診察室からコンニチハ(214)

病原性微生物は、人類が顕微鏡の発見によりその存在に気づいたのです。初期の光学顕微鏡は1590年にオランダで眼鏡屋をしていたヤンセン父子によって発明されていましたが、実用的な使用報告はありませんでした。
その後、光学顕微鏡による生物研究は多大な進歩をもたらし約300倍率まで発展しました。その後も進化を続け現在では1000倍率以上までの性能となっています。
この性能向上により、寄生虫や細菌などの存在がが次から次へと解明されて来たのです。
病原性微生物は、その大きさにより
原虫、真菌、細菌、マイコプラズマ、リケッチア、クラミジア、ウイルスなどに分けられます。
原虫と呼ばれ病原性をもつものは約30種、マラリアを筆頭に各種トリパノソーマ症、リーシュマニア症、アメーバ赤痢、アメーバ性髄膜炎、トリコモナス腟炎(ちつえん)、トキソプラスマ症が代表的です。この様な原虫は光学顕微鏡レベルで容易に発見出来ましたので、日本の家畜や家禽(かきん)の寄生種は約250種で、とくにトリパノソーマ、トキソプラスマ、サルマラリア、バベシア、ノセマなどは、人獣共通感染症をおこすので重要でした。水産生物、とくに養殖魚に致命的な被害を与える鞭毛虫、繊毛虫、各種の胞子虫類も有名です。
真菌とは、いわゆるカビで水虫の原因ですが、抗生剤の乱用では「肺真菌症」という致死率の高い病状を呈する事もあります。
細菌は多くの種類があり、肺炎や結核など多くの病気を引き起こします。原虫、真菌、細菌感染などは20 世紀の医学で、その多くが克服されて来ましたが、耐性菌の問題は今もって医学界の大きな課題となっています。通常の抗生剤に抵抗を示す細菌は、現代医療でも医師泣かせです。
さて問題となるウイルスですが、これは細菌の100万分の1ぐらの大きさで、光学顕微鏡では全く解明されません。1931年にドイツの技術者エルンスト・ルスカ (1906–1988) とマックス・クノール (1887–1969) による電子顕微鏡の発明によって、ウイルスの粒子、特にバクテリオファージが複雑な構造を持っていることがはじめて明らかにされました。電子顕微鏡は光学顕微鏡の1000倍以上の解析能力があり、この新しい顕微鏡により、初めてウイルスの存在が発見されたのです。
さらに結核菌やウイルスの遺伝子解析が始まったのは20世紀末から21世紀初頭からです。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
そういう意味でも 今後の日本の行方は極めて不透明と言っていいのでしょう。
PCR検査も、安倍政権を擁護する評論家などが「パニックになるから検査はしない方が良い」という表現をしていましたが、それならそれで東日本大震災時と同様の危機感をいかに持てるかです。まさに危機管理の問題です。ここでの対応を誤れば、もっとすさまじいパニックになることも想像すべきでしょう。
あらゆる政治的判断に、客観的なウイルス感染のデータというものが一切利用されておらず、安倍首相がよからぬとりまきの進言だけで猛烈にエモーショナルな決定と要請を行うため、ひとつひとつの要請にも事実に基づく合理性は生まれません。
「ここ1~2週間が山場である」とされた時間を過ぎても、ピークを過ぎたのかどうかすら誰も判らないという、恐ろしい状況が延々と続いています。
【街の景気は最悪の状況に到達】
ただ経済指標としてこうした状況が数字に現れるのはまだかなり時間がかかりそうで、政権が口にする景況感と実態とがすでに大きく乖離してどうにもならないところにきてしまっていることを強く実感します。
新型コロナウイルスの検査について厚生労働省は、医療機関などへの説明会を開き、新型コロナウイルスの検査を幅広い医療機関で受けられるよう公的保険の適用対象とする方向で調整し、2月28日夜に民間の医療機関や検査会社、それに大学などの関係者を集めて説明会を開きました。
この中で加藤厚生労働大臣は「検査を十分に行える体制になっていないという指摘や不安に応えるため、体制をさらに充実させる必要がある」と述べ、協力を求めました。
そして、来週半ばにも検査を公的保険の適用対象とする手続きを終えられると説明していましたが、現状は一般病院での検査体制は皆無に近い状況が継続しています。
「2020.02.29. A.M.3:00ニュース」
しかし、その後も加藤厚生労働大臣の発言がいかに空虚であるかを物語るように、一般病院でのPCR検査の許可は下りず厚労省の関連した検査機関や大学病院のみでの検査が実施されていたに過ぎません。
韓国や諸外国のように、一般病院でのPCR検査が実施されると明らかに日本国内でのコロナウイルス感染者は激増することは間違いないでしょう。以下に厚労省のコメントを載せておきます。
『患者の診断目的で使用されるPCR検査への支援』という名目の内容ですが、現場の医療関係者には理解できない事案です。韓国から、この間に日本のPCR検査の不備と情報隠蔽を指摘されましたが、その一部にはそれなりの真実も含まれているかもしれません。現在の日韓関係を鑑みると、かなり中傷的な発言が韓国には多すぎてはいますが…。
厚労省は次のような説明をしています。
「医療現場において求められる、早期診断を目的とした検査ニーズの増大に応えるためには、全国の医療機関、民間の検査機関での検査体制の拡充が必要です。本所では、試薬の提供を中心に、最大限の努力をはらう」との話でしたが、実際のところは…ただの飾り言葉に過ぎませでした。ここまで国民を馬鹿にした厚労省という機関の存在意義はどこにあるのでしょうか。
3月6日時点で地方衛生研究所、検疫所以外の検査機関、計140箇所(民間検査会社18社、大学病院およびその他の病院89箇所、保健所等33箇所)への送付を完了したにすぎません。今後も希望に応じて配布を進める予定である」との見解でしたが…。何とも遅速な対応です。
日本全国には、一般病院が8,357、診療所が102,144箇所(平成30年現在)あるのに、厚労省が認めている検査機関は数パーセントの140箇所でしかないのです。

診察室からコンニチハ(213)

注)人類の歴史
人類の起源は、猿人と呼ばれます。なかでも有名なのはアウストラロピテクス(「南の・サル」の意味)です。中東アフリカで見つかった、ルーシーという名前で有名なアウストラロピテクスの女性の一個体は、400万年から300万年くらい前に生きていたと考えられています。初期の人類の祖先の化石が見つかる地域はアフリカに集中しています。
猿人の次の段階に来るのが原人です。
原人はホモ・エレクトスとも言い、アウストラロピテクスが身長140~150cmくらいだったのに対して、160~180cmくらいあったそうです。大体180万年前くらいからアウストラロピテクスから進化したようです。脳の大きさは900~1100ccくらいで、猿人の2倍以上になっています。
そして20万年前に出現したといわれています現在の人類の祖先たるホモ・サピエンス(ネアンデルタール人)の誕生です。
このブログが公開される頃には、コロナウイルス2019の拡大で社会は騒然たる状況になっているでしょう。フェイク・ニュースが飛びかい私たちの生活は不安な状況に追い込まれているかもしれません。私のこの様な冗漫なブログにイラ立たしさを抱く人たちがいるかもしれません。しかし、私はこの様な不安が蔓延している時代であるからこそ、インフルエンザウイルスの根源について丁寧な説明が必要でないかと思うのです。次回は病原性微生物について、詳細にお話しいたします。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
【シナリオ②】
消費は半減? 東日本大震災級の景気落ち込み!
能天気な「緩やかな景気回復」の化けの皮が剥がれる?
東京商工リサーチがこの2月20日に発表した『新型コロナウイルスに関するアンケート調査』によりますと、「現時点ですでに影響が出ている」と答えた企業が2806社(22.72%)、「現時点で影響は出ていないが、今後影響が出る可能性がある」は5401社(43.74%)、「影響はない」と答えた企業は、4141(33.54%)となっています。
65%超の企業が「影響が出てくる」とみているわけです。実際に、新型コロナウイルス感染拡大によって、さまざまな分野で影響が出ています。2月24日時点でわかっている影響を紹介すると次のようになります。
●インバウンド……三越伊勢丹では春節にあたる2月4~10日の売り上げが昨年比2割減
●東海道新幹線乗客数……2月1~19日の新幹線乗客数は対前年比で1割減
もともと日本経済は2018年末辺りから、景気が落ち込んでいると言われており、例えば民間設備投資の先行指標である「機械受注統計」では、2019年12月の数字が前月比12.5%と大きく下落しています。機械受注は変動幅の大きな統計ですが、コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける前に、すでに2ケタの減少になっているのです。
日本経済が弱含みのときに、この新型コロナウイルスショックに襲われたわけです。
最低でも6カ月間以上は激しい落ち込みを覚悟すべきでしょう。
一方、2月20日に発表された「月例経済報告」で、政府は雇用や所得の環境が底堅いとして個人の消費は回復傾向にあり「景気は穏やかに回復している」と景気の見通しを発表しています。
西村康稔・経済財政再生相は「能天気に持ち直していると言っているわけではない」と釈明したものの、市場関係者の多くは「能天気でなければうそをついているのでは……」という印象を持ったはずです。日銀が何もできないために、景気後退を隠蔽しようとしているのではないか、と考える専門家が多いのです。
このままの状況で行けば、経済的なダメージはSARSなどの例を参考にするのではなく、東日本大震災のケースを、いやそれ以上の経済的ダメージを覚悟した方がいいのかもしれません。
例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災直後の総務省統計局の「消費動向」を見ると、全体では約2割の減少となり、東京電力による関東地方を中心とした計画停電時には、教養娯楽費などが瞬間的に6割台にまで減少していました。乗用車新規登録・届け出台数なども最大4割近い水準まで落ち込んだのです。
つまり、日本で感染爆発が起きた場合には最大で5割前後、消費が落ち込むことを想定しなければならないでしょう。ちなみに、東日本大震災では1カ月後には、全体的にみて通常の消費支出に戻っています。しかし、新型コロナウイルスではそうはいかないでしょう。。最低でも6カ月以上の期間、激しい落ち込みを覚悟する局面があるでしょう。それぐらいで済めばむしろ幸いとすべきかもしれません。
恐らく世界中が大きな景気後退を余儀なくされるでしょう。
【シナリオ③】
厚生労働省が、新型コロナウイルスのPCR検査の保険適応をいまだに実質上認めていない現状を考えると、医療システムの崩壊を招くような感染爆発が起こる可能性もあります。
そうなると、日本への飛行機の渡航が世界中から止められ、世界からの物資なども供給されなくなり、株価は大きく下落し、円が売られ、金利が上昇(債券価格の下落)することになる可能性が高くなるかもしれません。
とりわけ心配なのが、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大で、本来であれば安全資産であるはずの「円」が買われて円高になるはずが、2月に入って以降、逆の円売り=円安に進んでしまう危険性もあります。
その円ですが、感染爆発が起これば1ドル=120円台まではあっという間に行くことになるかもしれません。その場合、円安の「分岐点」になるのは「1ドル=125円」でしょう。かつて、日本銀行の黒田総裁が「1ドル125円以上の円安は望まない」という趣旨のコメントを出したことがありますので…。日本で感染爆発が起これば株価が大暴落し、その株式市場に莫大な資金を投資していた年金資金などクジラと呼ばれる公的資金が致命的な打撃を受けます。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も莫大な損失を出してしまうでしょう。そうなると、年金基金の破滅が待っているかもしれません。
高齢者の生活を支えている年金制度が資金不足となり、年金制度の崩壊=国民の生活が破綻するということです。 「自民党」が戦後初めて迎えた大きな試練となるのでしょう。
最大の問題は、安倍政権というよりも自民党政権が、こうした危機管理にあまりにも弱い体質が浮かび上がった事です。振り返れば東日本大震災のときは、自民党ではなく旧民主党政権でした。
クルーズ船で4000人の対応に苦慮していた自民党政権に比べて、数十万人単位の被災者が出た東日本大震災では、市町村、都道府県にある程度の権限を委譲して、対応できたことを考えると、現在の自民党の姿は国民不在の姿勢が目立ちます。自民党政権が目指すような中央集権型の危機管理には限界があると言っていいのでしょう。

診察室からコンニチハ(212)

さて今回、中国武漢から発生した新型インフエンザ(コロナウイルス)は何故世界中に蔓延していったのでしょうか?
そして、コロナウイルスとはどんなウイルスでしょうか…厚労省のホームページから引用しますと、…
『発熱や上気道症状を引き起こすウイルスで、人に感染するものは6種類で、そのうちの2つは、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの、重症化傾向のある疾患の原因ウイルスが含まれています。残り4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10~15%(流行期は35%)の占めます』と、書かれています。
本来的に、コロナウイルスはごくありふれたウイルスです。風邪の原因ウイルスは数種類ありますが、私たちが日常的にかかる風邪の 10 ~ 15 %は、コロナウイルスによって引き起こされています。
コロナウイルスが最初に発見されたのは 60 年ほど前のことです。風邪の患者の鼻から見つかりました。ただコロナウイルスの歴史は非常に長く、遺伝子の変異から先祖を探ると、共通祖先は紀元前 8000 年ごろに出現していたようです。以来、姿を変えてコウモリや鳥などさまざまな動物の体に潜りこんで、子孫を残してきました。
…風邪を引き起こすほど身近なのに、命を奪うほど凶暴なものもいるとは……。
コロナウイルスの仲間による感染症は、ヒトに感染してカゼの症状を引き起こす 4 種類と、新型コロナウイルスのように動物を経由して重症肺炎の原因になる 2 種類の計 6 種が知られています。
感染者を死に至らしめる可能性のあるコロナウイルスはこれまでに 3 回出現し、パンデミック(世界的流行)引き起こしています。最初は 2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、次が 2012 年MERS(中東呼吸器症候群)、そして今回です。ウイルスが世代交代を繰り返しているうちに、突然変異が蓄積して重篤な症状を起こすように変異したのでしょう。
人間社会の変化のすきをついて侵入してくる病原体は、それぞれ異なった場所や時期に根を下ろし、その後は人間同士の接触を通じて新たな地域に広がっていく。もしかしたら、第二、第三のSARSや西ナイル熱がすでに忍び寄って、人に侵入しようと変異を繰り返しているかもしれません。
ウイルスの唯一の目的は「子孫を残すこと」につきます。地上最強の地位に上り詰めた人類にとって、唯一の天敵が病原性の微生物です。約 20 万年前にアフリカで誕生した私たちの祖先は、数多くの病原体と戦いながら地球のすみずみに広がっていきましたが、とくにウイルスは強敵でした。知られないままに、多くの地域集団が全滅させられたことでしょう。人類の歴史:注)は 20 万年ですが、微生物は 40 億年を生き抜いてきた強者です。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
新型コロナウイルスの感染拡大が長引いた場合、最悪の経済シナリオはどんなことが想定されるのでしょうか?
ニューヨークダウ(NYダウ)も日経平均も暴落しつつ現在《NYダウは2月14日の29,543→3月13日の20,388ドルで9055ドル(下げ幅30.9%)》、《日経平均同上で10月2日の24,480円→16,790円(下げ幅31.4%)の惨状を呈しています。いよいよ新型コロナウイルスによる感染拡大の影響が経済にも大きな波及をしてきたようです。加えて、韓国やイタリアでも爆発的感染拡大が起きており、中国・武漢から始まった今回の新型コロナウイルス感染拡大の恐怖を、世界中が認識し始めたと言っていいでしょう。
一方で、日本の危機管理はその甘さが際立っています。日本への渡航自粛を求める国も現れ、7月に行われる東京五輪の代替地としてロンドンが名乗りを上げるなど、今や日本の経済を根底から覆しかねないリスクも顕在化してきています。
そんな中でささやかれ始めてきたのが、新型コロナウイルスによる経済への影響の深刻さです。リーマンショック級とも、東日本大震災級とも言われる景気後退リスクに対して、日本政府は対応できるのでしょうか。そしてまた、われわれ国民もどんな準備をしていけばいいのか。現実には起こってほしくないのですが、新型コロナウイルス禍によって起こりうる最悪シナリオは幾つかあります。
【シナリオ①】
首都圏マンションはバブル超え? 東京五輪中止で“五輪バブル”の崩壊が...?
2020年は、さまざまな意味で日本経済にとっては重要な1年となるでしょう。そのハイライトとも言えるのが7月から開催される東京オリンピックです。その東京五輪の開催が、今回の新型コロナウイルス感染拡大によって中止に追い込まれる可能性が出てきています。
感染爆発の度合いにもよりますが、すでにアメリカでは日本に対して渡航注意のレベルを日々、上のレベルに引き上げており、イスラエルでは日本と韓国からの渡航者を入国拒否としています。
それに対して、日本でも渡航者の入国規制を強化していますが遅きに逸した感が強いでしょう。春節の前に中国の新型コロナウイルス感染拡大が明らかになっていたにもかかわらず、外務省は何も手を打たずに莫大な数の中国人観光客の来日を認めていました。これ以前に台湾では、早くも中国からの渡航規制を強化していたにもかかわらずにです。この結果、台湾での感染者数は50人以下ですんだのです。
クルーズ船の受け入れに対しても、日本人乗客が多い、日本人乗組員も100人いるといった事情を鑑みて入港を認め、検疫という名目で14日間留め置き、その間に600人を超す感染者をクルーズ船の中で発生させてしまいました。
問題は、この状況次第で日本国内に感染爆発(313日時点で日本での感染数は675名、クルーズ船では679名)が起こるかどうかですが、日本が数千人単位の感染者を出した場合には、世界各国が日本への渡航を控えるようになり、最悪7月の東京オリンピックの開催に間に合うぎりぎりの期限とも言われる5月までに、現在の感染拡大が収まるかどうかが問われることになりそうです。
イギリス・ロンドン市は東京開催が中止になった場合、「代替地」として立候補すると表明しており、その可能性はゼロではない状況ですが、その後はヨーロッパでも感染が拡大していますので2020年のオリンピック開催は、世界のどの地域でも困難でしょう。
仮に東京五輪が中止となれば、どの程度の経済的損失が発生するのでしょうか。
東京五輪の経済効果は、東京都の発表で「32兆円」という途方もない数字が発表されていますが、この数字には交通インフラの整備やバリアフリー促進といった間接的な経済活動も入っています。いわゆる「レガシー(遺産)」効果です。
施設整備費や大会運営費、放映料と言った「直接的効果」は約5兆2000億円で、レガシー効果はその5倍の約27兆1000億円。とりあえず、直接的効果だけを考えれば、約5兆円の損失。日本のGDPが約500兆円とすれば、その100分の1を失うことになるわけです。
1990年代のバブル期を上回る「五輪バブル」が発生しているかもしれません。
実際に、帝国データバンクが昨年の11月に行った調査によると、東京五輪開催が日本の持続的な経済成長のために「有効だと思う」と回答した企業は半数に満たない46.8%にとどまっています。国内企業の半数しか東京五輪の需要を当てにしていないということです。
業界別で見た場合、プラスと答えている企業は、サービス(17.5%)、金融(16.8%)、運輸・倉庫(15.8%)、製造(15.5%)となっています。経済効果は、東京都で約20兆円、大会開催に伴う雇用誘発効果は東京都で130万人、全国で194万人と試算されています。壊滅的な経済危機に陥る、といった見方をする人もいますが、思ったほど大きくないかもしれません。
ただ問題なのは、東京五輪開催というアナウンス効果によって、過剰な投資を生み、「五輪バブル」に陥っていることです。不動産経済研究所が発表した2020年1月の首都圏マンションの1戸当たりの平均価格は8360万円。1月だけ突出した価格ではあるものの、この価格はバブル期の1990年11月(7497万円)を上回り過去最高になったのです。
2019年の首都圏マンションの平均販売価格は5980万円となり、過去7年、平均で1500万円の上昇となっています。まさに東京五輪を起爆剤とした「不動産バブル」が再燃しようとしていると言っていいでしょう。
放映権などの影響で東京五輪を10月とか11月に延期するとか、あるいは1年遅らせるといった延期の可能性は低いと思います。そう考えると、やはり4月までには現在の感染拡大が収まることを祈るしかないでしょう。

診察室からコンニチハ(211)

さて、感染が疑われる場合は迅速検査キットを使用して、先ず簡易検査を行います。
迅速検査キットは複数のメーカーから提供されており、ウイルスの型を担う、核タンパクに対する抗体を用いたイムノクロマト法(抗原抗体反応を利用した迅速検査の手法の一つ)によるものが主流です。
核タンパクに対する抗体を使用していますので、感染ウイルスの型を簡便、迅速に観ることができます。しかし確定に至る訳ではありません。
また、HA、NAの亜型は分かりませんので、季節性、新型など最終確認のためには、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で、DNAを増殖させた遺伝子検査が必要となります。
核酸を簡単に増幅、確認できるとは言え、対応する試薬、機器の使用と共に、結果を得るまで数時間は必要ですので、多数の検体を同時に処理することは難しいのが難点です。
ところで、まだ検査試薬としての提供には至っていませんが、遺伝子(塩基配列)レベルでの迅速検査法も確立されつつあるようです。
PCRとは異なる等温増幅による検出方法の一つで、変異による差も確認が可能ですので、迅速検査法の一つとして、今後の進展を注視したいと思います。
インフルエンザウイルスの感染に備えるためにはワクチンの投与が有効ですが、HAのエピトープ(抗体が認識して結合する抗原の特定の構造単位をエピトープとよび、6~10個のアミノ酸や5~8個の単糖の配列から成る)の変異が進むと既存ワクチンの効果が弱まるか、または全く効果の無くなる可能性があります。
ワクチンの効果が見込めない、また新型に対応するワクチン供給がなされない時の、感染時の対応として抗インフルエンザ薬の投与がなされますが、その効果は不明です。
ワクチン投与による感染への備え、感染を疑われる場合の簡便な確認方法、そして感染が明らかとなった場合の治療薬剤とわれわれは色々な手段を得ていますが、インフルエンザウイルスも変異、すなわち進化を止めていません。現に新型インフルエンザが世界に広がろうとしています。
これからもインフルエンザウイルスとの戦いは続きます。油断することなく、英知を絞ってこの危機に向かっていかなければならないことを、皆さんと再確認したいと思います。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
一方国内では、2月29日に安倍晋三首相が、首相官邸で記者会見して、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し「保健所で必要な検査が確実に実施できるように国において仲介する」と語りました。
「いまから2週間程度、国内の感染拡大を防止するためあらゆる手を尽くすべきだと判断した」とも述べました。
2700億円の予備費を使って第2弾の緊急対応策を10日程度でまとめると表明していました。
ウイルス検査は現時点で1日4000件超を実施できる能力があると指摘し「一層の検査能力拡大に努めていく」と明言しました。検査に関しては「来週中に医療保険を適用する」と強調しました。緊急時に感染症指定医療機関で5000床を超える病床を確保するとも述べました。
3月2日から全国一律で小中高などに休校するよう要請したことには「感染リスクに備えなければならない。万が一にも学校で、集団感染を起こしてはならない」と、国民全般に理解を求めました。唐突だとの指摘には「判断に時間をかけているいとまはなかった」と釈明しています。臨時休校にあわせて「保護者の休職に伴う所得減少にも新しい助成金制度を創設し、正規、非正規を問わず、しっかりと手当てする」と強調しました。
観光業など影響を受けた企業への対応を巡っては「雇用調整助成金を活用し、特例的に1月までさかのぼって支援する」と指摘しています。外出自粛要請などができる新型インフルエンザ対策特別措置法を参考に「国民生活への影響を最小限にするために立法措置を講じる」と語たりました。法案成立に向け、自ら野党に協力を要請する考えを示しました。
トイレットペーパーなど日用品を買いだめする動きがあることに関しては「事実ではないうわさが飛び回っている。十分な供給量があるので冷静な購買活動をお願いしたい」と促していました。7月に開幕する東京五輪については「アスリートや観客にとって安全、安心の大会となるように万全の準備を行う」と強調していました。
「首相として国民の命と暮らしを守る大きな責任を果たすため、先頭に立ってなすべきことは決断していく」と訴えました。「政治は結果責任だと言ってきた。逃れるつもりはない」とも明言しました。

診察室からコンニチハ(210)

新型インフルエンザは季節性インフルエンザと異なり、ほとんどの人が初めて直面するタイプであるため有効な免疫を持っていません。そのため、世界的な大流行を引き起こし、死亡率も高くなる可能性があります。
2009年に大流行した新型インフルエンザ(H1N1型)は、日本だけでなく世界中で猛威をふるいました。
発生源は豚の間で流行していた豚インフルエンザウイルスとされ、これが農場などで豚から人に直接感染し、それから新型ウイルスとして人の間で広まったとされています。新型インフルエンザ、豚インフルエンザ(swine flu)、A型H1N1亜型インフルエンザ、H1N1インフル(H1N1 flu)など幾つかの呼称があります。
この流行が大きな問題になったのは、流行初期にメキシコにおける感染死亡率が非常に高いと報道されたからですが、実際には重症急性呼吸器症候群(SARS)のような高い死亡率は示してはいませんでした。当時の日本では、感染症予防法第6条第7項の「新型インフルエンザ等感染症」の一つに該当すると見なされ、感染者は強制入院の対象となりましたが、2009年6月19日に厚生労働省が方針を変更してからはこの扱いはなくなり、季節性インフルエンザとほぼ同様の扱いとなっています。
A(H1N1)pdm09型に対するインフルエンザワクチンは既に完成しています。2010年 - 2011年冬シーズンから接種可能なインフルエンザワクチンは、通常の季節性インフルエンザワクチン2種に加えて、新型インフルエンザワクチンにも対応した3価ワクチンに、2015年 - 2016年冬シーズンからは、A型株2価とB型株2価の4価ワクチンになっています。
このインフルエンザウイルスはエンベロープ(ウイルス粒子をの外側を囲む膜のこと。その膜に存在し、ウイルス特異的な抗体を作る免疫反応を引き起こすタンパク質)で、直径80-120nm 『ナノメートル:nmは、国際単位系の長さの単位で、10億分の1メートル』に覆われた球形のウイルスで、粒子内部には直接メッセンジャーRNA(mRNA)とはならない8分節したRNA、及びA、B、Cの型を担う核タンパク(NP)、並びに膜タンパク(M1)などを持っています。
また表面には感染を担うHA(ヘマアグルチニン:「ヘマグルチニンとは、インフルエンザウイルス、およびその他多くの細菌、ウイルスの表面上に存在する抗原性糖タンパク質」で、感染細胞から離脱する際に機能するNA(ノイラミニダーゼ)がスパイク(突起)のように現われています。
A型インフルエンザウイルスのHA、NAには型があって、その抗原性の違いでHAは16種類(H1 ~ H16)、NAは9種類(N1~N9)の亜型に、分類されます。
さてインフルエンザウイルスは抗原変異を頻繁に繰り返すウイルスとしてよく知られていますが、変異には抗原連続変異(antigen drift)と抗原不連続変異(antigen shift)の2種類があり、特に大きく抗原性の変わる抗原不連続変異は大流行の原因となって問題視されることになります。
A 型インフルエンザウイルスは動物種ごとにHA、NAの色々な亜型の組み合わせを持っており(例えばトリ:H5N1、ヒト:H1N1など)、亜型によって動物種ごとの細胞への親和性、すなわち感染のし易さの異なることが分かっています。
例えばトリの主な亜型H5N1 はヒトに、またヒトの主な亜型で季節性インフルエンザを担っているH1N1 はトリに感染し難いと考えられます。
これは細胞表面に存在するウイルスレセプター(HAが結合)であるシアル酸の構造の違いに由来しトリとヒトでは構造が異なりますので、それが亜型ごとの感染のし易さ、し難さとなって現れます。ところが動物種によってはトリ型、ヒト型両方が容易に感染する場合があり、その問題となる種がブタと考えられています。
インフルエンザウイルスのゲノムRNA は8分節していますが、それぞれの分節RNA(1~8)で、コードされているウイルスタンパクが異なっています。
通常は一種類のウイルスしか感染しないので、RNA が複製に伴っての小規模な変異である抗原連続変異は起こり得ますが、大規模な変異である抗原不連続変異は起こりません。
しかし、同一の個体(ブタ)の同一細胞に亜型の異なる2種類以上のウイルスが重複感染すると体内(細胞内)で分節したゲノムRNAのシャッフルが起こり、RNAがランダムに組み合わさった全く新しいタイプのウイルスの出現、すなわち抗原不連続変異の可能性が高まることになります。
またブタはヒトのロシアかぜ、香港かぜに類似のブタインフルエンザH1N1、及びH3N2に感染し、これらが更にヒトへ感染を起こす可能性があります。そして、今まさに感染を引き起こしているブタ由来新型インフルエンザがこれにあたる訳です。
ところで、HA には5個(A~E)のエピトープ(抗体が結合する抗原決定基)があって、エピトープの変異が進むと、異なった亜型へ変わることになります。
変異を繰り返した結果、現在のような亜型(H1~H16)が獲得され、NA の変異(N1~N9)も相まって、A型インフルエンザウイルスの多くの亜型が種々の動物種に分布するに至りました。
多くの種々の亜型が存在すると言うことは、トリ、ヒト由来の共通の宿主になり得るブタが、新型の供給元になり得る可能性を常に秘めているということでもあります。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
そんな中国の武漢から新型コロナウイルスが広がりました。どうしてなのか?…誰もが等しく疑問を抱きました。当初は武漢では酪農が盛んで、貧しい酪農農家では豚の飼育小屋で人間がそのまま寝る習慣があります。そんな飼育小屋での生活から、豚インフルエンザ(変異したウイルス)が人間に感染し、拡散して行ったと考えられていました。しかし、すぐに1956年に設立された中国科学院武漢ウイルス研究所からの変異ウイルスが漏洩したのでないかとの疑問が世界中で強く抱かれるようになりました。
その後、世界保健機関WHOによって新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)と武漢華南海鮮卸売市場(生動物及び魚介類を扱う市場)の関連性があるとする声明がなされたことでメディアの注目が一気に集まりました。2020年1月1日には感染拡大の予防のために、この華南海鮮卸売市場は閉鎖されています。
いずれにしても中国政府の情報隠蔽政策では、世界中が徒らに推測と疑念を膨らませ行く結果となってしまいます。これからも中国がこの様な情報隠蔽政策を続けて行くなら、私たちは常に猜疑心の塊となってこの大国と接して行くべき不安定な状況に置かれた生活を余儀なくされるのでしょうか。

診察室からコンニチハ(209)

私たち人類を10数年から数10年の間隔で苦しめるのは、前述しました様にA型インフルエンザウイルスの突然変異です。
A型インフルエンザウイルスは、感染したものの体内でどんどん進化するので、新型のウイルスが次々にできてしまいます。
そのため、流行前に作られたワクチンが対象にしていたウイルスと、構造が大幅に異なる可能性があります。つまり、一度A型インフルエンザのあるウイルスに対してワクチンができても、ウイルスが他の個体や、ときには別種の動物から発生したウイルスと結合し、より強い病原性を持つ新しいウイルスになってしまう可能性があるということです。
毎年、厚生労働省指導の元、そのシーズンに流行が予測されるウイルスに合わせて、インフルエンザワクチンが製造されています。予測技術は高まってきているものの、上記記載の通りウイルスはどんどん進化し、製造されたワクチンが対象にしていたウイルスとは別のウイルスに進化してしまうこともあるため、「今年は当たった」「外れた」のような話が出てくるのです。
特に近年話題になったもので、世界的に流行し、致死率の高さなどで非常に恐れられた「鳥インフルエンザ」「豚インフルエンザ」なども、A型インフルエンザウイルスに含まれます。
インフルエンザウイルスにはさまざまな種類があるため、一度かかっても同じ年度内でも、違うインフルエンザウイルスに感染することがあります。
その意味で、新型インフルエンザは季節性インフルエンザ以外に、どんな季節の時期にも世界的な大流行を引き起こしうるものが存在します。
新型インフルエンザとは、動物にのみ流行していたものが、突然変異的にヒトにも病原性を示すようになったものを指します。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
新型コロナウイルスは中国でどのような状況になっているのか、誰も分からないと言っても過言ではありません。
中国政府発表では2020年1月30日の段階で感染者は7,800人でしたが、当時から現場は「10万人以上の患者がいる」と切実に訴えており、その乖離は壮絶なものがあります。(編注:2月24日現在、中国の保険当局によると感染者数は7万7,658人とされています)。
中国人ですらも中国共産党政権の発表など信じていません。中国共産党政権は、常に自分たちの都合に合わせて数字を歪曲し、情報を隠蔽してしまいますので、中国で真実を言ったら公安当局にすぐ連行されてしまいます。
日本でもアメリカでも政権に反対の人は堂々と反対運動を繰り広げて何事もなく日常生活を送っているのですが、中国では同じことをやったら無事に済みません。政権に不都合な人間は「みんな消される」危険性があるのです。
新型コロナウイルスが封じ込められなかったのも、中国共産党政権が当初は情報を隠蔽していたからでしょう。いや、最初から最後まで真実を隠し、今もインターネットにも強い規制を敷いています。
情報を隠蔽する。都合の悪い真実はねじ曲げる。それが中国なのです。
この情報隠蔽が世界中に、必要以上の混乱と不安を招いたのです。















診察室からコンニチハ(208)

次にインフルエンザは、それぞれの時代を通して何故これほどまでに流行ってしまうのでしょうか?
その原因について考察してみます。
インフルエンザウイルスには、人間に感染するA型、B型、C型の3つの型があります。このうち、冬に流行する「季節性インフルエンザ」を引き起こす型は、A型とB型です。
【A型インフルエンザ】
A型インフルエンザウイルスは、他と比べ症状が激しい型です。
「インフルエンザ」と聞いて皆さんが想像するような、強烈な症状が出やすい型だと考えられています。通常一度インフルエンザにかかると、回復の過程でそのウィルスに対する免疫が体内に作られますが、A型は全世界的なインフルエンザの流行として話題になることが多く、ウイルスの形をどんどん変えて進化し続けるため(突然変異を繰り返す)、今までに獲得した免疫が機能しにくくなり、ワクチンの予測も立てにくいインフルエンザウイルスです。
その症状も強く
・38℃を超える高熱
・肺炎を含む、深刻な呼吸器系の合併症
・ものを飲み込むのが困難なほどの、のどの痛み
・関節痛、筋肉痛
・脳炎、脳症の合併症を引き起こすことがあります。
【B型インフルエンザ】
B型インフルエンザウイルスは、以前は数年単位で定期的に流行しておりましたが、近年は毎年流行しています。A型インフルエンザのように、大きな流行を起こすことはあまりないと考えられています。
・お腹の風邪の症状に近く、下痢やお腹の痛みを訴える人が多いのが、やや特徴的です。
・人と人の間でしか感染しません。
【C型インフルエンザ】
C型インフルエンザは、いったん免疫を獲得すると、終生その免疫が持続すると考えられています。再びかかったとしてもインフルエンザだとは気づかず、ふつうの風邪と思ってしまうかもしれません。
・ほとんどの大人が免疫を持っているため感染しにくく
・かかるのは4歳以下の幼児が多いとされています。
・感染してもインフルエンザとしてはかなり軽症で済むことが多いようです。
・症状は鼻水くらい。ほかの症状はあらわれにくいのが特徴です。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
新型コロナウイルスに限らず、ウイルスの遺伝子診断はありふれた検査で、クリニックでもオーダーできるはずです。看護師が検体を採取し検査を外注する。SRLやBMLなどの臨床検査会社の営業担当社員がクリニックまで検体を取りに来て、会社の検査センターで一括して検査する。そして翌日には結果が届く。新型コロナウイルスに対する検査はすでに確立しています。…この検査ツールは、感染研などが実施している研究レベルでなく、臨床レベルの厳しい規制、品質管理をクリアしています。
政府がその気になり、予算をつければ、民間の検査会社を活用することにより、近所のクリニックでも、検査ができるのです。
検査の結果が陽性であっても、無症状や軽症なら、自宅にしばらくの期間こもっていればいいのです。
その分、感染が一定以上に拡大するのを防げるし、限られた数しかない入院ベッドを、重症化してしまった人のために確保することもできます。
これまでの政府の「失敗」には、狭い視野、情報不足、日本の医療への過信などがあったように思えます。もちろん、中国との外交関係、経済界への配慮や、さまざまな政治的思惑もあったに違いないのです。
政府は一刻も早く大量検査体制を整え、各医療機関には院内感染を防ぐ十分な対策を整備するよう指導すべきです。

診察室からコンニチハ(207)

日本でインフルエンザの名称が使われ始めたのは、幕末に蘭学者よりインフルエンザの名称が持ち込まれ、流行性感冒と訳されていました。日本でインフルエンザと呼ばれる以前は、江戸の人気芝居「お染久松」の「染」に掛けて俗に「お染かぜ」と言ったりもしていました。惚れた恋風に見立てた。民家の玄関に「お染御免」「久松留守」といった張り紙をしたという伝聞もあったらしいようです。
インフルエンザの歴史そのものはとても古いですが、インフルエンザの流行が科学的に立証されたのは比較的近年で、1900年頃からになります。 近年に発見されたばかりにも関わらず、100年足らずの短い期間に 「スペインかぜ」「アジアかぜ」「香港かぜ」「ソ連かぜ」と、4度ものパンデミック(大流行)がありました。
このそれぞれで、多大なる犠牲者が出ています。
その中でも、最も古い1917年~1919年にかけて大流行した「スペインかぜ」においては、全世界で6億人が感染し、死者は4000万人から5000万人だったと言われています。この猛威は当然日本でもふるわれ、人口の約半数が罹患し、約 40万人の犠牲者が出たと推定されています。
世界的に猛威をふるった例に関しては多くの記述残っていますが、それらを除いた上での日本国内の記録となると、明治6年2月から関西で、8月~10月に掛けて関東で大流行した「稲葉風」がインフルエンザと断定できる最初の流行とされています。
その後、明治23年(1890年)にインフルエンザは広く一般に「流行性感冒」として知られるようになり、昭和26年(1951年)2月2日付けの官報において「インフルエンザ」を公式の用語として使用する事が決まりました。
それ以前はどうだったのでしょうか?
インフルエンザと断定できる記述は、残念ながら確認されていません。しかし、インフルエンザではないかと推測させる記述は数多く残されています。
最も古い記述は三代実録(862年) という一般の書物で、その中には『1月自去冬末、京城及畿内外、多患、咳逆(がいぎゃく)、死者甚衆…』と記されています。他には源氏物語・夕顔(1008年頃発刊)の 中に、『この暁よりしはぶき(風邪などのせきの出る病気)やみには侍らん』という内容があり、同時期の大鏡(1010年)では、『一条法王がしはやぶきやみのため37歳で死去された』とあります。
さらに増鏡(1329年)でも、『今年はいかなるにか、しはぶきやみはやりて人多く失せたまうなかに…』と記述されています。
このそれぞれに、『咳逆(がい‐ぎゃく):せきの出る病気』という言葉が出てきています。
医学という分野に目を向けてみると、日本で現存する最古の医学書である医心方(丹波康頼著)において、この『咳逆』を『之波不岐(シハブキ)』と訓読している記述が確認されています。
では、この『咳逆』というのは一体何を指し示していたのでしょうか。
実はこれ、平安・鎌倉時代に存在したとされる疾患名で、今日でいうとインフルエンザを示すものになる…そうなのですが、この時代にウイルスという概念は存在するはずもありませんので、インフルエンザ以外の風邪症候群、肺炎、肺結核等も含まれていると考えられています。
しかし、これらの事から少なくとも現在の私たちがインフルエンザと認識するような病状の悪性の風邪は確実に存在したと考えられます。江戸時代に入るとさらに記録は詳細になり、インフルエンザを連想させる疾患を「かぜ」或いは「はやりかぜ」と呼ぶようになりました。
さらに、この時期辺りからの特徴ですが、その年毎の流行の出来事をとって『○○風』と名づけたり、インフルエンザの流行の始まった土地名をとって名づける事が多くなります。
面白いものでは、安永5年(1776年)に流行した風邪についてですが、当時人気の高かった浄瑠璃「城木屋お駒」という毒婦の祟りという事で「お駒風」と呼ばれたとの記録もあります。
その後も、1784年の「谷風(横綱 谷風梶之助が罹患した事に由来)」、続いて1802年に長崎から始まって全国へ広がった「お七風(当時の八百屋、お七の小唄が下世話に流行っていた事より)」、1807年の「ネンコロ風(ねんねんころころ節という小唄が流行っていた事より)」、1821年の「ダンホ風(当時人気だった小唄のおはやしに”ダンホサン・ダンホサン”とあった事より)」等があります。
そしてこれ以降は、地域名が用いられ、「薩摩風(1824年)」、「津軽風(1827年)」、「琉球風(1832年)」、そして1856年の「アメリカ風(開国により下田に上陸した米人が流行させた、とう噂より)」といった呼び名がつけられました。
ちなみにですが、日本国内においてインフルエンザという単語が初めて本等に記述されたのも、江戸時代になります。
江戸神田の種痘所設立の発起人である伊藤玄朴(1800~1871年)が自身の著書、医療正史(ドイツ医学書をオランダ語訳したもの をさらに日本語に訳したもの)の中において、『印弗魯英撒』と和訳したのが初めてになります。
さて、ここまでインフルエンザ歴史を平安から江戸時代にかけて掘り下げてみましたが、そのルーツは意外と深いものです。実際、この程度の情報量では、氷山の一角にも満たないでしょう。
ですが、インフルエンザと人との関わりがはるか昔から連綿と続くものである、という事は感じて頂けたと思います。
次回に続く
【コロナウイルス時事情報】
それにもかかわらず、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」をめぐって「水際パフォーマンス」を繰り広げました。安倍政権お得意の“やってる感”を演出しようとしたのでしょが、厚労省の役人の独断専行で、かえって船内感染を広げ、あげく諸外国のメディアから酷評される始末となってしまいました。
そして誰もが不思議に思ったのは、約3,700人の乗客、乗員全員のウイルス検査をなぜしないのかということだったのです。
国内でも「既にウイルスが入り込み街の中で散発的な流行が起きていてもおかしくない」とする日本感染症学会の見解がありながら、厚労省の方針で湖北省と無関係な人は検査の対象外とされ、そのためウイルスが日本の街中にどのように広がっているかについてはベールに包まれたままだったのです。
おしりに火のついた政府が民間の検査会社の助けを借りて検査体制の拡充に乗り出したのは2月12日になってからでした。
株式会社エスアールエルSRLは、厚生労働省及び国立感染症研究所の依頼により、新型コロナウイルスの検査を2月12日(予定)より受託することになりました。
SRLは日本国内の病院から送られてくる血液、便、組織などの検体を一日20万件もさばいているといわれています。ウイルス検査装置は最新式のもので、公的な研究機関とは比較にならないくらい手馴れているため、スピーディな検査が可能です。
今後はこうした民間の検査会社をもっと活用していくべきなのでしょう。政府が至急に予算をつけてメガファーマを誘致し、検査をSRLなどの民間会社にオーダーできるシステムを作り上げれば、混乱はここまで広がらなかったのではないかと悔やまれてならないのは私だけではないでしょう。
メガファーマの一つは、スイスの世界的な製薬・ヘルスケア企業「ロシュ」があります。
「ロシュ」のスタッフは、新型コロナウイルスが発見されるやすぐに現地に入り、さっそく検査ツールの開発に成功、やがて商用バージョンが民間検査会社にも投入されました。
それを報じたのが1月31日付ブルームバーグの記事でした。
スイスの製薬会社ロシュ・ホールディングは、中国で発生した新型コロナウイルスに対応する初の商業用検査ツールを投入しています。中略)同社では、数週間前に中国・武漢市を発生源とする新型コロナウイルスの存在が浮上した時に分子診断医から成る緊急対応チームが始動。スタッフが十分に配置された施設で数時間以内に診断が可能な検査ツールを開発しました。…新型コロナウイルスの感染拡大に備える他の国々からも注文を受けていると言われています。
日本のメディアで、こうした事実が報道されていません。「海外メディアが大きく報じましたが、日本メディアはほとんど扱いませんでした。緊急事態に際し、記者クラブ、役人、そのまわりにいる学者はどこを向いているのでしょう」
厚労大臣らの記者会見や、担当官僚のレクをうのみにして記事を書く記者クラブメディアの報道だけでは、われわれ国民は、世界から見て日本政府の対策がいかにズレているかを具体的に知ることはできません。
中国への渡航歴は?中国から来た人との接触は?など、いわゆる“湖北省しばり”で、一般市民を検査から切り離し、政府はこの間、ミスリードを続けてきましたが、自治体や医療機関の判断により“湖北省しばり”を突き破って検査を行う動きが広がるとともに、感染が急速に拡大しつつある実態が見えてきました。