診察室からコンニチハ(164)

現在、厚生労働省の難病指定疾患は306になりますが、幾つか代表的なものを上げますと、
 ①筋萎縮性側索硬化症
 ②パーキンソン病
 ③重症筋無力症
 ④多発性硬化症/視神経脊髄炎
 ⑤全身性アミロイドーシス
 ⑥悪性関節リウマチ
 ⑦バージャー病
 ⑧全身性エリテマトーデス
 ⑨皮膚筋炎/多発性筋炎
 ⑩全身性強皮症
 その他、多数です。
 ここで、小児発達障害のひとつ
自閉症スペクトラム(ASD)の発症について、考察していきたいと思います。
ASDには、非常に幅広い症状があります。例えば、社会的行動や対人コミュニケーションの難しさ、学習障害、反復行動、強いこだわり、刺激に対する過敏な感覚などです。これらに効果的な治療方法を確立するため、これまでさまざまな研究機関が自閉症関連の遺伝子の特定を試みてきましたが、その症状の幅広さのために候補遺伝子は数百以上にも上り、その解明は困難な壁に突き当たっていました。またASDには、一卵性双生児の一致率の高さ、そして遺伝子の共有率が高いほど発症率が高いことから、遺伝的要因が強いと考えられていました。例えば両親が同じ兄弟は、母親だけが同じ兄弟、または父親だけが同じ兄弟と比べると、発症率が高くなる傾向にありました。この事から、自閉症は多くの遺伝的な要因が複雑に絡み合って発症するものだと思われていました。
一方で、自閉症患者は90年代から増加の傾向にあり、遺伝だけでは説明できない事実もありました。多くの遺伝子を共有しているにもかかわらず、家族のメンバーのなかで単発的に自閉症を発症するケースも多くあったのです。少なくともこのような孤発性自閉症の原因の一つは、「ジャンクDNA(ガラクタDNA)」と呼ばれる機能が特定されていないDNAにあるのではないかと推論されていました。つまり、DNA領域にある遺伝子発現調節機能の突然変異にあるのかもしれないとの考えかたです。
そしてプリンストン大学の研究チームにより、これまで「ジャンクDNA」と呼ばれていた膨大なゲノムのなかに、自閉症スペクトラムに関連するとみられる突然変異のゲノムが発見されたのです。途方もない量のゲノムから自閉症の機能的影響を解読することを可能にしたのは、人工知能(AI)の一種であるディープラーニングです。この手法によって、自閉症に限らずすべての疾患において「非コードDNA」の突然変異による影響を予測・検出するフレームワークとなり得る可能性が見出されたのです。
「非コードDNA」とは、
真核生物(動物、植物、菌類、原生生物など、身体を構成する細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物)のゲノムの大半はタンパク質をコードしていない非コードDNA領域で占められています。この領域には、遺伝子の発現、DNA複製の開始、遺伝子増幅や改変を引き起こす組換えのホットスポット、DNA脆弱部位、染色体凝縮、染色体分配など、染色体上で起こるすべてのイベントを制御、維持する機能を有しています。ゲノムの秘境でもあり、未だ詳細な解析がなされていません。
次回に続く
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