診察室からコンニチハ(199)

高度の医療機器の発達は、私たちの平均寿命をこれからも延ばして行くのでしょう。100歳以上の人たちが世界中に満ち溢れる時代が来るのかもしれません。認知症の治療もずっと改善していくと考えられます。
そうなった場合、私たちの人口ピラミッドはどうなってしまうのでしょうか。若い世代が歪(いびつ)にすみの方に追いやられてしまうかもしれません。人類全体の新陳代謝は奇妙な変形を辿るのではないでしょうか。そこまで考察しているAIの専門家や医師を寡聞にして私はまだ知りません。
さらに新しい科学変化には、歴史的にみても大きな副次的問題が発生する傾向が強いものです。例えば、原子力発電による放射線障害のようにです。また高度な機器であればあるほど、必ずシステム障害が付きまといます。さらに高度化が進行するほど、そこから発生する障害もAI自身に診断と対策を委ねるしかなくなってしまいます。現在でも自動車などのトラブルはAIが診断し、メーカーはその診断に従って指示された部品を交換しているだげです。もう何十年も前から自動車の修理工はいなくなったと言われています。ただAIの指示に従った部品交換をしているに過ぎないのです。
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診察室からコンニチハ(198)

多くの医師、AI開発の専門家たちのこれまでの意見を聞いていると、所詮は理数系の人間の発想でしかない様に思われてなりません。極論すれば、専門性の強すぎる偏った発想の羅列ばかりが感じてしまいます。
倫理観や宗教観の問題は一先ず置いたとしても、専門家の多くはその専門性ゆえに重要な人類の本能としての欠陥を見落としています。彼らはただ医学を通じた科学の利便性を強調しているだけです。社会科学の上に立つ哲学としての模索がまるで見えてこないのです。
画像診察の優位性や遺伝子生物学の飛躍的な解明、創薬開発の効率性、電子カルテの利便性など、確かにAIによる医学の進歩は一時的には目を見張るものがあるでしょう。
でも重要なデメリットに私たちの多くは気付いていないと思います。
先ず私が最も危惧するのはAIの活用で、医師の診断能力が低下して行くのではないかとの不安です。現在でも大病院では電子カルテや高度の医療機器に振り回されて、医師が患者さん本人を診察しない傾向が強くなっています。医師自身の目、耳、触診などの前に先ずは医療機器が優先しています。かつての時代であったら、聴診器や血圧計そして医師自身の訓練された診断技術で8割以上は診断が付けられていたのに、現在の若い医師は内科医であっても聴診器すら使えない医師が増えていると言われています。もちろん高度の医療機器により誤診率は大幅に軽減した事実は否定しません。それにしても余りに医療機器に頼り過ぎるのでないでしょうか。患者サイドも不必要と、思われる医療機器を使用してもらえないと何か病院に来た気がしないという側面もあります。そして、この様な高度の医療機器はより発展し、より高額化して行きます。
そんな医療の高額化の波に、国が世界が耐え得るのでしょうか?
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診察室からコンニチハ(197)

話はAIと医療に戻します。そのようなAIの診療補助で、医師1人では情報処理や検索比較にかかる時間が大幅に短縮されれば1日で患者を診断・治療する速度は早まるでしょう。そして、AIにより診療時間が短縮されれば、その何倍の数の患者を診療できるだけでなく、その診断と治療には根拠のあるデータがあるので、自信もって診療することが出来るようになると思います。そうなれば医療はもっと先へ進化するでしょう。労働力不足解決だけでなく医療の質の向上にも、AI活用は今後必需品となるでしょう。
一般的なエコー機器にAIが普及すれば、専門医ではなくでもエコー機器の最低限の知識と経験がある人なら、内科医や助産師であってもAIが検知した画像から病気を持つ可能性のある胎児を見つけることが可能となります。AIが教えてくれた患者を専門の医師を紹介する判断も早くできるようになり、エキスパートのいない地域でも質の高い検査を提供することができるようになるでしょう。AIにより胎児の心臓異常を見つけることが出来れば、出生直後から治療がスタートでき、そうなると、生存率が劇的に向上するといいます。
それでは、AIは私たちに医療上の福音だけをもたらしてくれるのでしょうか?
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診察室からコンニチハ(196)

臨時号『マスクと感染予防』 
中国発の新型コロナウイルスによる肺炎が流行し始め、日本国内でも大多数の人たちがマスクを着用し出しています。実際のところ、マスクでどの程度の感染予防が期待出来るのでしょうか?
一般的には、風邪やインフルエンザに罹らないためにマスクをつけてもその効果は限定的とされています。なぜなら、顔とマスクとの間に隙間がありウイルスを含んだ飛沫の吸入を100%防ぐことはできないからです。また、ウイルス自体の粒子径は0.1~0.2μmですが、咳やくしゃみではウイルスに水分やほこりが付着し粒子径は5μm以上とやや大きくなるためすぐに短い距離に落下し、空間をただようことはないからです。更に、環境や衣類に付着したウイルスが手によって呼吸器に運ばれ感染する場合もありマスクだけで風邪やインフルエンザのウイルスを確実に遮断することはできません。ただし、風邪やインフルエンザ患者の近くで看病するなど咳やくしゃみのしぶきを直接あびる可能性がある場合には予防効果があると考えられます。感染予防からのみ考えるならば、その効果の期待は乏しいのですが、身体の抵抗力増強面から考慮するなら、私は一定の効果力を期待しても良いのではないかと考えています。先ずはマスクの着用により口腔内の保湿が多少なりとも維持されます。それら保湿維持により、口腔内粘膜の感染予防(自己の免疫力増強)が高まっていく期待感は大きいのではないでしょうか。家族内に結核患者が同居していたとしても、同一家族の全てが結核に感染する訳ではないのです。各個人により感染予防力の強い人もいるのです。それらを総合的に判断していきますと、あまりに大きな期待は望めませんが、マスク着用の意義は否定出来ないと思います。しかし、最大の予防はその様な感染性の疑いが強い地域や人ごみへの接近は出来る限り出かけるべきではないでしょう。もちろん、「うがい」や「手洗い」などは帰宅時には必ず励行すべきです。
いずれにしても、この新型ウィルスがこれ以上は拡散しない事を願うばかりです。
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診察室からコンニチハ(195)

医療におけるAI活用は、特にアメリカが進んでいるといいます。例えば、患者の細胞からガンなどの異常を判断する病理学の分野です。日本は、スライドグラスに乗っている細胞を顕微鏡で人が目で見て判断していますが、それでは経験に依存する部分が大きく、人によって判断の変わる可能性もあります。アメリカではAIの画像解析処理技術を用いて細胞からガンの有無を自動的に検知し、検査のプロセスを効率化させることで人の曖昧さや疲れなどによる判断の差を排除しています。しかし、AIが出した診断の最終的な判断は人が行っています。「それでもCTやMRI、レントゲンの画像診断でAIを活用するのは効率的でしょう。これまでは、レントゲン検診の所見などは、人がすべて見て判断していました。決まりきった画像による所見の診断には、AIによる活用の方が有効であるかもしれません」。
そのうえで、ルーティンワークのような部分を省略化できれば、医師は病気の原因は何か、どう治療するかというもっとコアな部分に専念できるのではないでしょうか。
医療業界はその特殊性から最新テクノロジーの導入が進んでいませんでしたが、近年、日本の労働力不足という問題からも効率化、省略化を推進する必要性に直面しています。国家資格が必要とされる医療人は簡単に採用することはできません。医療現場の働き手が不足している中で、「最初から最後まで、情報収集から何から何まで、それを人がやるのは効率的ではありません。AIに人が判断を下す手前までの情報整理や診断・治療候補の提示をしてもらうようなサポートあれば、医師は根拠を持って診断・治療を行うことができると思います。
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診察室からコンニチハ(194)

また、既存薬でも『ワトソン』を用いてリポジショニング(ターゲット市場の変化などによってブランドのポジショニングが適切でなくなった場合にブランド・ポジショニングの見直しを行い、再活性化させること)に取り組まれている、別の効能が見つかれば特許期限を延ばせるわけですが、既存薬は既に臨床試験を通過している分、そのコストが軽減できるメリットがあります。欧米に比べ日本は、これまで慎重でしたが既に複数の製薬会社が評価し始めています。
「研究者には夫々の専門分野があり、広い範囲にわたる専門知識の全てを深く理解することは難しいですが、『ワトソン』はバイアスなく全体を網羅的に眺めることができます。もちろん提供するのは答えではなく仮説ですから、検証は必要ですが、仮説を得るまでの時間やコスト上のメリットは大きいと思います」
AI技術によって医療現場に変化が起きつつあるものの、医療分野のAI導入が抱えている課題は少なくないのです。
「学習データへのアノテーション(ラベリング)作業を医師自身が行わねばならず、リソース(システム開発に必要な人員、資金など)上、情報を割くのが難しい」といった問題から、個人の生き方に関わる倫理的な問題までいくつも立ちふさがっているように見えます。
また、AIができることは「ある1つの目的(方向性)に対する解を出す」ことですから、医療者あるいは患者の誰にとっても絶対的な正解が出せるとは限りません。自分がいかに生きるかを考え、方向性を示すのは、まぎれもなく自分自身です。
AI導入によって価値観が「揺さぶられる」事例は、医療分野に関わらずこれからは幾つも存在するでしょう。
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診察室からコンニチハ(193)

先のマイクロソフトによる「レンブラントの新作」に学習させた画像では、わずか350枚ほどのデータで適切な診断名にたどり着いたと説明しましたが、ほかにもゼロショットラーニング:注)を利用し「これまで見た画像とはちがう特徴量を持つ」といった判断をさせ、希少疾患を検出することも理論上は可能であり、数千枚もの画像が必要だった時代はもはや数年前の話となっています。
注) : ゼロショットラーニングとは、訓練データのない(1度も学習したこともない)カテゴリの画像を、補助情報を頼りに分類するディープラーニングの手法で、今後は医療分野でのAI活用範囲がより広がっていくでしょう。
つまり、「医療AIは効率化を進めるフェーズから、人を超える精度、成功率を実現するフェーズに差しかかっているともいえます」
またCT、MRI画像から病状を診断する機能の向上やレントゲン画像から骨折を感知するAI、エコーから臓器の状態を点数化するAIなどの開発も進んでいくでしょう。
さらに、膨大な非構造化データから効果的な知見を導き出す医療分野で高い注目を集める、ワトソンがあります。IBMが開発した「コグニティブ・コンピューティング・システム」(認知コンピュータ)です。
ワトソンでは自然言語で記述された非構造データを大量に読み込み、学習。医学情報を大量に学習させることで、治療や創薬に繋がる知見を導き出すことが期待でき、医療の質向上、医療費の削減効果に繋がる可能性があると考えられられています。
既に活用が進んでいる分野の1つが創薬です。『Watson for Drug Discovery』を用いて、シリコンバレーのIBMアルマデン研究所と製薬会社との共同研究が始まっています。これには、医薬品の特許情報や医療の論文約4000万件がコーパスとして読み込まれている。
37兆個にも及ぶと言われるヒトの細胞における遺伝子の発現状況、その加齢に伴う変化については分かっていないことが多い中で、既に公開された論文も膨大にあります。人が読める量をはるかに超えた膨大な量の論文や特許等の情報を、人に代わってワトソンが読み込み、そこから新たな洞察を引き出して、創薬のヒントを得るという試みに幾つかの成功事例が出てきています。(日本アイ・ビー・エム/ワトソン事業部部長・溝上敏文氏)
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診察室からコンニチハ(192)

しかしMycin(マイシン)システムは、実際の医療現場では開発環境と実行環境が適応性に耐えられないといったハード面での問題、さらに誤診時の責任といった倫理・法律に関わる問題などのさまざまな要因により、実用化には至りませんでした。
その後のAIはしばらく、「冬の時代」を迎えました。やはり、AIの使用は医療面では限定的ではないかという考えが支配的になっていました。そして第三次人工知能ブームを経た現在、つまり「ディープランニング」のより高度な発達により、医療分野での適応範囲が広がって来たのです。
では、どのようにしてAIの適応が広がって来たのでしょうか?
最も注目され出したのは、画像認識による効率性改善により診断・検出精度が格段に向上でして来た事でした。
さらに、MRIは高価な医療機器のため、利用サイクルが長く10年以上前の機器を使う医療施設も少なくないのですが、長く使われている機器には鮮明な画像が撮影できないものも多くあります。こうした画質が悪い撮影画像をAIが変換し、変換後の画像を人間が見、診断に役立てる(医用画像処理と呼ばれる)という事例も出て来ました。
また、脳のスライスCT画像から脳出血を検出するAIの認識精度はAUC(認識精度を表す指標)が、0.948と向上し、人間がじっくり画像を見て判別するレベルに相当し、この検出AIによって医師の診断時間を80%削減できるとも言われ出しています。今でこそ医療現場に入りこみ、効率化に貢献しつつあるAIですが、かつては反対勢力の声が大きかったのです。医療では、世界に300人程度しかいないような希少疾患もあります。AIはビッグデータの集積なので、出現頻度が低い疾患のデータを得られなければ検出できない」というものが、その反対勢力の中心でした。
しかし、現在では少ない量のデータで学習できるメソッドが開発されており、少ない数の画像から特徴量を見出すことができるようになっています。たとえばマイクロソフトによる「レンブラントの新作」に学習させた画像は、わずか350枚ほどのデータで適切な診断名にたどり着いたと言われています。
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