診察室からコンニチハ(120)

海水から生態系に影響を与える薬剤は、抗ガン剤だけに留まっている訳ではありません。
・イギリス漁業協会の記念シンポジウムでの英国エクセター大学の魚類生理学者による講演で、
「河川に流入した避妊薬に含まれる成分が魚たちの性質や生殖本能に影響を与えていて、《魚の不妊化》と《オスの魚のメス化》が広範囲で起きており、そのために魚の総数が減っている」
と云う、報告もなされています。
具体的には、ヒトの避妊薬に含有される女性ホルモン「エストロゲン」を含む約 200種類の化学物質が海洋生物に影響を与えていることがわかったということで、それにより魚の個体数がイギリスにおいて著しく減少の兆しを見せているというものでした。
これらの《魚の不妊化》と《オスの魚のメス化》を引き起こしている物質が、どこから自然界の水の循環システムに流入しているのかというと、
・ヒトの排泄を通じて川から海へと流入し続けているのです。
ヒトが主に薬などとして服用する化学物質が、海の生物に影響を与える循環の仕組みは、
・現在の主要国のほとんどの下水処理は水洗システムなので、人間から排泄・排出されたものはほとんど自然の水の中に循環されるという事になります。
・ヒトの体内に入った薬、化学物質は、尿や便などからそのまま水中に入って、世界中の海に広がっていく結果となります。
・これを思った時、最初は「海水の量は多いから大丈夫なのでは?」とも考えたのですが、しかし具体的な数字は間違っているかもしれないので書きませんが、今の社会での「薬の全生産量」を考えますと、地球すべての海を汚染している可能性は否定できません。少なくとも、先ほどのイギリスの調査では、すでに各地で魚からそれらの化学物質が検出されています。
それが、世界の海のどのあたりまで広がっているのかは定かではないですが、ただ少なくとも、
「薬を大量に消費している国や地域の周辺海域はかなり強く汚染されている可能性が高い」
と言えるのではないかと思います。
世界で最も薬を多く消費している国のひとつは日本であり、あるいは、東アジアの各国であるわけですが、イギリスと同じ調査をすると、日本周辺の海の生物の状態は大変なことになっているのではないかと思われます。そして、漠然とした予測をすれば、エクセター大学の研究者たちの「現状と未来の予測」と同じことが多くの主要国周辺の海域で起きると思われます。
つまり、「魚類と海洋生物の著しい減少」です。
オスがメス化していっている上に、メスも不妊化しているのでは、種が増えていく道理がないのです。
もちろん、イギリスではすでに起きていても、日本でそれが起きているのかどうかは分かりません。
しかしイギリスの研究が正しければ、日本も同じだと思いますので、同じような「魚類の個体数の減少」が多く見られていくのではないでしょうか。
避妊薬の他に、「海に流出することでもっと悪い影響を海洋生物」に与えていると考えられるものに抗生物質があります。詳しく書かずとも抗生物質のように「微生物を殺す作用を持つ薬」が、「微生物で成り立っている自然界に流出」して「良い訳がない」ということは、何となくご理解いたただけるのではないでしょうか。
次回に続く
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