想い出は風の彼方に(73)

1926・「精神病院法」第一条による最初の病院:大阪府立中宮病院開院(大正15年)
1928・警視庁、精神病者指紋採取開始(昭和3年)
1929(昭.4)・スルフォナール持続催眠療法導入
continuous sleep treatment;(独)Dauerschlaf
1920年スイスのJ. Kla¨siがソムニフェンを用いた持続睡眠療法で精神分裂病の治療を行った。わが国では1922年下田光造がスルホナールを用いて躁うつ病の治療を始めた。これではスルホナール1日量1.0~3.0gを与え,食事と排泄以外は睡眠をとらせ,10~20日を1クールとする。その後は排泄が遅く,腎障害,発熱など副作用が多いスルホナールは用いられず,クロルプロマジン,レボメプロマジンなどの催眠作用の強い抗精神病薬に各種睡眠薬を併用して行われる。
一方では精神病者の治療にスルホナールが用いられ,これが盛んに行われた時期がある。治療期間は10~20日前後で,主として鬱病や躁病,精神分裂病の興奮状態などがその治療対象となった。…
ここまで読み進めて、浩司は考えこんでしまった。同世代のフロイト(1856-1939)の理論は、精神医学の領域では何も利用されなかったのかと?
さらにアドラー(1870-1937)そしてユング(1875-1961)と云う偉大な心理学者が続出しているのにだ。心理学的な活用は成されず…
薬物療法が中心の副作用の強い治療にのみ医師は、のめり込んで行ったのかと…
それでも更に、薬物療法の歴史は続く。1930(昭.5)・レセルピンの抗精神病効果がインドで見出される
1935・昭和10年代:サルファ剤などの新薬導入
1936  (昭. 11)・『精神病学』丸井清泰:「阿片定式療法」
 *1935年までの日本では、鬱病の治療法として、アヘン定式療法といってアヘンチンキを少量から漸次増量する療法が用いられてきた。ついで、大量の鎮静剤や睡眠薬を組み合わせて患者をほとんど持続的に眠らせる治療法が用いられてきた。
阿片を治療に使うなど、浩司には想像を超えた出来事に思えてならない。
しかし、電気ショック療法の有効性が1938年に発表されてからは事実上これが唯一の、最も有効な治療法となる。後に感情調整薬といわれる三環系抗うつ薬が出現するまでは、かなり原始的な医療行為が続いていたのだ。
1937  (昭.12) ・インスリン療法導入(1960年頃まで行われた)
 *インスリン療法
1933年には、ポーランドの精神医学者マンフレート・ザーケルにより、インスリンを大量投与することにより低血糖ショックを人為的に起こさせて精神病患者を治療するというインスリンショック療法(Insulin shock therapy)が考案されたが、死亡例が多く、その後電気けいれん療法、薬物療法(クロルプロマジンに代表される抗精神病薬)などが登場したため1950年代には廃れた。
浩司は、このインスリンショック療法にも、言い様のない驚きを隠し切れなかった。
当時の精神科医はなにを考えていたのかと…彼は益々失望を強くして行った。人間の心の問題を心のままに何故考えようとはしなかったのか?
次回に続く
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