診察室からコンニチハ(157)

環境破壊が人体に悪影響を与えている、もっと大きなデータがあります。科学的な実証は未だ不十分ですが、ただの推論と云うには過小評価だと思うのです。それは人体と云うよりは、精神に与える障害です。世界各国の自閉症および広汎性発達障害の発生率を例に見て行きましょう。
アメリカの分子生物学者たちは、1000人以上の被験者の遺伝子を検索し、自閉症に関連するとおぼしき数百のデノボ変異(親から受け継いだのではなく、新しく発生した変異)を特定しました。さらに、遺伝子と環境の相互作用を仲介する要因である*エピジェネティクス(私たちの体は皮膚、胃、肝臓など様々な組織から出来ており、これらは別々の細胞で構成されています。どの細胞も基本的には同じ遺伝情報を持っているのに、別々の細胞になれるのは、使う遺伝子と使わない遺伝子に目印をつけているからです。エピジェネティクスとは、これらの目印を解明する学問で、皮膚から胃ができないことが象徴するように、エピジェネティックな目印の特徴は、一旦つくと、容易にははずれないという事です)について、より自閉症の発症リスクが高まる環境要因のリストは日ごとに多くなっています。つまり日常で使われる多数の化学物質が、関与しているのです。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の最近の概算では、アメリカの68人の児童のうち1人は自閉症であり、数百万もの家族が数十年後の将来を案じて眠れない夜を過ごしていると想定されています。
2008年の統計によりますと、自閉症+広範性発達障害の有病率は1万人あたり韓国が1位で190人前後、2位が日本で180人前後、3位が英国で120人前後、4位が米国で115人前後、5位がスウェーデンで80人前後となっています。
一方、我が国の2017年の統計では、発達障害の子供は20年間で7倍増の9万人を超えたとされています。
これら自閉症児は、かつて原因が分からないまま、*母原病などと言われた時代もありました。
*【母原病】
子どもは母親がつきっきりで育てるべきという説が世に広がり出したのは、『保育園義務教育化』(小学館)によりますと、3歳児検診が始まった1961年あたりだと言います。「3歳児神話」の大キャンペーンが始まり、子どもの健全な成長のために、幼少期は専業主婦がつきっきりで育児をすべきであると主張されました。
おそらく、そこへ乗っかるように1979年に登場したのが、小児科医・久徳重盛氏の『母原病(ぼげんびょう)』(サンマーク出版)。「現代の子どもの病気は60%が母原病=母親に原因がある」。そう謳った同書は続編も出版され、シリーズで100万部を超えモンスター級のロングセラーになりました。しかし現在では、〈母原病は「自分がこう思った」という個人の雑感でしかなく、科学的根拠はない〉と認識されています。
つまり個人の医師の独断と偏見でしかなかったのです。
次回に続く
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