診察室からコンニチハ(194)

また、既存薬でも『ワトソン』を用いてリポジショニング(ターゲット市場の変化などによってブランドのポジショニングが適切でなくなった場合にブランド・ポジショニングの見直しを行い、再活性化させること)に取り組まれている、別の効能が見つかれば特許期限を延ばせるわけですが、既存薬は既に臨床試験を通過している分、そのコストが軽減できるメリットがあります。欧米に比べ日本は、これまで慎重でしたが既に複数の製薬会社が評価し始めています。
「研究者には夫々の専門分野があり、広い範囲にわたる専門知識の全てを深く理解することは難しいですが、『ワトソン』はバイアスなく全体を網羅的に眺めることができます。もちろん提供するのは答えではなく仮説ですから、検証は必要ですが、仮説を得るまでの時間やコスト上のメリットは大きいと思います」
AI技術によって医療現場に変化が起きつつあるものの、医療分野のAI導入が抱えている課題は少なくないのです。
「学習データへのアノテーション(ラベリング)作業を医師自身が行わねばならず、リソース(システム開発に必要な人員、資金など)上、情報を割くのが難しい」といった問題から、個人の生き方に関わる倫理的な問題までいくつも立ちふさがっているように見えます。
また、AIができることは「ある1つの目的(方向性)に対する解を出す」ことですから、医療者あるいは患者の誰にとっても絶対的な正解が出せるとは限りません。自分がいかに生きるかを考え、方向性を示すのは、まぎれもなく自分自身です。
AI導入によって価値観が「揺さぶられる」事例は、医療分野に関わらずこれからは幾つも存在するでしょう。
次回に続く
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