大阪娘さんへの回答(再)

先ず一番目に重要な事は、認知症患者さんに拒否的な対応を、ご家族の方がしてしまうと、その怒っている意味が理解出来ず、その否定された事実のみが残ってしまうのです。認知症患者さんにとって、自分の行為が拒否されれば脳神経細胞の活性はより劣化して行く傾向が強いと言われています。ですから患者さんが間違った行為をした時は、その間違いを指摘するのではなく鷹揚に受け止めるのです。
「あれ、お母さん今日は少し体調が悪いのかな?…いつものお母さんとは違うみたい」
とか云った様にです。そして更に重要な事は褒め上げる事を忘れない事です。
「あれお母さん、今日のお味噌汁は美味しいわね。魚の焼き方が良いわ」など、
どんな事でも良いから褒め上げる訓練を貴女自身がして下さい。
さらにHDSーR13点と云うのは中等度の認知症であると云う事ですから、ここが大きな分岐点です。少しでも改善させられるか、更に悪化させてしまうのか!
そこには医師の治療より、ご家族の対応が大きく作用します。私が日頃外来で口にしているのは、認知症の最大治療法は「患者家族の大きな愛」であると…
それにより認知症患者は心の安定が得られるのです。不安定な精神状況では認知症の治療は何をやっても無意味です。心優しく、手を握り肉親の情愛を精一杯注ぐのです。その上で焦らずに、ゆっくりと脳トレや音楽療法(懐メロや童謡)、オシャレ感覚を常に忘れずネイルアートをやったり、見出しなみに注意を払うのです。人間が人間らしく生きて行く方法を模索するのです。オシャレ感覚を呼び戻す事で認知症状が改善したとの報告は幾つもなされています。
もう一つのご質問、母は興奮性のアルツハイマーなのか、アルツハイマーのピック化なのかと云う問いかけですが、興奮性のアルツハイマーと云う病名は発展途上の医学が誤解した概念です。アルツハイマーのピック化と云う考え方が一般的です。その様な患者さんにアリセプトとメマリを処方していた医師が数多くいましたが、全くの投薬ミスです。アリセプトの重大な副作用の一つである易興奮性に、それを抑制するメマリを同時に投与する愚は程度を超えています。またリバスタッチはアリセプトと同様にアセチルコリンコリンエステラーゼ阻害作用を示す中枢移行性の高い物質として使用されていますが、このパップ剤のカブレ症状は深刻です。アリセプトと比べ易興奮性は少ないのですが、稀に奇異現象を認めます。つまり脳神経細胞を活性化する目的で使用しているにもかかわらず、突然に逆作用を呈し、意識がモウロウとしてしまうのです。私も数例しか経験しておりませんので、認知症専門医でないと恐らく気づく事はないかもしれません。
リバスタッチを中止すると1~2日で意識は正常に戻るので、因果関は明らかであると思います。
リバスタッチの製薬メーカーに、その奇異現象について尋ねてみましたが納得の出来る回答は得られませんでした。
基本的にアルツハイマーのピック化にアリセプトやリバスタッチの使用は、かなり慎重に行なわなければならないのです。多くの医師が安易に使い過ぎていますから。その意味で貴女がリバスタッチの使用を中止したのは正しい判断だと思います。
将来的には分かりませんが、現時点の医療水準では意味不明の認知症薬よりは生活療法と脳トレにまさる治療法はないと思います。ただピック化の強い患者さんでは精神安定剤などの薬が必要な時もありますが。その精神安定剤の投与方法にしても、かなりの熟練度が必要で精神科医の失敗例を余りに見ている私には不安です。その意味では納得が行くまで医者を探し続ける努力は必要かもしれません。
さらにMRIなどの画像診断も、一つの参考所見であって、正確な認知症の診断を下すには至っておりません。認知症と云う医学自体が余りに未発達なのです。大学の医者なども当てにはなりません。
この様に悲観的な事ばかりを書きますと、じゃあどうすれば良いのだとのお叱りを受けそうですが、やはり現時点では脳トレと生活療法が基本です。脳トレの私なりの資料を追記しますので、ご参考になれば幸いです。
『脳トレーニング』
初級コース(記憶力のアップ)
2文字の単語を10個並べる。
くり、いす、はな、かき、なし
さる、とり、うみ、とら、うで
以上を2分間、音読で暗記する
そして次の2分間で書いてみる
8個以上暗記出来たら次に行く
初級中級コース
2文字と3文字の混合
すずめ、くま、かもめ、りす、さくら、かみ、とけい、ほん、さとう、ねこ
同じ様に2分間の音読で暗記
次の2分間で書いてみる
8個以上暗記出来たら次に行く
中級コース
3文字の単語を10個並べる
かめら、みみず、みかん、
いちご、つみき、からす、
ばなな、さくら、うちわ、
とんぼ
 
 中級上級コース
3文字の単語と4文字の混合
うちわ、すずむし、すいか、
よこはま、まくら、にんじん、ばなな、たけのこ、こりす、
しまうま、
上級コース
4文字の単語を10個並べる
まつたけ、やまいも、
かきのき、しんぞう、
ほんばこ、すいしゃ、
のこぎり、だいこん、
あおぞら、さざんか
 
初級コース(計算力のアップ)
12問を1分以内での練習
3+5=、8+9=、7+6=、4+8=
12+6=、17+9=、25+8=
7+13=、42+5=、8+16=
19+5=、6+23=
初級中級コース
12問を1分以内での練習
39+17=、21+18=、45+18=
52+14=、34+13=、61+42=
76+21=、46+17=、19+15=
43+18=、13+42=、56+37=
中級コース
12問を100秒以内での練習
57-6=、23-8=、45-7=
42+26=、36-9=、38+45=
65-11=、48+15=、37+61=
84-13=、72+13=、69-21=
中級上級コース
12問を100秒以内での練習
13×3=、16×4=、18×3=
21×2=、17×3=、22×4=
31×3=、15×4=、12×5=
8×11=、19×2=、23×3=
上級コース
12問を100秒以内での練習
33÷3=、21÷7=、45÷9=
44÷4=、63÷9=、18÷9=
55÷11=、81÷9=、15÷5=
72÷8=、48÷4=、66÷3=
この脳トレも決して強制せずに、ゲーム感覚でやるのがポイントです。出来れば貴女も一緒に褒め合いながら1日に2回、朝と夕方に実施出来れば3ヶ月程で、それなりの効果が期待出来ると思います。
もし、ピック化が進んでいて脳トレが不可能であると言うのなら、やはり軽い精神安定剤が必要となるかもしれません。参考薬としては、抑肝散7.5gの漢方薬が一番安全性が高いと思います。次にお勧めはウインタミン散10mg(朝、夕)が選択肢となります。グラマリールを使いたがる医師が多いのですが、脳トレには適しません。また認知症患者さんのお母様を見て行く上で、これからも多くの疑問が出で来ると思いますが、私でよければ、何時でもご質問は受けつけます。
またプレタール(シロスタゾール)がアルツハイマーに奏効するかのご質問ですが、この薬は血小板が集まって血栓(けっせん)(血液のかたまり)ができるのを防ぎ、血液の流れを改善する血栓症の専門薬ですので動脈硬化性の認知症には多少の効果が期待出来るのかもしれませんが、多くの専門医は否定的です。以前にTV番組(NHKスペシャル)でシロスタゾールやインスリン点鼻薬の認知症予防効果について取り上げられました。結果は明らかな優位差は認められませんでした。
認知症の進行を抑えるには、まず薬物療法もありますが、そのほかにも心理学的なのもの、認知訓練的なもの、運動他音楽芸術的なものなど薬によらない治療法などさまざまなものがありますので、納得の行く治療を検討して行くべきでしょう。
【ご質問】
成川先生
ご多忙中にもかかわらず、懇切丁寧なご指導を賜り、ただただ感謝しかございません。
先生、本当に、本当に、ありがとうございます。
母に関して、もう少々お話しを聴いていただければ幸いです。
母は、アルツハイマーの要介護1で、HDSーR13点となっております。中核症状の亢進が著明で、陽性症状が強く、陰性症状はありません。
母は独居しておりますが、わたしが頻繁に様子を見に行っています。
ADLは正常域で、IADLは多少問題はあるものの、買い物など日常行為は独力でこなしております。迷子、徘徊はございません。
以上の状況から、以下の点について、ご指導いただけますなら、ありがたく存じます。
①母の言動がもとで、怒鳴りあってしまうことがあります。怒鳴ってはいけないことは重々承知しているにもかかわらず、怒鳴ってしまいます。また、ネガティブな発言もしてしまいます。このようなわたしの態度は、母の病状を悪化させるでしょうか。悪化させるとすれば、それは病理学的にみて、脳の萎縮の拡大を意味するのでしょうか。
②今年の2月まで、リバスタッチを使用しておりましたが、陽性症状など副作用を懸念して、わたしの判断で中止いたしました。わたしの判断に問題はありますでしょうか。
③プレタールがアルツハイマーに奏効するとの記述を目にしました。服用させたほうが良いでしょうか。
④母の病態から、母は興奮性のアルツハイマーなのか、アルツハイマーのピック化なのか峻別できません。峻別することが、今後の母の治療や介護に影響すると考えますが、如何でしょうか。
以上、お見苦しい文面でたいへん申し訳ございません。先生がお手透きの折りにでも、ご指導いただけますなら、身に余る光栄に存じます。
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コメント

医師の選択

成川先生

先生の親身のご指導に、熱い涙が溢れます。先生、本当に、本当に、ありがとうございます。
たいへん恐縮ではございますが、先生のご誠意に甘えさせていただき、もう少々、ご指導いただけますなら、幸いに存じます。

母を主治医の診察に連れていきました。
問診の後、母を退席させて、主治医に、母の容態を訊ねたところ以下の指摘をされました。
①母のアルツハイマーは中等度の後期にある。発症して5年は経っている。
②MCIとアルツハイマーに境界はない。アルツハイマーであることは、結果的に、完治するMCIではなかったことを意味する。
③今後、服薬をしても、確実にアルツハイマーは亢進する。薬はそのうち効かなくなる。
④施設に入所させたほうがよい。お母さんが嫌がっても、お母さんに合う施設があるから。施設に入れば、あなたも(わたし)楽になる。
⑤リバスタッチは、必ず使うように。エビデンスはある。少しでも使わないと、悪化する。
以上の指摘がありました。

率直に言いますと、主治医の指摘に、わたしは不信感を持ちました。
主治医をかえたい、と思いました。
ただ、主治医のいる病院は地元の中核病院ですので、今後を考えると、主治医をかえることは、母にとって不利益になるのではないか、と考えてしまいます。

成川先生に、主治医の指摘に関するご意見と、主治医変更に対するご指導をいただけますなら、たいへん光栄です。

身勝手なお願いばかりしてしまい、誠に申し訳ございません。


医師の選択

成川先生

先生の親身のご指導に、熱い涙が溢れます。先生、本当に、本当に、ありがとうございます。
たいへん恐縮ではございますが、先生のご誠意に甘えさせていただき、もう少々、ご指導いただけますなら、幸いに存じます。

母を主治医の診察に連れていきました。
問診の後、母を退席させて、主治医に、母の容態を訊ねたところ以下の指摘をされました。
①母のアルツハイマーは中等度の後期にある。発症して5年は経っている。
②MCIとアルツハイマーに境界はない。アルツハイマーであることは、結果的に、完治するMCIではなかったことを意味する。
③今後、服薬をしても、確実にアルツハイマーは亢進する。薬はそのうち効かなくなる。
④施設に入所させたほうがよい。お母さんが嫌がっても、お母さんに合う施設があるから。施設に入れば、あなたも(わたし)楽になる。
⑤リバスタッチは、必ず使うように。エビデンスはある。少しでも使わないと、悪化する。
以上の指摘がありました。

率直に申しますと、主治医の指摘に、わたしは不信感を持ちました。
主治医をかえたい、と思いました。
ただ、主治医のいる病院は地元の中核病院ですので、今後を考えると、主治医をかえることは、母にとって不利益になるのではないか、と考えてしまいます。

成川先生に、主治医の指摘に関するご意見と、主治医変更に対するご指導をいただけますなら、たいへん光栄です。

身勝手なお願いばかりしてしまい、誠に申し訳ございません。