診察室からコンニチハ(175)

しかし、最も危惧される問題として、人工知能の活用上データの集積が最も重要となるのが、高速に大量に産生される生データを入手し、翻訳・解釈を実施することです。それらのデファクトスタンダ ード(近年の技術革新による世界基準、GoogleやWindowsOSのようなもの)を握った企業・団体が、すべての市場を占有する危険性が存在します。今後 、IT 企業による医療・ 健康分野への参入、人工知能による融合が益々進んだ場合、医療・健康分野は 、IT 企業に席捲される可能性があります。医療の専門家が存在しなくても、 情報工学の専門家だけでデータの翻訳・解釈が可能となるためです。限りなく医療健康サービスの費用は、低減化される可能性がある一方、患者・利用者側の観点からは、利用者が進んでみずからの医療健康データの提供を行うことで、 データから得られるサービスを無料で、あるいは非常に安く享受できる可能性があります。これは既存の IT サービス利用と同様で、米国 IT 企業が日本および世界の IT 市場を支配してしまったように、医療の人工知能利活用においても米中の IT 企業が日本市場を寡占化してしまうことが懸念されます。医療健康情報は、一度電子化されると容易に転送可能で、国境は存在しません。この構造的な枠組みの問題は、国際的な動向を踏まえ、国策としての対応が急務となるかもしれません。
総務省の調査によると、AI の利活用が望ましい分野として、高度な診断、自動運転、救急車等の緊急車両の配備などが上位に挙がっており、市民の AI の医療応用の期待値は非常に高いと報告されています。また、日経メディカルの調査では、医師も、もし AI によって診断が補助される時代が来た場合は 3/4 以上の医師がそれを用いたいと返答しています。同時に確定診断の責務を AI に負わせることはできないという現実的な意見も出ています。
上記の期待や予想に反して、現状の人工知能の延長では確定診断を行うことはできないとする意見も根強いものがあります。
その理由として、医学特有の事情があります。それは、①人間の持つ情報量が多すぎること、②正解診断が確実に明確でないこと、③膨大な知識が医学の履行には必要なこと、④多くの意思決定を基に初めて治療方針が決まること。この 四つは、医学の本質でもあり解決が現実的には不可能と思われます。
次回に続く
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