大阪娘さんへの回答(再々)

そもそも認知症とは何なのですか?…先ずは基本から考えて行きましょう。一般的な分類で言うなら【脳血管性の認知症】
       脳出血、脳梗塞、頭部外傷
【神経細胞変性による認知症】
     変性と云う意味は、顔で言うならばシミ、ソバカス、ホクロ、化粧品による慢性的な皮膚の変化、それ以外にも紫外線による皮膚の炎症なども考えられます。
     これと同じ変化が脳神経細胞に生じた現象を神経細胞変性疾患と言うのです。妙に難しく聞こえますが、頭の中に出来たシミ、ソバカスだと思えば良いのです。
     これらのシミ、ソバカスの出来た場所で、アルツハイマー型認知症とか、レビー小体型認知症とか言われているのです。
     さて、問題はここからです。年齢とともにシミやソバカスは顔のあちらこちらに出来る可能性が強く出ます。それと同じ事が脳神経細胞にも起こりえます。
     それなると単純なアルツハイマー型認知症とか、レビー小体型認知症、ピック病さらに動脈硬化性の認知症など存在しにくいのです。多くの認知症は複雑に混じり合っている事が多いのです。
     この複雑な認知症と云う学問を研究すればする程、認知症専門医は毎日が苦悶の日々なのです。
     不勉強で医学雑誌の一部だけを読んでいる医者だけが、平気でアルツハイマー型認知症だから、この薬を飲んでいれば良いなどと単純に言い切れるのです。何百と云う認知症患者さんと接していると、個々の患者さんにどの様な治療法が適切なのか迷いの中で苦悶しているのが、現在の私の憐れな姿です。それでも時に、私自身のアイディアで認知機能が向上した時などは無上の幸福を感じる事まあります。レビー小体型認知症の患者さんが全く口を開けくれず脱水症で幾日も点滴を続けていて胃瘻にでもするしかないと思われた患者さんが、私の試行錯誤の処方(点滴内容: 誰も考え付かなかった薬)で、摂食機能がどんどん良くなり、しっかりとご自身の口でお食事を召し上がり元気な姿で退院する姿を見る時などは目頭が熱くなります。
話がかなり脱線している様です。本筋に戻ります。
「MCIとアルツハイマーに境界はない。アルツハイマーであることは、結果的に、完治するMCIではなかったことを意味する」
先ず、この項目に疑問を感じます。ご存知とは思いますが
MCIの定義は通常「軽度認知障害」と解釈されており長谷川スケールでは21点以上とされております。さらにMCIを放置すると、認知機能の低下が続き、5年間で約50%の人は本格的な認知症へ進行すると言われています。
ここで必要なのが生活療法と脳トレーニングさらに生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症、慢性飲酒や喫煙『受動喫煙も含みます』抗精神病薬の服用)の改善です。
ここで、考えるべきはお母様のHDSーRが13点であると云う事ですから少なくてもMCIの定義には当てはまらないと云う事です。
しかし、このドクターの重大な判断ミスはアルツハイマーとMCIに境界はないと言っている事です。境界はあるのです。MCIでは可逆的で認知機能の改善する余地が大きいと云う事です。
一方HDSーRが13点であると云う事は認知機能の改善にかなりの努力が必要になって来るのです。だからと言って、認知機能の改善が不可能だとは言っておりません。ただMCIの患者さんよりは大きな努力が要すると言っているのです。
ただし、アルツハイマーであるかどうかは別の問題です。
さらに
「リバスタッチは、必ず使うように。エビデンスはある」
と言う発言も根拠がありません。
このドクターを何を見てエビデンスがあるなどと言っているのでしょうか?
製薬会社の誇大広告の文献なのでしょうか?
あるいは一部学会の部分的な論文なのでしょうか?
「リバスタッチ」の効果に疑問を投げかけている学者も多いというのに…
また「施設に入所させたほうがよい。お母さんが嫌がっても、お母さんに合う施設があるから」
と云う説明にも疑問が残ります。
私は、これまで10数ヶ所の施設で認知症の講演を行っていますが、かなり問題の多い施設を目にする事が多く、安易な施設入所は反対です。
以上の理由から主治医は変えるべきでしょう。
【ご質問】
成川先生
先生の親身のご指導に、熱い涙が溢れます。先生、本当に、本当に、ありがとうございます。
たいへん恐縮ではございますが、先生のご誠意に甘えさせていただき、もう少々、ご指導いただけますなら、幸いに存じます。
母を主治医の診察に連れていきました。
問診の後、母を退席させて、主治医に、母の容態を訊ねたところ以下の指摘をされました。
①母のアルツハイマーは中等度の後期にある。発症して5年は経っている。
②MCIとアルツハイマーに境界はない。アルツハイマーであることは、結果的に、完治するMCIではなかったことを意味する。
③今後、服薬をしても、確実にアルツハイマーは亢進する。薬はそのうち効かなくなる。
④施設に入所させたほうがよい。お母さんが嫌がっても、お母さんに合う施設があるから。施設に入れば、あなたも(わたし)楽になる。
⑤リバスタッチは、必ず使うように。エビデンスはある。少しでも使わないと、悪化する。
以上の指摘がありました。
率直に言いますと、主治医の指摘に、わたしは不信感を持ちました。
主治医をかえたい、と思いました。
ただ、主治医のいる病院は地元の中核病院ですので、今後を考えると、主治医をかえることは、母にとって不利益になるのではないか、と考えてしまいます。
成川先生に、主治医の指摘に関するご意見と、主治医変更に対するご指導をいただけますなら、たいへん光栄です。
身勝手なお願いばかりしてしまい、誠に申し訳ございません。
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