診察室からコンニチハ(162)

3.シナプス形成と子どもの発達
中枢神経系としての脳の機能は、その部位により中枢機能が分業化していることは以前から指摘されています。要約すれば、後頭葉には外界との接点となる感覚受容器の中枢が局在し、前頭葉には高度の精神機能としての思考や意志決定などの中枢が局在しています。
このような脳の機能の局在性の中で、140億とも160億ともいわれれる脳の神経細胞は、個々に独立して機能を発揮しているのではなく、お互いにつながりを持ち合ってその機能を総合的に発揮しているのです。それぞれ異なる機能を持つその神経細胞がお互いつながりを持ち、回路を形成するとき、言い換えればシナプスを形成するとき、成人に達すると、1個の神経細胞は他の1000個の神経細胞とつながりを持つようになることが指摘されています。この神経細胞の回路であるシナプス形成が、脳の機能の発揮となると言われているものです。
シナプス形成という観点での脳の成熟にはいくつかの節目があるといえます。それはおおよそ3歳前後、6歳前後、10歳前後の3箇所に変曲点があるといわれています。まず、成人(20歳)のシナプス形成を基準として考えると、それを100%とするならば、最初の変曲点である3歳頃には既におおよその60%が形成されており、次の変曲点である6歳頃にはおおよそ80%のシナプスが形成されていると指摘されています。さらに、その次の変曲点である10歳頃には95%以上のシナプスが形成されているといえるでしょう。言い換えれば、3歳で大人の6割、6歳で大人の8割、10歳でほぼ大人に近いところまでシナプス形成は育ってきているといえるのです。
以上のように、シナプス形成についての先行研究の内容を要約して述べてきましたが、子どもの発達はこのシナプス形成と、そのシナプス形成のために伸びていく神経細胞の軸索の髄鞘形成に左右されるということです。インプリンティングのように、人間の育ちにも、適時、適切、的確な関わり方があるとするならば、それは、以上のようなシナプス形成や髄鞘形成に合わせた教育の在り方ということでしょう。その様な視点からの先行研究からは、以下のようなことが考察されます。
このとき、先に述べた髄鞘形成の個人差について言えば、それは髄鞘形成にかかる時間の長さや、髄鞘形成の開始や完成の時期などの時間的な違いなどであり、基本的にはどの神経細胞にも髄鞘は形成されるものです。したがって、個人によって髄鞘ができたりできなかったりすることはありません。しかし、シナプス形成における個人差は、その開始や完成の時期などや、それにかかる時間の長さや早さだけでなく、できる回路そのものが人によって異なる回路もあるということです。言い換えれば、シナプス形成としてつながる回路のでき方が一人ひとりの育ち方であり、どのような回路ができるかが、一人ひとりの精神活動としての人格、性格、感情、思考、行動等を左右するものといえるでしょう。シナプス形成はすべての人間にすべて同じようにできるのではなく、個人によって異なるものであり、その個人差が、その人間の個性となるとも言えます。
次回に続く
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