想い出は風の彼方に(30)

私は急に真顔になって、
「綾子ちゃん、そんな事より英語の勉強をしなけりや…何しに来たのか意味がないじゃあないか」
綾子は少し舌を出して、
「そうでした、私が変な質問ばかりをするから英語の勉強をすっかり忘れていました。ちよっと、馬鹿みたい…」
「先ずは英文法からしっかりと身に付けなければね。SVOCの5文型の基本パターンから復習して行こうか。学校でやっているね?」
綾子は自信なさそうに、
「はい、少しやった様な…!」
「それでは先ず、SVOCの意味から言ってみて?」
「え~と、Sは主語ですか。つまりSubjectですよね」
「その通りだ、じゃあVはどう言う意味なの」
「動詞のVerbですか」
「うん、良く勉強しているじゃあないか。Oは目的語のObjectだし、Cは補語を表わすComplementだよね。これにMの修飾語を表現するModifierが加わる訳だ。これが「文の要素」と呼ばれるものだ。 この文の要素(S・V・O・C・M)がどのような順番で並ぶのかによって、いわゆる「文型」というものが決まってくるのだ。分かるよね…」
綾子は苦し紛れに、
「はい、何とか」
と、ようやく答えた。そこに丁度、浩司の母が帰って来た。
「まあ、こんな可愛いお嬢さんが家に遊びに来るなんて初めての事だわ。どうかゆっくりしていって下さい」
「有難うございます。突然にお邪魔して申し訳ございません」
「良いのよ、余計な気を使わないでね。今、水ようかんでも出しますから…お嫌いではないでしょう?」
「嫌いだなんてとんでも無い、大好きです」
「そう、それは良かった」
「お母さん、もう分かったから少し席を外してくれない。今は英語の勉強をしているんだから…」
「はい、はい、分かりました」
にこやかな顔で、母の鈴子は台所に引き下がっていった。
「優しいお母さまね、うちの母とは大違い。第一に品と云うものがまるで違うわ」
「君のお母さんだって、良いお母さんじゃないか。お料理だって上手だし…まあそんな話より英語の勉強をしなけりゃ」
「そうですよね、ご免なさい。余計な話ばかりをしていて」
「さて、何処まで話したっけ。そうそう、(S・V・O・C・M)の『文の要素』についての話をしていたんだ。まずは【S(主語)V(動詞)】の1番シンプルな文型だと(誰がどうする)、(何がどうする)などを表現した場合は
I walk.
(私は歩きます)
となるけど、これにO(目的)を付け加えると
【どこに】が必要となり
I walk to school.
(私は学校に歩いて行きます)
と云う表現になるのだ。
ここから話が段々と難しくなるけど、大丈夫だね?」
綾子は欠伸を噛みころしながら小さな声で、
「はい」
と頷いた。
次回に続く
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