診察室からコンニチハ(126)

☆その後の日本では、和田心臓移植から再び心臓移植が開始されたのは31年後の1999年2月28日におこなわれた大阪大学チームによる心臓移植でした。和田教授の、免疫学を無視したと取られてもやむをえない強引な心臓移植手術の強行が日本の心臓移植、ひいては臓器移植の遅滞を招いたとの批判もあります。臓器移植という医療は、社会風土、倫理、人生観、宗教、博愛精神、などさまざまな要素から成り立っており、この心臓移植一件で、臓器移植の遅滞を招いたと結論付けるのは議論の余地がありますが、少なからず影響を与えたのは事実でしょう。
☆1968年 - 米国でX線CT装置が開発されました。
CT装置を開発したのはハンスフィールドですが、当時のハンスフィールドは英国の EMI会社の技術者であり、そこの中央研究所でパターン認識などの研究に携わっていました。1967年、ハンスフィールドは外部から測定したデータから物体の内部構造を知るという研究を行っていました。いわゆる「画像再構成」です。そのとき使用した線源は γ 線源でした。データ収集に何日間も要し,断層像の再構成には大型コンピュータを使って 2 時間以上かかったとい います。やはりγ線源では線量不足でした。そこで、線量を増やすためにX線管が使われました。当時のCTスキャナは、EMIスキャナと呼ばれていました。
イギリスの EMI社で 1972年に実用化されたことから,こう呼ばれたのです。現在では種々の改良が施され,頭部のみならず,全身臓器の診断を行える機種も開発されています。
【豆知識】
EMI社に所属していたビートルズの記録的なレコードの売上が、CTスキャナを含めたEMI社の科学研究資金の供給元だったとも考えられるため、CTスキャナは「ビートルズによる最も偉大な遺産」とも言われています。
☆1970年 - 風疹の最初のワクチンが開発されました。
☆1972年 - 抗がん剤シスプラチンの臨床試験が始まりました。シスプラチンは物理学者バーネット・ロゼンベルグ 博士(米国、1926-2009)が1965年に大腸菌への電場の効果を見るために、培地中に白金電極を立てて電圧をかけたところ、大腸菌が白金電極周辺に糸状に変化しているのを見つけ、電場の効果ではなく何らかの化合物が大腸菌に影響をもたらしたとのセレンディピティ(偶然に思いがけない幸運な発見をする能力)から研究を進め、1971年にそれがシスジアンミンジクロロ白金化物であることを突き止め、シスプラチンと命名しました。当初のvivo(生体内) 実験では大きな腎毒性のために臨床への応用は断念されかけましたが、投与前後の生理食塩水投与で腎毒性が軽減されることがわかり、1978 年に FDA(US Food and Drug Administration) から抗がん剤として認可されました。
次回に続く
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