診察室からコンニチハ(144)

☆2018年 - 札幌医科大の本望修教授らとニプロが開発した、脊髄損傷の治療に用いる自己骨髄間葉系幹細胞を使う細胞製剤「*ステミラック注」の製造販売が、厚生労働省に条件及び期限付きで承認されました。
中医協総会は2月20日、ニプロの再生医療等製品・ステミラックの薬価収載を了承しました。算定薬価は1495万7755円となる概算です。安全性を確保する観点から、同日の中医協では、施設・医師要件などを定める「最適使用推進ガイドライン」とそれに伴う、診療報酬上の留意事項通知についても了承されました。
ステミラックは、ニプロが札幌医科大学と共同開発したヒト(自己)骨髄由来間葉系幹細胞で効能・効果は、「脊髄損傷に伴う神経症候及び機能障害の改善。ただし、外傷性脊髄損傷で、*ASIA機能障害尺度がA、B又はCの患者に限られています。
*ASIA分類とは
ASIAは、アメリカ脊髄損傷協会の略で、同協会がまとめた脊髄損傷 の評価尺度の略語を意味しています。現在の脊髄損傷の神経学的および機能的分類の国際基準です。
【A】
仙髄節 S-4~S-5に運動・知覚機能がまったくないもの。
【B】
S-4~S-5を含む神経学的損傷レベルより下に何らかの知覚機能を残しているが、運動機能がないもの。
【C】
神経学的損傷レベルより下位に何らかの運動機能は残っているものの、主要筋群の半分以上が筋力3未満であるもの。
【D】
神経学的損傷レベルより下に何らかの運動機能を残しており、主要筋群の半分以上が筋力3以上のもの。
【E】
運動・知覚機能共に正常なもの。
 
脊髄損傷に対する再生医療等製品では初めての保険収載となります。脊髄損傷から31日以内を目安に、患者の骨髄液から間葉系幹細胞を採取します。その後、体外で間葉系幹細胞を培養し、増殖させた後に体内に静注した治験では、投与した13例中12例でASIA機能障害尺度1段階以上の改善が認められています。
新規性が高く、未知の副作用が起きる可能性もあることから、同省は、患者や施設、医師要件を明確化する「最適使用推進ガイドライン」を策定しました。施設要件として、脊髄損傷患者の全身管理の可能なICUなどを有することや、標準的なリハビリテーションが実施可能な体制などが求められています。治療の責任者については、▽医師免許取得後脊髄領域を含む整形・脳神経外科に関する10年以上の修練を行う、▽脊髄損傷に関する30件以上の臨床経験がある、▽ASI Aの評価が適切に行える事を求めています。
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診察室からコンニチハ(143)

この iPS細胞がもつ多分化能を利用して様々な細胞を作り出し、例えば糖尿病であれば血糖値を調整する能力をもつ細胞を、神経が切断されてしまうような外傷を負った場合には、失われたネットワークをつなぐことができるように神経細胞を移植するなどのケースが考えられます。 iPS細胞から分化誘導した細胞を移植する細胞移植治療への応用が期待できます。
一方、難治性疾患の患者さんの体細胞からiPS細胞を作り、それを神経、心筋、肝臓、膵臓などの患部の細胞に分化させ、その患部の状態や機能がどのように変化するかを研究し、病気の原因を解明する研究も期待されています。 例えば、脳内にある神経細胞が変化して起こる病気は、外側からアクセスすることが難しく、また変化が進んでしまった細胞からは、正常な状態がどうであったかを推測することが難しいとされてきました。 iPS細胞を用いることで、こうした研究が飛躍的に進む可能性があります。
また、その細胞を利用すれば、人体ではできないような薬剤の有効性や副作用を評価する検査や毒性のテストが可能になり、新しい薬の開発が大いに進むと期待されています。
☆2011年 - イピリムマブ(商品名ヤーボイ)がアメリカ、ヨーロッパで承認されました(日本では2015年)。世界初のヒトCTLA-4モノクローナル抗体医薬品であり、免疫力を高めることにより悪性腫瘍を攻撃する新しいタイプの抗がん剤です。
☆2014年ニボルマブ(商品名*オプジーボ)がアメリカ、日本で承認されています。(ヨーロッパでは翌年)。世界初の*ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品が認可されました。
*ヒトPD-1モノクローナル抗体とは、がん細胞を攻撃するリンパ球T細胞を回復・活性化させ、がん細胞に対する免疫反応を亢進させることで抗腫瘍効果をあらわす薬です。
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊します。
通常であれば、がん細胞は体内で異物とされリンパ球のT細胞によって攻撃を受けますが、がん細胞自身が作るPD-1リガンドという物質でリンパ球の活性化を阻害して、独自の増殖を繰り返しています。
この新薬はPD-1リガンドによるリンパ球の活性化阻害作用をブロックすることで、T細胞のがん細胞を攻撃する作用を高めるのです。
しかし、免疫系の薬剤は薬価があまりに高額な事でも社会問題になっています。例えばオプジーボは2014年に初めて承認された時、対象となるのはメラノーマという皮膚がんだけでした。対象人数が少ないため、薬価は非常に高額に設定され、例えば体重66kgの人(日本人の男性の平均体重)に1年間投与した場合は月におよそ300万円、1年間では3,800万円もの薬価となっていました。
そして翌2015年12月に肺がんの治療薬として適応拡大されます。肺がんの患者さんは多いので、この薬価で多くの患者さんが使うと日本の医療財政が破綻するという騒ぎになり、2017年2月の薬価改定時に当初の半額に引き下げられました。
その後、腎細胞がん、頭頸部がん、胃がんなど更に適用が広がり、それに応じて薬価も引き下げられ、2018年11月現在では当初の4分の1程度の年間1,090万円ほどとなっています。患者さんの個人負担は我が国の医療制度のおかげで、高額療養費制度を利用すれば、オプジーボを1年間使用した場合でも、大多数の方については自己負担額60万円強(年収、年齢により変わります)未満で済むはずです。しかし以前にも記述しました様に年収が1200万円前後(手取り額で800万円前後)の方になると、この自己負担は何倍にも跳ね上がり家のローンなど抱えていると家計は火の車になってしまいます。
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診察室からコンニチハ(142)

☆2007年 - 京都大学の山中伸弥らのグループが、ヒトの皮膚細胞に遺伝子を組み込むことにより人工多能性幹細胞(*iPS細胞)を生成する技術を発表しました。また同日、ウィスコンシン大学のジェームズ・トムソンもほぼ同等の方法でiPS細胞を生成する論文を発表しました。
*iPS細胞は2006年に誕生した新しい多能性幹細胞で、再生医療を実現するために重要な役割を果たすと期待されています。 しかし、そもそもiPS細胞とはどのように作られるのでしょう?iPS細胞の何が画期的なのでしょうか?そして、いつ頃、どのように医療に役立つと予測されているのでしょうか?このセクションでは、これらの疑問について、わかりやすく説明します。
①iPS細胞とは、人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつように変化させた多能性幹細胞です。この細胞を「人工多能性幹細胞」と呼びます。英語では「induced pluripotent stem cell」と表記しますので頭文字をとって「iPS細胞」と呼ばれています。 名付け親は、世界で初めてiPS細胞の作製に成功した京都大学の山中伸弥教授です。
体細胞が多能性幹細胞に変わることを、専門用語でリプログラミングと言います。 山中教授のグループが見出したわずかな因子でリプログラミングを起こさせる技術は、再現性が高く、また比較的容易であり、幹細胞研究におけるブレイクスルーといえます。
②iPS細胞は、再生医療や、病気の原因を解明し、新しい薬の開発などに活用できると考えられています。
再生医療とは、病気や怪我などによって失われてしまった機能を回復させることを目的とした治療法です。
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診察室からコンニチハ(141)

☆2003年-*ヒトゲノムプロジェクトの完成版が公開されました。
これは富山大学の中村真人が、世界で初めてインクジェット式バイオ3Dプリンターで生きた細胞での3次元構造の作製に成功した業績です。
*このプロジェクトは1990年に米国のエネルギー省と厚生省によって30億ドルの予算が組まれて発足し、15年間での完了が計画されていました。発足後、プロジェクトは国際的協力の拡大と、ゲノム科学の進歩(特に配列解析技術)、およびコンピュータ関連技術の大幅な進歩により、ゲノムの下書き版(ドラフトとも呼ばれる)を2000年に完成しています。このアナウンスは2000年6月26日、ビル・クリントン米国大統領とトニー・ブレア英国首相によってなされました。これは予定より2年早い完成です。完全・高品質なゲノムの完成に向けて作業が継続されて、2003年4月14日には完成版が公開されました。そこにはヒトの全遺伝子の99%の配列が99.99%の正確さで含まれるとされています。
☆2005年 - *筋電義手の実用化。アメリカ合衆国のジェシー・サリバンが世界で初めて意思で動く義手を装着した人間となりました。
*筋電義手は筋電を検知して作動する仕組みなのですが、そもそも筋電は極めて微弱な電流なので、検知が難しい場合もあります。
そのため、機能的でありながら誰でも使用ができるという訳ではない、という欠点がありました。
日本において筋電義手の普及率は芳しくなく、初めて筋電義手が開発された1998年には、わずか8本しか売れていないという実状でした。
そもそも、筋電義手の支給は要件が厳しく、普及しやすい土台が日本にはないと言えたのかもしれません。
また、筋電義手はとても高価なのですが、筋電義手の世界市場シェアは殆どある海外企業が占めている状態でしたので、価格が下がりにくく、150万円以上もしていました。その為に誰もが購入しやすいという訳ではありませんでした。
しかし、2005年アメリカ合衆国のジェシー・サリバンが世界で初めて意思で動く義手を装着した人間となりました。このシカゴ・リハビリテーション研究所が開発した「バイオニック・アーム(bionic arm)」は筋肉の力で動かす従来の義肢と違い、頭で思った通りに動かす事ができ、より人間の腕の機能に近いと言われています。この義手がより普及して行けば、価格もさらなる低価格化が実現されるでしょう。
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診察室からコンニチハ(140)

カプセル内視鏡の現状について、もう少し説明させて下さい。
先ずはカプセル内視鏡で、消化管のすべてを観察できるかと云う問題です。
結論から言いますと一つのカプセル内視鏡で消化管すべてを観察することはできません。現在日本では小腸用のカプセル内視鏡と、大腸用のカプセル内視鏡が保険適用となっており、小腸、大腸疾患に対する有用性が報告されています。一方、他臓器においては食道用のカプセル内視鏡、胃用のカプセル内視鏡が開発されていますが、有用性などの検討が行われているところであり、国内での使用はできません。小腸用のカプセル内視鏡は、カプセルの片側にカメラがあり、一秒間に2~6枚の写真撮影が可能です。
2014年に日本においても大腸用カプセル内視鏡は保険適用となり、その適用は、「大腸内視鏡が施行困難、もしくは、施行困難が想定される患者」となっています。大腸用カプセル内視鏡を使用したカプセル内視鏡検査は、当然、食道、胃、小腸を撮影しながらカプセルが大腸まで到達しますので、食道、胃、小腸の検査も出来るのではないかと思われるかもしれません。しかしながら、胃の中は他の臓器と比べると、とても広く、カプセル内視鏡ではすべてを観察することができません。また大腸用カプセル内視鏡は電池を長持ちさせるために、カプセル内視鏡が胃内にある場合には、撮影枚数を極端に減らす機能がついています。したがって、カプセル内視鏡一個ですべての消化管は観察することが出来ないのです。大腸カプセル内視鏡を行って異常がなくても、上部消化管内視鏡検査は行わなくてもよいわけではありません。症状や病状にあわせて主治医の先生とよく相談するようにしましょう。
これらを整理してみますと、従来から使用されていた上部消化管内視鏡や下部内視鏡では、中間に当たる小腸の病変が盲点でした。小腸の癌は殆ど無いと言われていた時代さえあったのです。現在でも食道・胃および大腸に比べると小腸の癌はかなり少ないのですが、それでも小腸癌も存在するのです。このカプセル内視鏡の最大の利点は小腸の病変を以前より的確に把握できるところにあります。
また開発初期のカプセル内視鏡は、従来の内視鏡に比べ解像度が落ちていましたが昨今ではかなりのレベルに達しています。
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診察室からコンニチハ(139)

☆2001年-分子標的治療薬*イマチニブがアメリカ合衆国で承認されました。
*イマチニブ: 抗癌剤(こうがんざい)の一つで、慢性骨髄性白血病・消化管間質腫瘍などに対して使用される分子標的治療薬。商品名グリベック。2001年にスイスの製薬会社ノバルティスファーマが発売しています。慢性骨髄性白血病の原因となるBCR-ABLという異常なたんぱく質や、消化管間質腫瘍の原因となる異常なKITたんぱく質と結びつく特定のチロシンキナーゼの働きを阻害することによって、骨髄造血幹細胞や腫瘍の増殖を抑えて、それまでは抗がん剤で38%、インターフェロンで53%、骨髄移植で63%だった慢性骨髄性白血病の5年生存率がイマチニブにより93%に上がったと報告されています。
☆2001年-カプセル内視鏡が米FDAから認可されました。
このカプセル内視鏡の最大の適応は、上部・下部消化管内視鏡など従来の検査法で原因が不明な 消化管出血であるCrohn病やNSAIDs(non- steroidal anti-inflammatory drugs)の 副作用の評価、他にも遺伝性ポリポーシスも適応になると考えられています。さらに、小児や難治性の*セリアック病も将来的には適応になるでしょう。
*セリアック病とは、小麦に含まれる「グルテン」と呼ばれる物質に対して、誤って免疫反応を起こしてしまうことから引き起こされる病気を指します。インターネット上では「小児脂肪便症」、「グルテン過敏性腸症」、「グルテン不耐症」と検索されていることも多いようです。セリアック病で免疫反応が生じる結果、小腸が障害を受けてしまい栄養の吸収に支障が生じることになります。
セリアック病の患者数は以前よりも増加してきていると考えられており、環境要因などの影響もあるのではと推測されています。
症状の出方は千差万別であり、セリアック病であってもほとんど無症状の人がいる一方で重度の栄養失調をきたす人もいます。治療はグルテンを食事中から除去するのが基本になります。しかし、食事療法のみでは治療効果が不十分なこともあるため、セリアック病に対する治療薬の開発が期待されています。
また、カプセル内視鏡の禁忌は、消化管閉塞・狭窄や瘻孔と診断された、あるいはその疑いが強い時や、嚥下障害がある場合などです。妊婦に対しての安全性はまだ確立されておらず、心臓ペースメーカーなどの電子機器を体内に埋め込んでいる場合も、通常は適応外とされています。
カプセル内視鏡の問題点は、カプセル通過の遅延と消化管狭窄部における滞留です。糖尿病などのために消化管の蠕動が低下している場合には、カプセルが食道や胃内に長時間とどまり、小腸全域 の画像撮影ができない事にあります。必要に応じて再検査を行い、右側臥位になるなどの体位変換をしたり、場合によっては通常の内視鏡を用いてカプセル内視鏡を十二指腸に誘導するような試みも行われています。カプセル内視鏡の消化管内での滞留は、Crohn病やアスピリンおよびNSAIDs(通常の痛み止でステロイドを含まない)を長期間内服している症例などで報告されています。
しかしカプセル内視鏡が体内に滞留してもほとんどの場合は全く無症状であり、カプセルが狭窄部につまって腸閉塞 を起こした とい う報告は今の所ありません。
次回に続く

診察室からコンニチハ(138)

この頃、イマチニブ、リツキシマブ、ゲフィチニブなど、がんの分子標的治療薬の臨床試験が相次いで始まっています。分子標的治療薬は悪性腫瘍の化学療法に革命的変化をもたらしています。
*分子標的治療薬とは
癌(がん)細胞などの増殖に必要なたんぱく質などの分子を標的として、癌細胞のみを破壊する薬剤の総称です。分子生物学によって解明された遺伝子情報を活用して開発されたものです。従来の抗癌剤が癌細胞とともに正常な細胞も損傷させるのに対し、分子標的治療薬は癌細胞にのみ作用するため、抗癌剤に比べて副作用が著しく少ないと言われています。
[補説]グリベック(白血病治療薬)・ハーセプチン(乳癌治療薬)・イレッサ(肺癌治療薬)など、日本でもさまざまな分子標的治療薬が使用されるようになってきましたが、アメリカなど海外で次々と承認されている新薬の多くが、日本ではすぐに使えない状況にあり、治験制度の見直しを求める声が高まっています。
しかし、それ以上に遺伝子操作が必要となる分子標的治療薬は極めて高額な医薬品が多く、保険適用薬となると医療費財政は破綻してしまうかもしれないとの危機感も一部に存在しています。
実例を挙げてみますと、イレッサを1日1回250mg経口投与すると薬価だけで5323.9円もするのです。
1ヵ月30日で15万9717円の値段となります。それ以外にも肺がん治療薬のオプジーボになると1ヶ月で300万円の薬価となってしまいます。より高度な最先端医療に医療費は膨大する一方なのです。国家経済が、個人負担が、どこまで持ち堪えられるかが問題となってくるかもしれません。
我が国には高額医療費の限度額制度があって、月間10万円とか20万円以上の個人負担は公的資金で補充される仕組みになっていますが、それさえも年々その上限額が上げられ年収が1160万円を超える人は、もし月間3000万円の医療費がかかってしまうと一ヶ月の自己負担額の上限が55万2700円まで上げられてしまっています。そうなると税引き後の手取り額は700万円を超える程度ですから、殆どは医療費に費やされてしまいます。もちろん税金の医療費控除と云う制度もあるのですが、それにしても癌などで最先端医療を受けるとなると多くの家庭で台所は火の車になってしまうに違いないでしょう。
そうなるとアメリカなどの超富裕層が存在する国を除けば、最先端医療の享受は受けにくい社会情勢となってしまうのでしょうか?
事実、臓器移植などは渡米してアメリカなどで受けている事が多いのです。時には億単位がかかる臓器移植の医療費に一般家庭では対処できず、街灯などで募金活動をしている光景を目にする事も稀ではありませんね。
そんな革新的な最先端医療の高額化が、時に富による命の格差となるのか危惧されてなりません。
次回に続く

診察室からコンニチハ(137)

☆1998年-ウィスコンシン大学のジェームズ・トムソンらにより、*ヒトES細胞株の樹立に成功しています。
 *ヒトES細胞株
ES細胞とは胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう)と呼ばれ、英語では(embryonic stem cells)と呼称され、動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞細胞株の事で、英語の頭文字をとって、ES細胞(イーエスさいぼう、ES cells)と呼ばれています。受精後5 ~7日程度経過したヒト 胚の一部から取り出された細胞を、特殊な条件下で培養して得られます。
○マウスES細胞は1981年に樹立されています。
  ES細胞の樹立方法 受精  【ヒトES細胞株の重要性】
(1)細胞治療に用いるために必要な機能をもつ細胞の供給が可能となります。
(2)組織工学による人工組織・臓器作製のための多種類細胞材料の供給も出来るでしょう。
(3)基礎研究や創薬研究に必要なヒト細胞の供給も得られます。
【ES細胞が組織幹細胞に比較して有利な特質】
「多分化能」を有していて、
• 胚と胎児の発生初期に作られる細胞種など、成体内で組織幹細胞や前駆細胞から補充されることがない(起きにくい)細胞へ分化させることが可能で、治療に必要な細胞だけが供給されやすい利点があります。
• 神経細胞の中で初期に分化するもの:ドーパミン神経、運動神経、感覚神経など、細胞治療に必要な神経細胞が作られやすいとも言われています。
• 心筋細胞、インスリン分泌細胞
• 多種類の組織幹細胞を必要なだけ作り出して利用することも可能になりそうです。神経系幹細胞、間葉系幹細胞、造血系幹細胞など増殖能が限られている組織幹細胞を大量に供給することができる可能性もあるのです。
【ES細胞を使った細胞治療を目指す研究の現状】
• パーキンソン病
ヒトやサルES細胞からドーパミン神経への分化誘導が可能です。
ヒトやサルES細胞からのドーパミン神経細胞を疾患モデル動物へ移植する前臨床研究により病態改善、腫瘍形成なし、などの良い結果のみを求めやすいとの報告もあります。
• 脊髄損傷
ヒトやサルES細胞から神経幹細胞/前駆細胞、運動神経、グリア細胞などへの分化誘導が可能となりそうです。
グリア細胞や神経前駆細胞の疾患モデル動物への移植による治療効果の報告も多くなっています。
• 加齢黄斑変性、網膜色素変性など眼科疾患では、ヒトやサルES細胞から網膜細胞への分化誘導で治療に導きやすくなります。
ヒトやサルES細胞からの網膜細胞を疾患モデル動物へ移植して病態改善される期待もあります。
• 心筋梗塞
ヒトやサルES細胞から心筋細胞への分化効率を上げる研究が進行中で、疾患モデル動物への細胞移植で心筋組織に取り込まれて心筋機能が向上されます。
• 糖尿病
ES細胞からインスリン分泌細胞への分化誘導の研究は進行中です。
カリフォルニア州のベンチャーがヒトES細胞から膵島細胞への分化に成功(幾度か失敗を重ねていましたが今度は本当らしい)。
透過性膜カプセル中に封入して移植すれば免疫拒絶の回避が可能かもしれないとの研究もあります。
• 肝硬変など
ES細胞から肝細胞への分化誘導の研究は進行中です。
次回に続く