想い出は風の彼方に(48)

丁度一週間目に綾子は浩司の家に向かった。「英文法の参考書と小説を返しに参りました。小説は感動で涙を流してしまいました。篠木さんって、かなりの恋愛経験をお持ちなのですね。私は少なからず驚きました」
「綾子ちゃん、それは大きな誤解だよ。三流の私立高から医大まで、ともかく勉強に明け暮れていたんだよ。何処に恋愛ごっこをしている暇があるって言うの?」
「本当に一度も恋愛をした事はないのですか!…それであんな純愛小説を書けるのですか、私にはとても信じられない」
浩司は少しばかり気分を害して、
「あの小説は、僕の憧れと妄想の産物でしかない。君にとやかく言われる筋合いではないでしょう」
そう言われ綾子は、やや涙目になって…
「ご免なさい、余りにリアリティのあるお話だったので篠木さんの体験に基づく小説だったのかと思ったものですから…なおこさんと自分が同一視して、彼女はあの後にどんな生き方をするのかと考えてしまったのです。何にしても、とても素晴らしい作品だと思います。篠木さんに怒られると私は哀しくなります。英文法の勉強も真面目にして来ましたから、テストをして下さい」
浩司は幾らか機嫌を直して、
「まあ、僕も少し感情的になった様で恥ずかしいよ。それなら英文法のテストを実際にするから、2階の僕の部屋においで…」
「もう、怒っていません?」
綾子は恐る恐る尋ねた。
「大丈夫、何も怒っていないから気にしないで…ともかく英文法のテストをしようか!」
「はい、それではお願いします」
二人は2階の浩司の寝室で英文法のテストを始めた。
若い女性が一人で入るのは幾らか躊躇(ためら)いを感じるはずだが綾子は何も言わず浩司に付いて来た。浩司はベッドに座って、綾子を自分の勉強机の前に座らせテストを始めた。参考書の中から浩司が口頭で質問をして綾子が、わら半紙に解答を書いて行った。10問を色んな分野から出したが、驚く事に全問正解だった。
「綾子ちゃん、凄いな。よっぽど勉強したんだね、見直したよ」
「嬉しい、篠木さんに認められて…」
そう言うなり、綾子はベッドに座っている浩司を押し倒して来た。
「綾子ちゃん、駄目だよ。そんな事をしたら僕も若いのだから抑えが効かなくなる」
それでも綾子は浩司に縋(すが)り付いて身体を決して離そうとはしなかった。
「綾子ちゃん、君は吉村の妹じゃあないか。こんな事をして僕が本気になったらどうするの?」
「本気になっても構わないわ、篠木さんの事が大好きだから…」
「困ったな、君の強引さには」
そう言っても浩司は、まるで困っていなかった。若い女性の柔らかな身体と甘ずっぱい匂いには抵抗し難いものがあった。彼は綾子の唇に自分の唇を幾度ともなく重ねた。段々と抑制が効かなくなって来た。浩司の右手は綾子の乳房をまさぐっていた。17才の若い乳房は弾力性に富み、彼の男は暴発寸前にまで追い詰められた。
すると1階の玄関でドアの開く音が聞こえて来た。それで二人とも、やっと我に返って洋服の乱れを直し、勉強をしている振りをした。
次回に続く
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