診察室からコンニチハ(177)

最先端の科学と医療に接して、私たちの未来は幸福であるか否かを私は常に自問自答していました。個人的な結論としては、すべては人類の叡智にかかっていると思います。その宗教観、民族主義、権威主義、人種偏見、市場経済という妄想、さらに利権的な排他主義。
あまりにも多くの価値観と、偏見に私たちは晒(さら)されています。
過去もそうであったように、未来も時代のもつ価値観は、多くの変遷を経ながらも私たちの幸福を奪うかもしれません。最先端の科学と医療が、地球上の全ての人たちに恩恵を与えるかというと、大きな疑問が残ります。現実の地球上でも、食料、医療、環境その他で、あまりに格差が見られます。
国別の平均寿命を比べても、実に大きな違いがあります。
世界一の長寿国は、我が国の84.2歳(2018年)ですが、アフリカ大陸には50歳に満たない平均寿命の国が多数あります。医療水準も日本がトップレベルです。そんな我が国では考えられない、感染症や栄養不良で、若い命が犠牲になっている地域は無数にあります。GDP(国民総生産)が世界一のアメリカ社会では、市場経済という化けものが跋扈(ばっこ)して、貧富の格差がどんどん広がっています。医療水準ではなく、医学水準は世界一のアメリカですが、その恩恵に預かっているのは人口3億3千万人の2/3ぐらいの人達と言われています。また世界の一部の地域では、中世的な独裁政治が続いている場所さえあるのです。
このように地域格差が著しい世界の現状で、ゲノム編集やAIの変革が、どのように利用をされてしまうのでしょうか?
政治的利用、利権的利用、宗教的利用、ある特殊な階層が自己の繁栄目的だけで、最先端の科学を悪用する危険性は限りなく広がっています。結局、世界の平和が何とか維持できるのは、パワーバランスしかないのでしょうか?
世界平和を願って、「国際連盟」から「国際連合」と名を変えて人類全体の幸福を祈り続けていますが、そんな祈りはまるで実現しそうにありません。より巨大な武器(核ミサイルのように)は、より巨大な殺人兵器となります。弓や剣の戦いでは、局地的な争いですみます。しかし、核ミサイルの使用では、局地的な戦争ではすみません。同じように最先端の科学技術も悪用されると、私たち人類に限りない不幸を招き寄せる結果となるかもしれません。
結局は人類の叡智に、すべてはかかっているとしか言いようがないのです。
科学技術の発達が私たち全てに、幸福な未来を与えてくれる事を切に願って、私の拙い「医学史観」を終章にしたい思います。
次回に続く。
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