診察室からコンニチハ(96)

私はこの老人ホームとの連携をより強化する為、自分のケータイ番号を全てのホームのナース達に知らせました。1年365日24時間オンコール形式にしたのです。このオンコール方式を取った事により、病院のベッド稼働率は確実に向上し、病院運営は順調に推移して行きました。
問題は私の心と身体がどこまで持ち堪えられるかにかかっていました。60才直前の私は、未だ自分の身体に過度の自信を持っていました。日祭日には連携している老人ホームから、合わせて10数回の電話がかかって来るのも稀ではありませんでした。また夜間帯に数回電話が入る事もありしました。
「熱発しているので今から入院させて欲しい」とか、「意識状態が変なので今からCTを取りに行っても良いか」
など、普通ならば病院の当直医が対応する事まで全て自分で背負いこんでしまったのです。
何故かと言いますと、パートの当直医だと夜間にCTは撮れないからと緊急の患者さんの受け入れを断ってしまう例があったからです。その為に分かりやすいCT撮影のマニュアルを置いてあるのですが、それでも拒否して患者受け入れをしないパート医がいたのです。何年も外来通院していたり、連携している老人ホームからの患者さんを断られたりすると、病院の評判がかなり悪くなってしまうのです。パート医でも数年近く勤めている人ですと、緊急入院を断ったりする事は少ないのですが、そのパート医が自分の都合で他の医師に臨時で頼んでいたりすると、頼まれた医師は勝手がわからず緊急の依頼を断ってしまうケースが多くなるのです。そんな場合には後で、
「先生の病院では夜間でも緊急入院させてくれると言っていたのに、実際は受けてくれない」
と、お叱りを受ける事が幾度かあったのです。そんな事情もあって連携している老人ホームとか、何年も外来に通っていらっしゃる患者さんには私のケータイの電話番号を、お知らせしたりするのです。しかし、この過剰サービスも度が過ぎると私自身が心身ともに疲れ果ててしまうのですが、60才ぐらいまでは何とか耐えられました。
大学病院時代に先輩医師から受けた薫陶(くんとう)が身に沁みついていたのかもしれません。
「医家は眠らず」
との格言が常に頭の何処かにあったのでしょう。事実私より10年以上先輩の開業医は、自宅の1階が診療所で2階を住宅にしている人たちが多かったので夜中に患者さんから叩き起こされる事も度々だった様です。ですから、その時代の医師の平均寿命はかなり短かったと言われています。
次回に続く
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