診察室からコンニチハ(102)

今回は簡単な古代からの医学史を記載してみたいと思います。もしかすると、多くの方は余りご興味をもたれないかもしれませんが…。
☆紀元前2600年頃
*イムホテプが、エジプト第3王朝下に200種の病気の診断と治療に関する教科書を著しました。エジプト第3王朝(えじぷとだいさんおうちょう、紀元前2686年頃 - 紀元前2613年頃)は、古代エジプトの王朝でジェセル王のピラミッドを建造した王朝です。
*イムホテプは史上初のピラミッドといわれる、ジェセル王のピラミッドを設計したことで知られていますが、建築家としてのみならず、内科医としても優れ、死後には「知恵、医術と魔法の神」として神格化され、ギリシャの*医神アスクレーピオスと同一視されていました。
*医神アスクレーピオスは、優れた医術の技で死者すら蘇らせ、後に神の座についたとされることから、医神として現在も医学の象徴的存在となっています。ユーロ導入まで発行されていたギリシャの旧10000ドラクマ紙幣に肖像が描かれていました。
☆紀元前1500年頃 - 古代ギリシアのエーゲ海諸島のテーラ (Thera) でサフランが(通風)薬として使われていました。
*通風とは痛風とも言われ、風が吹いても痛い病気と云うのが語源です。
☆紀元前8世紀-6世紀 - 古代中国で『*山海経』が編纂され、薬効を持つ草木・鉱物について記載されていました。
*せんがいきょう【山海経】
〈さんかいけい〉とも読みます。中国古代の地理書。山々の系列に従って,各地の山に産する動植物や鉱物が記述されるが,そうした産物には空想的なものが多く,また山川に住む怪物や神々についての記述も含まれる。中国神話研究の基礎資料の一つです。
☆紀元前500年頃 - ススルタ(Sushruta, 古代インド)が*ススルタ大医典 (Sushruta Samhita) を著し、120以上の外科用器具、300もの外科手術法および8種類の手術区分について著述しています。また、*鼻ソギの刑に対して整形外科手術を施しました。
*鼻ソギの刑
秦の始皇帝がこの刑を好み、各国の捕虜に対しこの刑を行ったために鼻の有る者のほうが珍しいとされる町が存在したほどであると始皇帝の子の教育係であった趙高が伝えたと言われています。初犯は首への刺青、再犯は鼻そぎ。豚や羊を盗んだ者は、初犯は首に刺青、再犯は顔に刺青、3犯は鼻そぎ、4回目で死刑とされた。 
*ススルタ大医典は古代インド人の叡智と思索の集大成ともいうべき本書で、彼らが如何にエビデンスと直観を構築して行ったか、驚くべき名著です。
☆紀元前420頃 - ヒポクラテスが、病気には自然に由来する原因があると主張し科学的医療の先鞭を付けた。また、
<ヒポクラテスの誓い>
を提唱しました。以下の通りです。
「医神アポロン、アスクレーピオス、ヒギエイア、パナケイアおよびすべての男神と女神に誓う、私の能力と判断にしたがってこの誓いと約束を守ることを。
この術を私に教えた人をわが親のごとく敬い、わが財を分かって、その必要あるとき助ける。
その子孫を私自身の兄弟のごとくみて、彼らが学ぶことを欲すれば報酬なしにこの術を教える。そして書きものや講義その他あらゆる方法で私の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとずき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。
・私は能力と判断の限り患者に利益すると思う養生法をとり、悪くて有害と知る方法を決してとらない。
・頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない。同様に婦人を流産に導く道具を与えない。
・純粋と神聖をもってわが生涯を貫き、わが術を行う。
・結石を切りだすことは神かけてしない。それを業とするものに委せる。
・いかなる患家を訪れるときもそれはただ病者を利益するためであり、あらゆる勝手な戯れや堕落の行いを避ける。女と男、自由人と奴隷のちがいを考慮しない。
・医に関すると否とにかかわらず他人の生活について秘密を守る。
・この誓いを守りつづける限り、私は、いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう。もしこの誓いを破るならばその反対の運命をたまわりたい」
我が母校も、このヒポクラテスの誓いを校歌に入れていますが、昨今の医師の風潮を見ると恥ずかしさを禁じ得ません。
次回に続く
関連記事

コメント