診察室からコンニチハ(167)

これらゲノム編集の革新的な解明で、これからの私たちの身体や精神は、限りない健康を保つ事ができるのでしょうか?
まずは、最先端の「ゲノム編集の概要」から説明してみます。
 今から10年ほど前に登場した「ゲノム編集 (genome editing)」は、旧来の遺伝子組換え技術とは原理の異なった新しい遺伝子改変技術です。
【旧来の遺伝子組換え技術とは】
人類は農業開始以来、効率良く食糧を確保するために様々な育種技術を駆使してきました。その結果、今日栽培されている作物のほとんど全てが、原種(野生種)とは程遠いものとなっています。従来の育種では、10年ほどかけて、多収性、高品質、矮性、耐病性、耐虫性、除草剤耐性、耐冷性、早晩性といった優良な形質を持つ新品種が生み出されてきました。これらの新品種は、当然、新たな組み合わせの遺伝子を持ち、遺伝子産物として新たなタンパク質を持っています。つまり、従来の育種においても遺伝子組換えにおいても、本質的に、新品種が元の品種と比べて「何らかのDNAが変化したもの」である点では違いはないのです。
これら旧来の遺伝子組換え技術では、遺伝素材は同一の生物種か、特定の近縁種に限られていました。この技術では、改良された表現型(形質が現れる遺伝子)しかわからず、遺伝子の変化については未知でした。しかし、新しい遺伝子改変技術では、導入遺伝子の機能と表現型の関係が明確になってきました。この点はむしろ、より正確でかつ幅広い改良を計画的に進める上で有利に働くと考えられます。
つまり、生物の種に関係なく遺伝子の素材となりうるということです。
結論から言えば、表現型を人間が変えていくことに関しては、本質的に従来の育種(農産物では)と変わりはなく、遺伝子組換え技術に固有のリスクが生じるものではないと考えられます。リスクとして検討すべき点は、遺伝子組換え技術そのものではなく、どのような生物にどのような遺伝子を導入し、その結果、何が新たに作出されたのかということにあります。場合によっては、その結果を予測することが非常に難しいことがあることも考慮しなければなりません。
米国では、「バイオテクノロジー規制は、製品を作製するプロセスではなく、製品そのものの特性とリスクに注目して実施すべきである」という考え方が表明されています。ここでの製品そのものの特性とリスクの判断には、OECDでいう「ファミリアリティー」の概念に基づき、遺伝子ごと、作物ごとの個別具体的な検討が必要であると考えられています。「ファミリアリティー」とは、安全性を判断するための十分な利用の経験と知識の蓄積のことです。例えば、ジャガイモなどの農作物の遺伝子組換え体では、長い食利用の経験に基づき、その特性やリスクについて把握することは容易ですが、これまで利用経験のない、例えば、環境浄化や有用物質の生産を行う新しい種類の遺伝子組換え体については、そのリスクについて慎重に判断していく必要があるとする考え方です。
次回に続く
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