潮騒は聞こえず(19)

チャーリーは鈴枝と出会って本当のLoveの意味を全身で感じ取った。生きる事の原点、それは男と女の出会いが究極の始まりではないだろうか。旧約聖書の失楽園、アダムとイヴの様に人間の全ての根源がそこにあるのではと、そんな想いに心は囚われる。人が生きて行く為には少なくても三つの生理的欲望を満たす必要がある。先ず第一は睡眠である。睡眠障害は全ての人間の精神のバランスを崩す。次が食欲である。食べる事も生きる事の根源と言って良いだろう。食べる事無くして決して人は生き続ける事は出来ない。水分のみで10日以上生き続けたと言う記録は幾つもあるが、それは一つの記録に過ぎない。やはり人間をも動物と言い換えて良いかもしれないが食べる事の意味は大きい。そして最後に来るのが男女の繋がりである。特に思春期以降の男女の契りはその精神生活においても重要な意味を持つ。五味川純平著「人間の條件」の序章にこんな下りがある。「若い男の幻想の中では、幸福は、たいてい若い女の白い裸体の形をとっている」と、真に愛し合った男女の契り程に美しいものはないかもしれない。そしてそれは人間の種の保存としても貴重なものだ。
チャーリーは36才の黒人少尉、鈴枝は25才の女郎上がりである。東北の貧しい農村の娘で12才の時に売られて来た。鈴枝は女郎名で本名はイネと言う。
明日に続く
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