診察室からコンニチハ(138)

この頃、イマチニブ、リツキシマブ、ゲフィチニブなど、がんの分子標的治療薬の臨床試験が相次いで始まっています。分子標的治療薬は悪性腫瘍の化学療法に革命的変化をもたらしています。
*分子標的治療薬とは
癌(がん)細胞などの増殖に必要なたんぱく質などの分子を標的として、癌細胞のみを破壊する薬剤の総称です。分子生物学によって解明された遺伝子情報を活用して開発されたものです。従来の抗癌剤が癌細胞とともに正常な細胞も損傷させるのに対し、分子標的治療薬は癌細胞にのみ作用するため、抗癌剤に比べて副作用が著しく少ないと言われています。
[補説]グリベック(白血病治療薬)・ハーセプチン(乳癌治療薬)・イレッサ(肺癌治療薬)など、日本でもさまざまな分子標的治療薬が使用されるようになってきましたが、アメリカなど海外で次々と承認されている新薬の多くが、日本ではすぐに使えない状況にあり、治験制度の見直しを求める声が高まっています。
しかし、それ以上に遺伝子操作が必要となる分子標的治療薬は極めて高額な医薬品が多く、保険適用薬となると医療費財政は破綻してしまうかもしれないとの危機感も一部に存在しています。
実例を挙げてみますと、イレッサを1日1回250mg経口投与すると薬価だけで5323.9円もするのです。
1ヵ月30日で15万9717円の値段となります。それ以外にも肺がん治療薬のオプジーボになると1ヶ月で300万円の薬価となってしまいます。より高度な最先端医療に医療費は膨大する一方なのです。国家経済が、個人負担が、どこまで持ち堪えられるかが問題となってくるかもしれません。
我が国には高額医療費の限度額制度があって、月間10万円とか20万円以上の個人負担は公的資金で補充される仕組みになっていますが、それさえも年々その上限額が上げられ年収が1160万円を超える人は、もし月間3000万円の医療費がかかってしまうと一ヶ月の自己負担額の上限が55万2700円まで上げられてしまっています。そうなると税引き後の手取り額は700万円を超える程度ですから、殆どは医療費に費やされてしまいます。もちろん税金の医療費控除と云う制度もあるのですが、それにしても癌などで最先端医療を受けるとなると多くの家庭で台所は火の車になってしまうに違いないでしょう。
そうなるとアメリカなどの超富裕層が存在する国を除けば、最先端医療の享受は受けにくい社会情勢となってしまうのでしょうか?
事実、臓器移植などは渡米してアメリカなどで受けている事が多いのです。時には億単位がかかる臓器移植の医療費に一般家庭では対処できず、街灯などで募金活動をしている光景を目にする事も稀ではありませんね。
そんな革新的な最先端医療の高額化が、時に富による命の格差となるのか危惧されてなりません。
次回に続く
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