父さん)の病気の事もあったり、前にも話したけれどお父さんが起こした火事騒ぎの後始末や何やらで、私もあの人もかなり疲れていたの…」
「それで?」
「まあ何となく少しは息抜きにあの人が遊んでいても仕方がないかと思ったりて…」
と、紀子は言い訳とも言えない返事をした。
「だからと言って清吉さんを、そこまで野放しにして置いて良いって訳でもないだろう」
「そりゃ、そうかもしれないけど一緒にゴルフに行くのも嫌になったりしていて、私も妻としての義務を忘れていたのかもしれない」
「まあ、そんなに自分を責めても仕方がないだろう。長い結婚生活の倦怠期だったのかね」
と道子が慰める様に言った。
紀子も気持ちを取り直して、
「そうね、私たち夫婦は倦怠期だったのかもしれないわね。お金の使い方もお互いにだらし無くなっていたし、お店の売り上げも順調で何も不自由していなかったから、それがいけなかったのかな!」
「まあ、どっちもどっちかね。それにしても清吉さんの遊び方は度を超えている事は確かだね…」
「ねぇ、お母さんもそう思うでしょう」
「それはそうだけれど、何か仲直りする方法は無いものかね」
「子供まで出来て、その愛人と殆んど一緒に住んでいるのよ。
今さら仲直りもないでしょう」
と、紀子は少しばかりイラ立った顔つきになって来た。
「そんな風に紀子が思うなら、それも仕方がない事なのかもしれない。私達母娘は全く似た者同士みたいな気がして来たよ」
「何が似た者同士なの!」と、紀子は腑に落ちない顔で聞き返した。
「お前、徳治さんの事は覚えているだろう。お前が高校を卒業するまで世話になっていた米問屋の徳治さんと私は10年以上も夫婦同様の生活をしていただろう。それなのに子供一人恵まれなかった。先妻の奥様との間にお嬢さんこそ二人いたが男の子はいなかった」
次回に続く
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