診察室からコンニチハ(137)

☆1998年-ウィスコンシン大学のジェームズ・トムソンらにより、*ヒトES細胞株の樹立に成功しています。
 *ヒトES細胞株
ES細胞とは胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう)と呼ばれ、英語では(embryonic stem cells)と呼称され、動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞細胞株の事で、英語の頭文字をとって、ES細胞(イーエスさいぼう、ES cells)と呼ばれています。受精後5 ~7日程度経過したヒト 胚の一部から取り出された細胞を、特殊な条件下で培養して得られます。
○マウスES細胞は1981年に樹立されています。
  ES細胞の樹立方法 受精  【ヒトES細胞株の重要性】
(1)細胞治療に用いるために必要な機能をもつ細胞の供給が可能となります。
(2)組織工学による人工組織・臓器作製のための多種類細胞材料の供給も出来るでしょう。
(3)基礎研究や創薬研究に必要なヒト細胞の供給も得られます。
【ES細胞が組織幹細胞に比較して有利な特質】
「多分化能」を有していて、
• 胚と胎児の発生初期に作られる細胞種など、成体内で組織幹細胞や前駆細胞から補充されることがない(起きにくい)細胞へ分化させることが可能で、治療に必要な細胞だけが供給されやすい利点があります。
• 神経細胞の中で初期に分化するもの:ドーパミン神経、運動神経、感覚神経など、細胞治療に必要な神経細胞が作られやすいとも言われています。
• 心筋細胞、インスリン分泌細胞
• 多種類の組織幹細胞を必要なだけ作り出して利用することも可能になりそうです。神経系幹細胞、間葉系幹細胞、造血系幹細胞など増殖能が限られている組織幹細胞を大量に供給することができる可能性もあるのです。
【ES細胞を使った細胞治療を目指す研究の現状】
• パーキンソン病
ヒトやサルES細胞からドーパミン神経への分化誘導が可能です。
ヒトやサルES細胞からのドーパミン神経細胞を疾患モデル動物へ移植する前臨床研究により病態改善、腫瘍形成なし、などの良い結果のみを求めやすいとの報告もあります。
• 脊髄損傷
ヒトやサルES細胞から神経幹細胞/前駆細胞、運動神経、グリア細胞などへの分化誘導が可能となりそうです。
グリア細胞や神経前駆細胞の疾患モデル動物への移植による治療効果の報告も多くなっています。
• 加齢黄斑変性、網膜色素変性など眼科疾患では、ヒトやサルES細胞から網膜細胞への分化誘導で治療に導きやすくなります。
ヒトやサルES細胞からの網膜細胞を疾患モデル動物へ移植して病態改善される期待もあります。
• 心筋梗塞
ヒトやサルES細胞から心筋細胞への分化効率を上げる研究が進行中で、疾患モデル動物への細胞移植で心筋組織に取り込まれて心筋機能が向上されます。
• 糖尿病
ES細胞からインスリン分泌細胞への分化誘導の研究は進行中です。
カリフォルニア州のベンチャーがヒトES細胞から膵島細胞への分化に成功(幾度か失敗を重ねていましたが今度は本当らしい)。
透過性膜カプセル中に封入して移植すれば免疫拒絶の回避が可能かもしれないとの研究もあります。
• 肝硬変など
ES細胞から肝細胞への分化誘導の研究は進行中です。
次回に続く
関連記事

コメント