牧原さんへの回答
APOE遺伝子検査を受けるべきかどうかについての、ご質問ですが結論から先に申し上げますと、検査の信頼性が十分に確立しているとは言えない現状では、検査を受ける意味に疑問を感じています。ω4の遺伝子が検出(日本人全体の10%に検出されるとも言われている)されると、アルツハイマー型認知症(ATD)になりやすいと言われていますが、現実にはAPOE遺伝子検査でω4が検出されてもATDにかからない人は数多く認められます。これ以外にも癌の早期発見の遺伝子検査などもあり、職業柄何名かの人達に検査を受けてもらいました。かなり高価な検査なので病院職員に無料で受けさせました。新聞などのマスコミで幾度も取りざたされている検査でした。結果は無意味な結論でした。
またAPOE遺伝子検査は当院でも行なっており、何名かの人達(全てが病院職員もしくは家族)
に検査を受けてもらいましたが
医学的意義は感じていません。
基本的に私は認知症と云う学問に非常に高い興味を持っていますので、なるべく最先端の医学情報は入手する様に心がけています。その過程の中では随分と好い加減な検査とか治療法に迷わされています。ともかく遺伝子検査が時代の流行ですが、信頼性の低いものも多くあります。
APOE遺伝子検査が、必ずしも無意味だとは言いませんが、まだ不確実性が強いと云うのが私の感想です。一つの参考程度に考えておいたら良いと思います。それ以外にもMRIとかSPECT(脳血流循環)とか云った検査で認知症の診断を大病院では行なっていますが、この様な検査でもかなりの誤診が散見されています。
つまりは認知症と云う学問が如何に難解で治療法も未だ確立していないかを物語っているのです。ただ脳トレーニングや生活習慣病の克服が、それなりの効果を上げているのは事実です。
脳トレーニングは40才台から始めても早くはないのです。
母が緑協和病院さんをかかりつけとして、平素より大変にお世話になっております、わたくし、牧原と申します。
早速ですが、表題の件について、まずは、わたくしの両親の状況から簡単にご説明申し上げます。
2年前に80歳で他界した父が75歳過ぎに脳梗塞による脳血管性認知症、存命中の母は、今から3年前の77歳に、MCIを経て、現在、アルツハイマー病に移行しました。
また、母の姉(わたくしにとっては伯母にあたります)が現在84歳で、遠方におりますので、近隣に住まう親族によりますと、数年前から同じくアルツハイマー病です。
ここで本題となりますが、わたくし40歳代前半ですが、過日、あるクリニックで、APOE遺伝子検査を受けるべく、同意書にサインし、予定では、今週23日に採血の運びですが、主治医からは、当日になって、やはり抵抗を感じる場合は、キャンセルでも構わないと言われており、いよいよ23日を目前にし、周囲からも賛成どころか反対されている中、情けないことに迷いが生じてきました。
わたくしとしましては、他界した父については脳血管性で、やはり、アルツハイマーの母とは異なる症状であったことも含めてさほど気にはなってはいないのですが、母と、伯母がほぼ同時期にアルツハイマー病を発病し、さすがに自分のこれからが気になるようになり、今の段階で将来の自分自身への備えと投資のつもりで、自分の意思で遺伝子検査を受けることを決めた次第です。
しかしながら、成川院長先生の「家族性アルツハイマー病」の皆様への真摯なご回答を拝読しまして、母も伯母も、老年性のアルツハイマーに分類出来るならば、それは、加齢や糖尿などの生活習慣病の持病が認知症発病の最大のリスクファクターであると個人的には捉えておりますので、家族性アルツハイマー病のような、遺伝が関与する内容とは異なり、果たして遺伝子検査を本当に受ける意味と価値があるものかどうか、そして、万一、最悪の結果が出た場合の、現状、この国においてのカウンセリングなどのフォロー体制も成熟しているとは決して言えない中、検査を受けるにあたって腹を決めていたとはいえ、自分の心は本当に大丈夫であろうか、など、検査日が近づくにつれ、これまた情けないことに弱気になって参りました。
しかしながら、自分の持って備わったものや傾向は知っておきたい、そして、それを前向きに活用したいという気持ちが、検査を受けたいと考えた動機の原点であり、そこは今も変わらず、近い将来、癌検診と同様にこれから必要となってくるかもしれないとも考えます。
話をまとめますと、検査を数日後に控えた今、あらためて、APOEを受けるべきかどうか、迷っております。
本当は知ることが出来るのであれば、知っておきたい、しかし、結果によっては、以降の人生において、精神的リスクを伴うことが迷いの最大の理由です。
ご多忙の中、誠に恐縮ではありますが、もし、幸いにも、成川院長先生のお目にとまることがありましたら、ご見解をお伺い出来ますと有り難く存じます。
母もお世話になっております中、娘のわたくしも、この場にて、このたび院長先生のお手間を煩わせてしまうこととなり、あらためて大変に恐縮ではございますが、認知症について、真摯に取り組まれておられます信頼の出来る成川院長先生のご意見を是非いただけたらと思い、誠に勝手且つ不躾ではございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上、長文を失礼いたしました。