診察室からコンニチハ(169)

【後期高齢者の運転免許】(2)
つまり本人が一人で来ても、家族と来ても、認知症診断にとって要(かなめ)と言っていい「生活の困りごとを包み隠さず話してもらう」ということは、期待できないことがよくあるのです。唯一の例外は、「お願いだから、危ないからもう運転しないで...。」と家族が切に 願っている時で、この時は、かつてあった色々なエピソードを伝えてくれるのでスムーズです。
逆恨みされやすい。
時に書類を発行した患者さんから後に「免許ダメになっちゃったよ。先生、悪く書いただろう!」とすごまれたり、逆恨みをされることは、実は珍しいことではありません。
はっきりと認知症の診断を受け、数年前から認知症の薬を飲んでいる方でさえ、免許を取り上げられることに納得ができず、頻繁に医院を訪れては恨みつらみを言う方がいるのです。事故を起こしてしまった際の責任の重さなどの正論を懇々と説くのですが、理解力が低下することが認知症の症状の一つであるため、糠に釘という心境てす。その場では渋々納得され たように見えても、数日後に忘れてもう一度来院...電話が何度もかかってくる...ということが起きており、医療機関としても対応にかなりエネルギーを費やすこととなっています。
どちらとも言えない...というあいまいな項目に丸をつけると、その時点では一応免許は 更新されますが、なんと半年後に再び同じ書類が来て、患者さんとお会いすることに。問題 の先送りに過ぎないのです。
免許更新のための認知症診断は、上に書いたような事情でいたって不完全で心もとないのが実情。医師は、限られた情報しかない中で、頭を悩ませながら書類を作成します。本人から車という貴重な交通手段を取り上げてしまうことの心苦しさ。判断力が落ちている方が人身事故を起こした時には取り返しがつかないという恐れ。不十分な情報の中でどちらか一方を選ばなければいけないということは、書類作成をする医師にとってかなりストレスフルな作業です。これを初めて会う医師に丸投げすることは、システムとしては問題です。
そういった意味から考え合わせると、一般内科医は【後期高齢者の運転免許】の診断書には、かかわるべきでは無いと思います。すなおに専門医に紹介状を書くべきでしょう。
では、認知症専門医ならどうするかは、次回のブログで書いていきます。
次回に続く
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