診察室からコンニチハ(170)

【後期高齢者の運転免許】(3)
専門医なら、認知症の深い臨床経験と診断能力で容易に書けるかというと、そうではないと思います。確かに長谷川スケールが30点満点中の20点以下だからとか、画像上で側頭葉の海馬萎縮が著明であったとかの理屈づけは出来るかもしれません。それ以外の知能検査も幾つかありますので、それらを丹念に実施して患者さんとご家族に納得してもらうというのが、一般的な考え方でしょう。
でも、それだけでは何か本質的な見落としがある様な気がしてなりません。昨今は高齢者の運転事故が相次いでいるので、それが認知症という病名に結びついたのでしょう。
でも、何か少し安易な発想に思えてならないのは、私だけでしょうか。何か大きな社会問題化する事故が多発すると、「認知症」であるとか、「睡眠時無呼吸症候群」が原因であるとか、マスメディアを通じて単純な発想が常に一人歩きしてはいないでしょうか?
もちろん、「認知症」や「睡眠時無呼吸症候群」が、交通事故を誘発しやすいのは事実でしょう。
それを否定するつもりはありません。しかし、問題の本質は「運転の適応性」があるのかを問うべきでしょう。医学的に「認知症」とは判断できなくても、適応性のない人は幾らでもいるのです。
例えば、「煽り運転」で事故を繰り返す人と、「認知症」の高齢者と、どちらが「運転の適応性」に欠けているかは簡単に結論づけられないと思うのです。
安易に高齢者だからと言って、「認知症」という概念で括りつける事に疑問を呈したいのです。
確かに高齢になると、瞬発力や身体機能が低下するのは自然のなりゆきでしょう。だからと言って、「認知症」という概念だけで、運転免許証の返納を論議すべきではないと思うのです。
基本的には、繰り返しますが「運転の適応性」に注意を払うべきなのです。「認知症」がなくても、運転すべきで無い人は幾らでもいます。何度も交通事故を起こす人は、若くても「運転の適応性」に欠けているので免許証は返納すべきでしょう。
「それでは、高齢者の運転免許証はどうするのだ?」
話の結論が全くわからないとの、ご叱責を受けることになるでしょう。高齢者の運転能力が低下しやすいという傾向は考慮しても、ただ認知症というだけでなく、それも視野に入れながら、一人の人格として人間性を重んじながら「免許証の返納」を、ご本人、家族を踏まえて相談すべきだと思うのです。医師が安易に診断書を作成するのではなく、あくまでも自主的にご本人と家族が返納するか否かの意思決定を行うのが最良かと思います。
それらの判断材料として、認知機能の診断がなされるべきだと思います。ただ私の考える簡単な判断材料として、多くの方に参考にして頂きたいのは、「車庫入れ」です。
年々「車庫入れ」時にハンドルの切り返しが多くなっているとか、接触事故の回数が頻回である事は、「免許証返納」の大きな基準になると思います。
次回に続く
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