診察室からコンニチハ(172)

次に、代表的な染色体疾患の幾つかを紹介しておきます。
1)性染色体異常
(1)色覚異常: X染色体の劣性遺伝で受け継がれます。発端者の母親は変異の保因者(正常のXXではなく、x Xと表されます)として、妊娠ごとに変異を伝える可能性は50%です。xYの男性に遺伝していきますので、色覚異常の多くは男性にみられます。
(2)血友病: AとBがあり、Aは、血液凝固因子の8番目(第Ⅷ因子)の遺伝子異常で、もうひとつのBは、9番目(第Ⅸ因子)の遺伝子の異常による血友病Bです。
原因である遺伝子は、性染色体のX染色体の中にあり、男性ではXYの性染色体を持っているのですが、この男性のX染色体が欠如している場合に発症(伴性劣性遺伝)するのが、血友病です。
  (3)ターナー症候群 : この疾患は、母体のなかで受精卵として発生をしていく段階で、染色体の分裂や合成に異常が生じることで起こります。
具体的には、女性の細胞には本来2本備わっているはずのX染色体の1本が完全に、または一部が欠けてしまうことが原因です。
しかし、なぜ異常が生じるのか、詳しい原因についてはまだ解明されていない部分が多い病気です。
ターナー症候群の特徴としては、低身長で肥満体型であることが多く、首の皮膚が伸びて首に翼があるように見える(翼状頚)や肘が外反する(外反肘)さらに、女性性器の発育不全と月経異常などの性腺機能不全などが挙げられます。
(4)クラインフェルター症候群 :性染色体異常が原因の病気の一種で、男性であれば性別を決定するための染色体は「XY」の組み合わせです。しかし、クラインフェルター症候群ではこの組み合わせに異常が生じ、「XXY」を有することで病気が引き起こされる割合が多くみられます。つまり、正常の染色体よりX染色体が1本だけ多いのです。この性染色体を持つ男性は、高身長・やせ型・長い手足という見た目をしている方が多いといわれています。幼い頃に病院で診断される場合もありますが、気付かれず成長した場合は、男性不妊症を契機に発見されることも多い病気です。
約1,000人に1人の割合で発生すると考えられており、日本においては6万人以上の方が罹患しているという報告があります。
2)常染色体異常
代表例としては、ダウン症候群が挙げられます。常染色体21番目の過剰(分離した1本の染色体または別の染色体への転座のいずれ)が、原因とみられています。
症状としては、全身各種臓器にみられ、成長面や発達面にも及びます。共通する特徴として、全体的に平坦な顔貌、厚い唇、大きな舌、つり上がった眼等があります。成長発達面の症状として、筋力や言語発達の遅れがみられます。また、言葉も不明瞭で、語尾だけを声にだしたり、抑揚のない話し方をしたりする場合もあります。高齢出産での出産率が上がるのも、この病気の特徴です。
ところで、これら染色体異常の疾患は、ゲノム編集の進歩の中で予防と対策が着実に講じられていくのでしょうか。もしかすると、編集ミスによる予想外の生命体を産み出してしまう危険性も多いのではないかと思われます。それにより、考えられない混乱が発生する覚悟が必要かもしれません。これまでの医学の過程を振り返っても、どれだけ貴重な生命が失われているか?
例えば、抗がん剤治療の歴史の中でも、薬による副作用でかなりの人たちが、その生命を落とした事かを顧みれば、ゲノム編集の過程でも同じような試行錯誤は繰返されると考えるべきでしょう。
それは、新しい科学や医学の進歩過程で、避けて通れない道なのかもしれません。
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