診察室からコンニチハ(135)

さて、話は再び医学史に戻ります。
☆1996年-国際エイズ学会にて逆転写酵素阻害剤とプロテアーゼ阻害剤を併用することによって、劇的に治療効果が上がったことが発表され、*HAART療法の有効性が認められました。これにより不治の病と恐れられたエイズにも明るさが見えてきました。
*HAART療法(ハートりょうほう) (highly active anti-retroviral therapy) とは、複数の抗HIV-1薬を各人の症状・体質に合わせて組み合わせて投与し、ウイルスの増殖を抑え後天性免疫不全症候群 (AIDS) の発症を防ぐ治療法である。用語的には「Therapy」と「療法」とで意味が重なってしまうため、単に「HAART」あるいは「ART」(anti-retroviral therapy)と呼ばれ、2007年以降は後者のほうが正式に使われている。また、複数の薬剤を組み合わせることから、以前は俗称的にカクテル療法とも呼ばれていた時期がある。
☆1996年-ロスリン研究所でイアン・ウィルムットらにより、体細胞クローンの*子羊ドリーが誕生しました。このクローン情報は世界中の識者に対して倫理的な物議を醸し出しました。人間にまで応用するのか、そうなると人間性の尊厳はどうなるのか?
*子羊ドリー(Dolly、1996年7月5日 - 2003年2月14日)は、世界初の哺乳類の体細胞クローンである雌羊。スコットランドのロスリン研究所で生まれ育ち、6歳で死ぬ。ドリーの誕生は1997年2月22日に発表された。
もちろん宗教会では、非難が集中しました。
「神への冒瀆である」と。
それ以外にも人類学者や多くの会派からクローン研究に対しては反対する意見が圧倒的でした。以下その論旨をまとめてみます。
☆1999年-ネイチャー誌に、ドリーは生まれつき細胞内の染色体にある*テロメアが短くなっているので生まれつき老化しているという研究が発表された。
*テロメア : 細胞の核にある染色体の末端領域のこと。単純な反復配列からなり、細胞分裂のたびに短くなり、細胞は50~60回しか分裂できない。反復数が次第に減少することが細胞老化に関係し、生体の老化との関連が示唆されている。また、テロメラーゼという酵素によって再び伸長される。
遺伝情報の元が6歳のヒツジであり、したがってドリーは誕生時に遺伝子が既に6歳であったと推測されたのです。しかしながら、ジョン・トーマスは殆どのクローン動物が実際は通常の長さのテロメアを持ち、連続でクローンをする度にテロメアは実際には長くなっていく事を指摘しています。
この徴候は2002年1月、ドリーが5歳の時に報告されました。異常な若さで関節炎を発症し衰弱していったのです。これは生まれつきの老化によって説明が可能ですが、リバプール大学獣医学部のダイ・グローヴ=ホワイトは、
「関節炎はクローンのせいと言えるし、せいではないとも言える。我々の知る限り、ドリーはゲートを飛び越えた時に足をけがし、関節炎を悪化させた」と述べています。
この関節炎によりドリーを作り出した形式はクローンは哺乳類に適していないのではないかと心配され、現状ではヒトのクローンを作る実験は未熟で倫理的でないということが専門家のみでなく全体の合意を得ています。
この方法でのクローンの支持者達は、この技術は改良すれば良いだけであると反論していますが、応用発生学の初歩の理解が非常に限られており、多くの遺伝子の活性コントロールを科学者は出来ない、すべきでないとする主張がなされてもいます。多くの専門家でない人たちも、このためにあらゆる形のクローン産生が倫理的に間違っており禁止すべきであると規定し始めています。
次回に続く
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