想い出は風の彼方に(54)

浩司の家から綾子の家までは電車で、駅が3つぐらいの近さであった。徒歩を入れて30分もかからない。しかし、この日の二人は遠回りして上野まで行き不忍公園を散策した。春と言っも未だ3月初旬である。夜の風は冷たかった。それでも二人の心は幸福に満ちていた。その手はしっかりと握られ身体もピッタリと寄り添っていた。人目を気にしながら幾度か唇も重ねた。
「今夜はご免ね、皆んな馬鹿みたいに燥(はしゃ)いで僕たちが今にも結婚する様な勢いだ。綾ちゃん傷付かなかった」
「ううん、私は全然。それより浩司さんこそ嫌な思いをしたでしょう」
「僕は綾ちゃんが心から好きだから何を言われても平気だよ」
「嬉しい、浩司さん。もっと強く抱いて!」
「綾ちゃん…」
そう言うなり、浩司の口づけはより激しくなった。
「3月の部活の合宿前に二人で小旅行に出かけようか?
「何処へ?」
「箱根でも日光でも何処でも良いんだ。ただ綾ちゃんと二人だけでずっと居たいんだ」
「親には何て言うの?」
「僕は包み隠さず、綾ちゃんと出掛けると言うさ」
「じゃあ私も浩司さんと出掛けると正直に話す」
「お母さんが反対したら、綾ちゃんはどうする?」
「誰が反対しても私は行くわ。浩司さんほど大切な人はいないもん」
「有難う、僕もこれからは君と真正面から付き合って行くよ。その結果生じた責任は僕が全て取るさ」
そう言って二人はまた激しく抱き合った。その二人の手は何時迄も離れなかった。
互いに狂おしいまでに愛おしさを感じていた。
「綾ちゃん、僕は君を今晩は返せそうにない。親からどんな批判を受けても君とは離れられない」
「私は浩司さんの好きな様にして良いわ。このまま駆け落ちになっても構わない。いつも浩司さんの事ばかり考えているんだもん。浩司さんと二人なら何も恐くはないわ。私を浩司さんの物にして…」
そうやって二人は池の周りをグルグル歩いていた。
「綾ちゃん、本当に僕は君に何を求めてても良いの?」
「もちろんよ、浩司さんが私を求めているのでは無く、私が浩司さんを求めているの」
「じゃあ今晩は君を本当に返えさないよ…」
「私も帰りたくない」
「綾ちゃん、君が心から欲しいよ」
「私もよ!」
二人はそのまま上野の旅館に入った。両方の両親には電話を入れて今晩は二人だけで過ごすと告げたが、避難がましい反対はなかった。初めて二人だけで風呂に入った。綾子は少し恥ずかしがった。それでも浩司は綾子の乳房を執拗に求めた。彼女は何も拒否はしなかった。
「優しくしてね」
と、言うのみだった。抱き合った浩司の手は何時迄も離れなかった。突然に浩司の男性自身が入り込んで来た。激烈な痛みを感じたが、綾子は堪えた。二人とも初めての経験である。ぎこちない手際であった。それでも綾子は嬉しかった。やっと浩司と一つの身体になれたのだ。
次回に続く
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