診察室からコンニチハ(166)

また多くの医師は、すべての自閉症患者が同じ症状をもつわけではないという理由から、一般的な診断を下すのを避ける傾向にあります。これに対して、共著者のプリンストン大学ルイス・シグラー総合ゲノム研究所のチャンドラ・テスフェルド博士は、「遺伝子学的には同じように見えます」と説明しています。これらの研究成果は、自閉症スペクトラムの診断に役立つことになると言っていました。
これまでの研究で「非コードDNA」領域の分析は、どの突然変異が機能的であるのか、さらに、そのどれが自閉症スペクトラムの表現型に寄与しているか認識するのは非常に困難でした。
今回、使用されたディープラーニングのアルゴリズム(コンピュータで行う計算方式)は、部分的な「非コードDNA」から、生物学的に関連性のある部分の識別方法を学習しています。さらに、その部分的な「非コードDNA」が、どのように遺伝子発現を変化させるかを予測し、それぞれの突然変異を機能的影響力の順にスコアを割り当てたりも出来るのです。
また、この研究ではアルゴリズムの正確性を検証するため、いくつかの「非コードDNA」変異の影響を実験しています。ディープラーニングで予測された機能的影響力の高い「非コードDNA」の突然変異を細胞に組み込み、遺伝子発現の変化を実験的に確認することで、このモデルの正確性を裏付けたのです。
「この手法は、あらゆる疾患を解析する上での土台を提供するでしょう」と、トロヤンスカヤ博士は言っていました。「疾患の根底に横たわる、あらゆる原因を理解するための革新的技術なのです」とも、説明されています。
神経発達障害のひとつである自閉症スペクトラムは、1990年代から世界中で増加傾向にあります。8歳児を対象にした米国疾病管理予防センター(CDC)の統計では、2004年の調査で166人に1人の割合だった自閉症は、2018年の調査では59人に1人になっています。
もしかすると、われわれの社会に蔓延する環境的な何かが「非コードDNA」領域の突然変異を促しているのかもしれません。人間には処理が難しい膨大なデータ解析を必要とするこのような疑問も、いずれAIにより明らかにされるのでしょう。
研究者らは、この研究で使用されたのと同じ手法を通し、「ガン」や心臓病における「非コードDNA」の変異が果たす役割を探ることができると説明しています。この研究は学術誌『Nature Genetics』に掲載されております。
次回に続く
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